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人権の「今」がわかるニュース

イベント報告【イベント報告】名古屋入管参観報告

2018年9月4(火曜)、台風21号がやってきたその日は、私たちアムネスティ日本と国内人権ネットのメンバーによる名古屋入管参観の日であった。

台風は、関西国際空港に高潮被害をもたらし多くの人を孤立させ、神戸その他の地域に浸水被害をもたらしたが、名古屋でも暴風雨警報が出ており、学校は休みとなり、JR中央線や、名古屋駅から名古屋競馬場前(名古屋入管はこの駅のそばにある)までの「あおなみ線」は、正午ごろに運行をストップすることになっていた。

昨年も参観できなかったうえに、今回中止となれば今後の実施が非常に困難になると引率責任者が判断し、大雨でも台風でも行くと決定。私は帰りの足がなくなるため、どうしようかと思案したが、参加者のうちの二人が車で行くことが分かったので、帰りは車に乗せてもらうことにして参加することにした。参観を予定していた12名のうち、実際に参加できたのは5名であった。しかし、激しい雨にも強風にも負けず、私たちは充実した参観を行うことができた。

午後2時スタート。渉外調整官の方から名刺をいただき、挨拶を交わし、20分ほど入管の仕事を解説するDVDを観た。日本にはたくさんの外国人が毎年入国しているが、入管は「国際化」と日本の「安全」のために仕事をしているということを伝える一般人向け広報用ビデオであったが、内容があまりにもうすっぺらなので失望した。しかも、ビデオの中でインタビューを受ける外国人のほとんどは西洋人・白人でビジネスや旅行で来ている幸せそうな人たちであった。欧米では国際化とは多種多様な人たちが混じって、特に肌の黒い人がいることを指すが、これとは対照的に、日本では鹿鳴館時代の欧化路線がまだ残っているようだ。日本は清潔だ、日本人は親切だ、というようなコメントが映像に登場し、日本人を嬉しくさせる。他方、解説の一部分は、強制退去や難民認定のことに触れてはいたが、全体として、なぜ入管が必要かという肝心な点がよく分からなかった。

次に、処遇部門責任者の案内で、私たちはモニターで全館の様子を見ることのできる「見張り室」へ行った。モニターの一つに室内運動場が映っており、誰かが歩いているのが見えた。(屋外運動場は、建物の屋上にあり、周りは塀で囲ってあるという)。居室や廊下のシャワー室には監視カメラはないので、そのような場所の内部はモニターには映らない。

続けて、収容者が初めにはいる「入所手続き室」へ行った。ここで被収容者は荷物を預け、顔写真と指紋をとられ、下着一枚になって身体検査を受ける。なぜ身体検査をするのかと尋ねると、「体に傷がついていないかどうか」「危険な物品をもっていないかどうか」をチェックし、保安上支障がないことを確認するためだという。人権にどれほど配慮しているかと問うと、「下着の中に手を突っ込むようなことはしません」という答が返ってきた。女性の被収容者の身体検査は、女性の担当官が行うことも確認した。個人が自分の貴重品を入れる小さなロッカーがあり、それは自分で管理できるようになっている。居室に若干の衣類や洗面具などを持っていくことはできる。

その次に行ったのは、6階の男性用の居室があるE区域と呼ばれる区画であった。同じフロアーの隣はF区域で女性専用であり、その中間に、見張りの部屋がある。E区域には50人ほどが収容可能なようであったが、現在は被収容者がはいっていないので、どうぞ見てくださいと言わんばかりに中をじっくり見せてくれた。8畳から10畳くらいの部屋に2段ベッドが3つはいっていた。6人まで収容可能だが、実際には6人収容することはないという。テーブルが真ん中に置いてあり、部屋の隅にはドアつきの洋式トイレがある。窓ガラスは透き通っておらず、外は見えない。天井からテレビが一台ぶらさがっている。食事はこの部屋でとり、排せつもこの部屋で行う。ベッドに寝転べば、読書ができるかもしれない。9時半から正午までと、午後1時半から5時まで、居室のドアは施錠されておらず、外に出ることは自由だという。もちろん、外と言っても、廊下に出てシャワー室や洗濯室(8台の洗濯機と乾燥機が設置)に行く、あるいは屋内運動場や屋上の運動場に行く、といった程度である。消灯は夜10時である。どうしてもほかの人と同じ部屋にいれない人のために、若干の一人部屋もある。

今回は5人という少人数で参観をしたためか、また処遇統括の方が職務に忠実なだけでなく、懇切丁寧に私たちに説明をしてくださったからか、私たちは「女の人が出産するときはどうするんですか」など、色々と自由に質問をしながら見学をすることができた(近年、出産の事例はない、とのことであった)。

外部の人との面会時間は、現在は30分まで(8年前はたったの10分!)だが、同じ日でも別の人が面会に来れば、さらに30分の面会が可能だという。居室区域の廊下の一角に、KDDI の電話機を5台までおけるテーブルがあった。被収容者がいつでもお金を払えば、カードを使ってどこへでも電話をすることができる、という説明があった。ただし、現在、E区域では被収容者がいないため、電話機は撤去されていた。説明を受けたように本当に自由に電話ができるのであれば、少しは自由が味わえるわけだが、それでも行動の自由は大幅に制限されており、収容施設はやはり多くの心身の不具合を生み出してしまう。

昨年1年間、名古屋入管から外部の医療機関に移送されて受診をした被収容者の件数は、全部で508件だったが、そのうち歯科105件、外科97件、皮膚科53件、精神科49件、眼科47件といった数字を見ても、これは分かる。

居住地域を見学し終えてから、私たちはDVDを観た部屋に戻り、すでに渡してあった事前質問への入管側からの回答を聞いた。渉外調整官ほか4名の諸部門の統括が前に座って、渉外調整官が口頭でたくさんの事前質問に対して、多くの数字をあげながら、答を読み上げていく。これが結構時間をとった。聞いている私たちは、メモをとるが、読み上げるのが早いため、ときおり数字を聞き落してしまう。

回答の読み上げに長い時間を使うのは、せっかくの質疑応答の時間を奪ってしまう。担当者に、数字をここで確認するとさらに時間をとるので、読み上げたメモをコピーしてこちらにください、と要求した。しかし、それはできかねるので、わからない箇所はまた後日尋ねてください、と言われた。情報を口頭で伝えて済まそうとするのは、その正確さに自信がないからか、あるいは正確な情報を知ってほしくないからかもしれない。しかし、こちらとしては、数字の類は別にもらっておいて、読み上げに時間を使わずに、より重要な質疑応答に時間を使いたい。参観のときの職員の方々との自由な会話は、私たちとの相互理解を深めるし、質疑応答や批判的コメントは風通しをよくするために、あるいは緊張感のある協力関係を築くためにも、重要なはずである。今後、この点は何とか改善してもらいたい。

ようやく事前質問への回答が終わり、何か質問はと尋ねられたので、被収容者を病院に連れて診察してもらうのに、手錠・腰縄をつけていくのかどうか、これは屈辱的処遇ではないか、なぜこれをするのか、その法的根拠は何かを尋ねた。逃亡防止のためにそうする、原則として戒具は使うが、ただ実際には、診察の際に、手錠をはずすこともかなりあると「思う」という曖昧な答が返ってきた。何を法的根拠として戒具を使うのかについては、最後まで明快な答は得られなかった。時間がなくなりつつあったので、とにかく非人道的処遇をしないように、ご自分が逆の立場に置かれた場合を想像してみれば分かるはず、と要請した。アムネスティとしては、国際基準を持ち出すべきだったが。

難民申請者に対する対応も難民調査部門の統括に尋ねたが、漠然とした答しか返ってこなかった。昨年の難民認定申請者総数46名のうち、一番多かったのはイラン出身者12名であったが、これらイラン出身の難民申請者はクルド人なのかという質問には、分かりません、と難民調査部門統括は答えていた。ここから分かるように、難民の窮状への関心は、残念ながら、まだまだ低い。アムネスティは、難民に関する資料を入管の諸部門の統括や職員に配布し、今後いっそうの情報拡散と知識普及に努めるべきだと思う。

最後に、私たちを案内し、丁寧に説明をしてくださった名古屋入国管理局の職員の方々に、心からお礼を申し上げたい。次回の参観の際には、さらに踏み込んだ対話ができることを私たちは期待している。

アムネスティ日本会員(15G) 下川 潔

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実施日 2018年9月4日(火)
場所 名古屋入国管理局
主催 アムネスティ日本 国内人権ネット

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