10月3日、ドーンセンター大阪において「死刑制度とジェンダー ~清末愛砂さん講演会」を開催しました。

室蘭工業大学大学院准教授の清水愛砂さんをお招きして、フェミニストとしての観点から、ジェンダーという新たな切り口で死刑制度を分析していただきました。

共催したアムネスティ日本 死刑廃止ネット大阪のメンバーが報告します。

当日は秋晴れの気持ちのいい一日で、絶好の行楽日和でしたが、そんな週末の夕べに約50人の方々が集まってくださいました。

清末さんの研究分野は、ジェンダー法学、家族法、憲法、社会調査法で、女性に対する暴力についてもテーマとされていますが、これまで死刑制度と関連づけてジェンダー問題について講演されたことはなかったそうです。

死刑制度に反対の立場

清末さんはまず、差別的制度であることを理由に死刑制度に反対であるという立場を明確にされ、死刑制度は生命や存在の否定であり人が変わる可能性を認めない制度であると言われました。

これは私たち死刑廃止運動に携わる者にとっては日々実感していることであり、訴えていることでもあります。清末さんが同じ感覚を持っておられることを頼もしく嬉しく思いました。

生命とおんな

続いて、「生命とおんな」という話にうつりました。「女性は生む性だから生命の大切さを知っている。だから女は死刑制度には反対」「女性は大黒柱である夫や可愛い子どもが殺されたら、という恐怖から、被害者になった自分をイメージするため、死刑制度に同意する」という議論のどちらにも違和感を覚えるという話をされました。女性の殺人者もいるし、夫や子どもが殺されるのではなく女性自身が夫から殺されるという場合もあるので、「女性は生命を大切にする」「女性は常に遺族としての被害者である」という一面的なレッテル貼りに対する違和感があるとのことでした。

死刑とおんな

さらに、「死刑とおんな」というテーマにうつりました。シンガポールやサウジアラビア、香港等で働く外国籍の女性家事労働者を取り巻く過酷な状況を自身のシンガポールでの生活での体験を交えて説明されたあと、こうした人々に対する死刑判決のケースの紹介がありました。さらに夫殺しの罪で死刑を執行された事件の紹介があり、執行される側の女性に対する社会の視点は、「おんなのくせに極悪」「おんなは能力がないのにこんなことをした」となり、その裏にある女性に対する抑圧や暴力には無関心であることが指摘されました。

フェミニズムが目指すもの

また、女性の犯罪者に対するはげしいバッシングの裏で、聖女伝説もはっきりと生き続けていて、レイプ事件などでは本気で抵抗したかどうかを証明させられるなど、女性に対する社会の対応は非常にアンバランスで偏見があると指摘した上で、フェミニズムが目指すものと死刑制度とは相いれないものであるとの結論に至りました。

暴力装置としての国家において、死刑制度は暴力装置を維持し、民衆を支配する手段であるが、フェミニズムが目指すのは従属関係・支配関係からの脱却、暴力からの解放、あらゆる差別からの解放、生きること、生きのびることであるとの非常に明確な対比が示され、とても説得力のある締めくくりとなりました。

開催日 2015年10月3日(土)
場所 ドーンセンター大阪
共催 アムネスティ死刑廃止ネットワーク大阪
死刑廃止フォーラムinおおさか

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