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【書評連載07】ぼくの村の話

ぼくの村の話 講談社 ISBN:978-4063283051 尾瀬 あきら(著)講談社 ISBN:978-4063283051 尾瀬 あきら(著)/(C)講談社

「じゃあ、このうちが空港になるっていうだが?......うちの畑もみんな......?」 もしも、あなたが住んでいる家や地域が、朝のニュースで突然、空港になることが発表されたならば、あなたはどう思うだろうか。

「ぼくの村の話」は、広げた新聞に見入る家族の驚きから始まる。いわゆる三里塚闘争は1966年から始まった空港建設反対運動である。これを題材として作者は90年に闘争現場を取材し、92年からコミック誌に連載した。

「どんなにたくさんの人が便利になったって......たった一人でも不幸になるんだったら......空港なんて作っちゃいけないよね」

空港建設予定地である三野塚(三里塚)農家の子どもである哲平は、三野塚少年行動隊として反対運動に積極的に身を投じていく。

やがて闘争は激化し、政府・空港公団は機動隊を導入し反対派農民を暴力的に土地から排除していく。反対派農民も、土地に打ち込んだ杭に自らの体を鎖で縛り、黄金爆弾という糞尿袋を機動隊にぶつけるなど、農民らしい策で機動隊に抵抗する。哲平の兄はこう述懐する。

 「(足尾銅山鉱毒事件の)谷中村は鉱毒におかされたあげく、水の底にしずめられた......ここの空港とほぼ同じぐらいだ。国を豊かにするために犠牲になっていくのはいつも農民だ。そんな歴史は俺たちが終わりにする」

ある年、泥沼の闘争のなかで機動隊員三名が死亡し、反対派青年の一名が自殺する。機動隊はなりふり構わず暴力的に反対派農家のばあちゃんの家を代執行で破壊し、哲平の兄は機動隊員殺人容疑で逮捕される。

たとえ空港が完成したとしても、ぼくは一生この年のことを忘れることはないだろう。そして、この年のことを覚えている限り、ぼくは空港に反対し続けるだろう。

1991年の成田空港問題円卓会議で、政府が非を認め謝罪したことを記して作品は終わる。「ぼくの村の話」のモデルとなった三里塚では、哲平の言葉のとおり46年経った2012年の今も、世代を継いだ農民達によって空港建設反対闘争が続いている。

(執筆:書評委員会メンバー U.M)

※本原稿は、もともとはニュースレター本誌に掲載予定だったものです。 そのため、誌面用に本来の原稿の一部を省略しております。

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