5月30日(土)、東京事務所にて、イベント「日本の難民支援の今~シリアから考える~#OpenToSyriaキャンペーン」を開催しました。当日は、40人を超える方にご参加いただき、会場はほぼ満員でした。このイベントに参加した、インターンの真理矢が報告します。

「#OpenToSyriaキャンペーン」とは、現在、アムネスティが行っている、国際的な取り組みのことです。世界中でシリア難民の受け入れが進むように、世界各国の政府に働きかけを行っています。

その一環として開催されたこのイベントでは、シリア難民に焦点を当て、「難民とはどんな人たちなのか」、「難民として受け入れられるためにはどんな手続きが必要なのか」、また、「その過程でどんな問題に直面し、どんなサポートが求められているのか」などを、難民支援協会(JAR)の田多晋さん、なんみんフォーラム(FRJ)の石川美絵子さんからお話しいただきました。

シリア難民の深刻な現状

シリアでは現在、400万人を超える人たちが難民となっており、シリア人のおよそ5人に1人が難民となって国を追われています。イベントでは、まず初めに、アムネスティ日本の職員、山口薫が、こうしたシリア難民の深刻な現状について、動画などを用いて説明しました。シリアで政変が起き武力紛争が始まったため、世界中に難民が溢れた状況、そして難民がいかに悲惨な状況下で逃げてきたかについて、問題の深刻さを感じ取ることができたかと思います。

難民支援協会(JAR)の田多晋さんのお話

難民支援協会(JAR)の田多晋さん難民支援協会(JAR)の田多晋さん

難民支援協会代表の田多晋さんは、そもそも「難民」とは何なのか、基本中の基本をわかりやすくお話しくださいました。

「難民」とは一般的には、迫害等を受けて自分の国から逃げてきた人たちと考えられています。しかし、実際には、正式な「難民」になるためには、逃れた先の国で申請をし、その後、さらに認定をしてもらわなければなりません。

難民条約に定められた定義によって難民認定が行われるわけですが、認定手続きは各国の政府に任せられています。日本では必要な書類の多さや長い待機期間など、さまざまな問題が起きています。また、紛争のせいで、自分が迫害を受けた証拠どころかパスポート(身分証明書)すら持って来ることができない場合もあります。そうした場合には、非正規滞在者となり、収容施設に送られることがあります。

無事に手続きを終えても、難民として認められない場合もあります。その時は、別の在留資格で滞在を許可されることもありますが、難民認定を受けるよりもできる事を制限される場合が多いです。 そのため、自国で惨状を経験し、必死に日本に逃れてきた多くの難民の人たちは、在留資格、滞在費、就労許可、言語の壁、家族との離別、など、どれ一つとしても難しい問題に直面することになります。

「なんみんフォーラム」の石川美絵子さんのお話

「なんみんフォーラム」の石川美絵子さん「なんみんフォーラム」の石川美絵子さん

続いて、ネットワーク組織「なんみんフォーラム」代表の石川美絵子さんが、このような日本の状況の中で難民の人たちに多面的なサポートを提供する団体についてお話して下さいました。

初めに、石川さんはご自身の経験に触れ、ボランティア時代の出来事、活動する中で感じたやりがいについてお話してくださりました。感慨のこもったお話に、参加者の皆さんは聞き入っていました。

難民サポートのためのネットワーク組織「なんみんフォーラム」に加盟している団体は、現在15あり、スペシャルメンバーとしてUNHCRが加わっています。加盟している各団体の活動は、通訳や生活、医療、教育支援、収容施設訪問、日本の法律の解説など、多岐にわたります。こうした団体が参加する「なんみんフォーラム」の重要な活動として、次の2点があげられます。

ひとつは、難民の人たちの社会統合です。見慣れない風景の中、違う文化に接しながら、言葉の理解も困難な状態で地域に居住し、様々なトラブルを解決しなければならない難民の人たち。彼・彼女たちと、地域に元々居住する人達との間の相互理解渡を高めることで、多くの問題を解決することができます。

そして、ネットワークの重要な活動としてはもうひとつ、収容代替措置について政府に提言するという活動があります。

ネットワークの活動のお話の後、石川さんはシリア難民(日本では3人が認定されている)を含め、具体的な事例も挙げながら基礎知識と難民関連NGOの活動について説明して下さりました。

トークセッション

ゲストスピーカーのお二人のお話の後、休憩をはさんでトークセッションが行われました。

会場からは鋭い質問が相次ぎ、中でも、「収容施設とはどのような場所なのか」、「日本政府はどのような活動を行っているのか」、「メディアで聞かれる“難民申請制度の濫用”とはどのようなことを指しているのか」という質問と回答のやりとりからは、さまざまな問題が浮かび上がってきました。後者の質問に対する、石川さんの「情報に接する時に、その情報が何を意味しているか考えていただきたいです」という言葉は、とても印象的でした。

また、セッションの中では、ゲストスピーカーと山口から、日本の良さについても言及がありました。それは、子どもの教育の権利が認められており、難民でもすぐに普通の学校に入学できることです。

最後に、市民団体と政府の更なる協力を実現させていきたいという呼びかけで、イベントは締めくくられました。

日本では、「難民」について、自分と関係のない、どこか遠い世界のように思われる人も多いかもしれません。しかし、こうしたイベントがきっかけになって、決してそうではないという理解の輪を広げていけたらいいなと思いました。

田多さん、石川さん、参加者の皆さん、どうもありがとうございました!


開催日 2015年5月30日(土)
場所 アムネスティ・インターナショナル日本 東京事務所

シリア難民を支援する「#OpenToSyria」キャンペーンにご参加ください!

アムネスティは、現在、世界中でシリア難民の受け入れが進むよう、世界中でキャンペーンを行っています。イベントの開催をはじめ、大人も子どもも、誰でも気軽に参加できるフォトアクションなどを行っています。シリアから遠く離れた日本でも、彼らのためにできることはたくさんあります。ぜひ、ご参加ください。

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