6月11日、アムネスティをはじめとする「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」は、袴田事件弁護団長である西嶋弁護士と、袴田巌さんを支え続けた姉である袴田ひで子さんをお招きして、記者会見を開きました。
 

進まない、取調べの可視化

法務省の法制審議会特別部会において、刑事司法改革についての議論が大詰めを迎えています。特別部会は、2011年、冤罪が起きない刑事司法をつくるため、取調べの全過程の録画を実現する方法について議論するために設置されました。

しかし、今年4月30日の特別部会で提出された「事務当局試案」は、可視化については非常に限定的な案となっており、その他にも冤罪を防ぐために必要な制度改革はほとんどありません。

今回の記者会見は、事務当局試案の再検討を求めて開かれたものです。  
 

袴田事件の教訓を生かせ~西嶋勝彦弁護士

袴田事件の弁護団長である西嶋弁護士は、袴田巌さんがウソの自白をするに至った20日間にわたる過酷な取調べについて、当時、取調べが可視化されていれば、「違う結果が出ていたかもしれない」と指摘しました。

また、袴田事件で検察は証拠を隠し続け、今回やっと出てきた証拠によって再審開始決定が決定されました。特別部会の「事務当局試案」は、証拠リストを弁護人に渡すというレベルにとどまる見通しです。これに対して西嶋弁護士は、何が書かれてあるのかわからないリストの提出だけでは意味がない、「全面的な証拠開示が必要だ」と訴えました。
 

「巌が無事に帰ってきた」 ~袴田ひで子さん

hrc20140623_2.jpg袴田巖さんについて語る姉ひで子さん

袴田巌さんの姉ひで子さんは、冒頭、「巌が無事に帰ってきました。ありがとうございます」と言いました。そして、再審請求審で証拠開示が進んだおかげで再審開始決定につながった、「開示されなければ結果が違ったかもしれない」と語りました。

さらに巌さんについて、「死刑が確定し、死刑囚のいる房に移ってからガクッと変わった、だんだんおかしくなっていった」と、当時を振り返りました。

釈放後、現在は浜松に戻り、病院で検査入院を続けている巌さん。「家族の名前などは一切言わないが、釈放されたこと、自由になったことは理解しているようです。」「検査が終わったら、早く家に帰したい」とひで子さんは言います。いつ処刑されるかもわからず長期に拘禁され続けた巌さんの精神の回復には、まだまだ時間がかかりそうです。

最後に、監獄人権センターの海渡雄一さんから、市民団体から特別部会の委員と法務大臣に宛てた 要請書を解説しました。

市民団体連絡会は、全事件・例外なき取調べの全過程録画のほか、代用監獄の廃止、証拠の全面開示などが、冤罪防止に必須であると訴えています。

開催日 2014年6月11日(水)
開催場所 参議院議員会館
呼びかけ団体 アムネスティ・インターナショナル日本
監獄人権センター
日本国民救援会
ヒューマンライツ・ナウ

 

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