6月14日(土)、シンポジウム「紛争と女性~戦時下の性暴力をなくすために~」を青山学院大学で開催、140名を超えるたくさん方に足を運んでいただきました。

当日は、ドキュメンタリー映画「ゲリラからの脱出~ウガンダ・誘拐された少女兵たちの8ヶ月~」をみて涙ぐむ方や、ゲストの一人が持参したブルカを体験するコーナーもありました。アムネスティ日本 活動担当の山下が報告します。

hrc_20140801_02.jpg当日はブルカの体験ができるコーナーもありました。

紛争は多くの人の命を奪い、人びとに深い傷を負わせます。紛争では、とりわけ女性や少女たちが組織的な強かん、性的虐待など標的となっています。国際社会は、ローマ法規定などで性暴力は犯罪であると明確に規定しているにも関わらず、犯罪は根絶されることなく繰り返されています。

シンポジウムでは、さまざまな立場からこの問題に取り組むパネリスト、玉本英子さん(アジアプレス記者)、渡辺美奈さん(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」事務局長)、坂上香さん(ドキュメンタリー映像作家)の3名を招へいし、被害者たちの苦難をお伝えするとともに、戦時下の性暴力をなくすために何ができるかを考えました。

戦時下の性暴力と被害者たちの苦しみ

性暴力で、人としての尊厳を奪われた女性たちの痛みは計り知れません。女性たちの苦しみは、暴力自体からくるものとは限らず、社会や家族の無理解や伝統的な慣習によるものもあります。

例えば、ウガンダでは兵士に誘かいされ、上官の性の相手をさせられた少女たちが、脱走後も家へ帰れないということがあります。家族や地域が、武装勢力の「味方」をした被害者自身を恐れ、受け入れを拒むからです。イラクやアフガニスタンでは、紛争で稼ぎ手であった父親を失い、困窮に陥る家族を養うために、娘たちが売春を強いられています。売春行為がばれると、被害者たちが社会から差別され、家族の名誉を汚したとして親族から殺害されることもあります。

被害者たちはこのような周囲からの差別を恐れ、沈黙を強いられるため、問題が表にでることも、十分な救済を得られることもなく、長い間苦しんでいます。

私たちに何ができるか

戦時下の性暴力をなくすために、パネリストの3人が揃って訴えていたことは、「被害者と加害者がともに話せる」ことのできる社会をつくることです。

話すことは、被害者にとって、自分に何が起きたかを考え、自分を取り戻すプロセスとなります。また、加害者にとっても、自分が何をしたかを理解し、暴力以外の手段を選択できるようになるためのプロセスとなります。

また、声をあげ、問題を表にだすことで、戦時下の性暴力を根絶するために社会を動かすことができます。実際に、1995年の世界女性会議で、日本軍性奴隷制の被害者が沈黙を破ったことがきっかけで、ローマ規定の制定に繋がり、国際社会が戦時下の性暴力を目指し具体的に取り組み始めました。また、加害者を処罰するにも、加害者と被害者がともに加害と被害について話すことが必要です。

被害者と加害者が話せるようになるには、彼女/彼らを親身になってサポートするコミュニティを確立し、私たち市民が戦時下の性暴力について知り、理解することが必要不可欠です。1995年に発言した元「慰安婦」の女性も、戦後何十年経ってやっと沈黙を破れたのは、まわりの支援と理解があったからだといいます。

戦時下の性暴力はあくまでも「暴力」であり、いかなる状況下においても絶対に許されません。この卑劣な犯罪をなくす責任は私たち一人一人にあります。

お忙しい中、当日会場にご来場いただいた皆さま、シンポジウム開催にあたりご協力いただいた青山学院大学大学院・法務研究家教授の新倉修先生、及びジェンダーチームボランティアの方がた、そしてご出演いただきました玉本英子さん、渡辺美奈さん、坂上香さん、ありがとうございました。

パネリストの皆さん(左から)玉本英子さん、渡辺美奈さん、坂上香さんパネリストの皆さん(左から)玉本英子さん、渡辺美奈さん、坂上香さん

開催日 2014年6月14日(土)
開催場所 青山学院大学
主催 アムネスティ・インターナショナル日本
青山学院大学人権研究会

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