チリは人工妊娠中絶を全面的に禁止している数少ない国の一つです。その同国で、一定の要件に当てはまる場合、中絶が認められることになりました。

2015年1月、チリ初の女性大統領であるミチェル・バチェレ大統領は、強かんや近親相かんによる妊娠の場合、母体の生命に危険が及ぶ場合、胎児が生存不可能な場合の3つの場合には中絶を認めるとする法案を議会に提出しました。バチュレ大統領は小児科医であり、2011年に発足した国連女性機関(UN Women)の初代事務局長を務めたこともあります。中絶禁止法の緩和は、大統領が長年掲げてきた公約で、2018年3月の任期満了前の施行を目指して取り組んでいました。

チリの厳格な中絶禁止法は、軍事独裁を敷いた故ピノチェト政権末期に導入されました。以来約30年にわたって、いかなる場合であっても中絶は禁じられ、違反した場合は最大5年の禁錮刑が科せられていました。

法案は、2016年3月に下院で可決されましたが、上院の憲法審査会で、さまざまな制限をつけた修正案が出されます。医療チームのメンバーや医療機関が「良心」を理由に中絶措置を拒否できる、強かんされたという理由の中絶には強かんを裏付ける証拠の提出が必要、などです。

この修正が採択されれば、女性が安全で合法的な中絶を受ける上で大きな壁が立ちはだかることになります。

アムネスティは、制限付きの修正案を否決するよう、上院議長や議員に求める緊急行動(UA)を、世界中で呼びかけました。

アムネスティだけでなく国内外の人権団体、市民グループも同様のキャンペーンを展開。その結果、修正の一部は改善された上で、3つの場合には中絶を認める法案が、2017年7月に上院で可決され、8月に下院本会議で可決されました。続いて8月21日、憲法裁判所でも支持されました。

これは、チリの厳格な中絶禁止法の改正に向けて共に闘ってきた、前世界の女性たちの勝利です。今後は、法が確実に改正され、性と生殖の権利が保障されるようになることを見守っていきます。

チリで中絶の一部が容認されたことを祝う人たちチリで中絶の一部が容認されたことを祝う人たち ©CLAUDIO REYES/AFP/Getty Images 246835

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