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【書評連載02】Die Energie 5.2☆11.8

Die Energie 5.2☆11.8 著者:三原順/出版社:白泉社/ISBN:978-4-59288-377-7 著者:三原順/出版社:白泉社/ISBN:978-4-59288-377-7/(C)白泉社

1980年代は、それまで少女マンガ家として分類されていた作家たちが、次々と硬質の作品を発表した時代だった。

三原順はおもに言葉で語る作家である。代表作「はみだしっ子」の中で1ページすべてをびっしりと文章で埋めた手法などが語り草になっている。登場人物のセリフも論理の展開が複雑かつ繊細で、まるで心理劇だ。息が詰まりそうな緊張感こそは、彼女の作品の大きな特徴である。

本作はミステリーの装いを持ち、米国のある原子力発電所で起こった「テロ事件」を扱っている。物語は電力会社の社員である主人公ルドルフを中心に展開するが、他に登場するのは原発の現状を見据えつつさまざまな思いを持つ電力会社の従業員たち、被ばくの危険と隣り合わせの現場作業員、反原発の環境活動家など。時期的にはスリーマイル島の事故後にあたり、それを踏まえて、原発や社会問題へのさまざまな見方が登場人物たちによって語られる。ただし、作品自体は原発に対する是非を述べない。あくまでも、原発をめぐる本格的な議論を、そのまま物語の中に組み入れている。

ストーリーはミステリーとして一応の解決を見るが、そこはおそらく付け足しでしかない。読者はそれよりも、作中に表れるさまざまな言葉を心待ちにしている。読者は自分たちの立場をどこかに見出すというより、議論の中にちりばめられた刺激的な言葉を受け取りながらこの作品のインパクトを感じていく。

テロリスト、袂を分かった元従業員たち、環境保護活動家、顔の見えないただ電気を喰らうだけの群衆。物語終盤でルドルフは吐き出すように口にする。「彼らは犠牲者だった。その立場にいれば、何をしても許される」。そして彼は最後に断言する。「俺は加害者でいい。ただの加害者でいい」。多くの声で織りなされた作品は、この旋律でまとめ上げられる。市民運動にシンパシーを感じる読者は、ここに自分をもえぐる言葉を見い出すことだろう。

1995年、若くして病没。生きていたら、今のフクシマ後の状況をどう見ただろうか。

(執筆:アムネスティ書評委員会 M.T)

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三原順傑作選 ('80s) (白泉社文庫)

 

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