子どもの権利

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目次

  • 子どもの権利条約とは
    • 「子どもの権利条約」~4つの原則~
    • 権利を守る仕組み
    • 日本についての最新の審査と勧告
  • 児童労働とは?
    • 児童労働の現状
    • 児童労働の原因
    • 子どもの心身への深刻なダメージ
    • 児童労働をなくすために

第一次世界大戦(1914-1918)では、子どもを含め多くの人の命が奪われました。その反省から国際連盟が設立され、平和のためのさまざまな課題が議論されました。

その成果の一つとして、1924年の「児童の権利に関するジュネーブ宣言」があります。この宣言では「人類は子どもに対して最高のものを与える義務を負う」という目標が掲げられ、初めて国際機関によって子どもが保護される権利が宣言されました。

しかし、再び大きな戦争、第二次世界大戦(1939-1945)が勃発し、またしても多くの子どもが犠牲になりました。新たに発足した国際連合は、1948年に「世界人権宣言」を採択し、その26条には教育を受ける権利が掲げられました。そして、1959年の「児童権利宣言」では、教育の機会均等についての条文が含まれるなど、発展がありました。

しかし、これらは宣言であったために、各国政府には具体的に実行する義務がありませんでした。そこで、約10年間の検討を経て実施義務がある条約にしたのが、1989年の「子どもの権利条約」です。日本は5年後の1994年にこの条約を批准しました。

「子どもの権利条約」とは

「子どもの権利条約」では、18歳未満の人たちを子どもと定義し、子どもが保護を受ける立場というだけではなく、自分から行動をする権利についても書かれています。意見表明権・思想や良心の自由・集会の自由など、それまでは大人のものと思われがちだったものが、子どものものでもある、というふうに考え方が変わってきたのです。それ以前の宣言では「保護される」存在だった子どもを、それだけでなく「権利の主体」として定義したのが、この条約なのです。

「子どもの権利条約」~4つの原則~

人として誰もが持つ権利に加えて、子どもには特別に守られなければいけない権利があります。そのために作られたのが「子どもの権利条約」です。

条約には、生きる権利や教育を受ける権利など、たくさんの権利が挙げられていますが、こうした権利が守られる際には、まず次の4つ事柄が考慮・遵守されなければなりません。

差別の禁止(第2条)
権利は、子どもや親の人種、言語、宗教などによって差別されることなく、平等に守られなければなりません。

子どもの最善の利益(第3条)
子どもたちの権利を守るときは、その子どもたちの「最善の利益」を第一に考えなければなりません。

生命の権利、生存・発達の確保(第6条)
子どもは皆、生きること、成長することを保障される権利を持っています。

子どもの意見の尊重(第12条)
子ども自身に影響を及ぼす事柄について、自分の意見を述べること、またそのような機会が与えられることが保障されます。

「子どもの権利条約」全文を読む

権利を守る仕組み

守られるべき権利やルールを条約で定めるだけでは、必ずしも権利が守られるわけではありません。条約の内容が守られ、実際に子どもの権利が守られるために、次のような仕組みがあります。

1. 締約国による報告

条約の締約国は定期的に、条約の内容をしっかりと守ることができているのか、その実施状況を国連・子どもの権利委員会に定期的に報告しなければなりません。政府報告書の内容では含まれていない情報は、NGO・NPO等が別途パラレルレポートとして提出します。

締約国による報告

その報告書を受けて、子どもの権利委員会は予備審査を実施し、事前質問表を作成し、政府とNGOはそれに対する回答を作成します。

予備審査

 

それを踏まえて、いよいよ本審議が実施されます。本審議の結果、改善すべきこと・必要な措置などが「総括所見」として、報告した国に勧告されます。

予備審査

2. 一般的意見

条約の遵守を促進し、締約国による報告義務の履行を助けるために、子どもの権利条約の委員会から文書が出されることがあります。そのような文書の一つとして、一般的意見と呼ばれる文書があります。これは、ある特定の条項やテーマに関して、委員会の見解を示したものです。多数の締約国報告書を審査してきた経験にもとづいて採択した正式な文書であり、締約国の政府や裁判所等が尊重すべき人権基準です。

これまで出された一般的意見には次のようなものがあります。
● 一般的意見1「教育の目的」(2001年)
● 一般的意見12「意見を聴かれる子どもの権利」(2009年)
● 一般的意見16「企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務」(2013年)

詳細はこちら(日弁連のサイト)

3. 権利を侵害された子どもによる通報

権利を実際に侵害された子ども自身、もしくはその代理が条約の委員会に通報することもできます。しかし、そのためには、締約国が条約とは別に個人通報制度に関する法的文書を批准する必要があり、日本は批准していません。

日本についての最新の審査と勧告

日本が1994年に「子どもの権利条約」の締約国となって以来、1998年、2004年、2010年、2019年の計4回、審査が行われています。2019年の委員会の総括所見では、日本は、差別の禁止、児童の意見の尊重、体罰、家庭環境を奪われた児童、生殖に関する健康及び精神的健康、少年司法について緊急の措置をとるべきとの懸念・勧告を受けています。

> 2019年3月総括所見
> 2019年1月本審査
> 2018年11月事前質問への政府回答
> 2017年6月政府報告書

児童労働とは?

働く子どもすべてが児童労働と見なされるわけではありません。義務教育を受けることを妨げるものや、子どもの健康や発達にとって有害となるものが児童労働です。

雇用・労働条件の改善を目的とした国連の専門機関、国際労働機関(ILO)が児童労働の禁止・撤廃を定める 国際基準としているのが、1973年に採択された「就業が認められるための最低年齢に関する条約(最低年齢条約)」と1999年に採択された「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(最悪の形態の児童労働条約)」です。 「最低年齢条約」では、幼すぎる子どもが働くことがないよう、働くことができる年齢を具体的に定めています。

原則:基本的に国の義務教育が終わってから(多くの国では15歳。途上国では14歳とすることも可能)

軽易な労働:13歳(途上国では12歳とすることも可能)

危険な労働:18歳(厳しい条件を満たせば16歳)

「最悪の形態の児童労働条約」では、児童労働の中でも特になくしていくべきものを定義しています。

人身売買、債務奴隷、農奴、強制的に徴兵された子ども兵士、ポルノグラフィ、買春

麻薬の製造・売買などの犯罪行為

その他子どもの心身に悪影響を及ぼす危険な労働

ちなみに日本は、2000年6月に「最低年齢条約」、2001年6月に「最悪の形態の児童労働条約」をそれぞれ批准しています。

児童労働の現状

2021年6月10日に発表されたユニセフと国際労働機関(ILO)の共同報告書によると、2020年、児童労働を行っている子どもは1億6000万人で、世界の子どもの約10人に1人にあたります。この数は16年前に比べると、約3割減となっており、全体としては減少傾向にありますが、直近の2016年から2020年にかけて840万人増加しています。背景には新型コロナウイルス感染症がもたらした経済危機や休校などがあり、このまま保護策を講じなければ、さらに増える危険があると、報告書は警鐘を鳴らしています。

児童労働者の数と割合
出典:CHILD LABOUR GLOBAL ESTIMATES 2020, TRENDS AND THE ROAD FORWARD

児童労働の原因

まず挙げられるのは貧困です。親の収入だけでは家族が十分に暮らしていけないため、子どもが働かざるを得ないのです。貧困以外にも、国・地域によっては「子どもは働くもの」という風習や文化が児童労働の背景となっていたり、戦争や自然災害がきっかけになることもあります。教育を受けようとしても、学校が近くにない、制服や教科書代の負担が大きい、学校教育の質が低い、などの背景により、学校に行くこともよりも働くことが選択されてしまう場合もあります。加えて、児童労働の禁止や取り締まりを含めた十分な法整備がされていないことも原因の1つです。

<児童労働の悪循環 >

親の収入だけでは家族が十分に暮らしていけないがゆえ、子どもが働きにでるのですが、子どもが労働市場に参加し大人よりも安い賃金で働くことで、大人を含めた平均賃金が下がります。そうすることで、さらに親の収入が下がってしまい、家計を支えるために子どもはさらに働かざるを得なくなる。児童労働はそういった悪循環も生んでいます。また、教育を受けないことで、大人になった時の将来的な収入が下がり、その子どもも働かざるを得ないという世代を超えた貧困の連鎖に繋がります。

子どもの心身への深刻なダメージ

子どもたちはまだ成長過程にあり心身ともに未熟な状態であるため、同じ仕事をしても大人より病気や怪我につながりやすく、十分な知識がないために自分がやっている仕事の危険性が分からないまま働いていることも多くあります。

児童労働者の約7割が従事している農業を例に挙げると、炎天下の中、長時間にわたり体を酷使することは、体がまだ出来上がっていない子どもたちにとっては大きな負担です。また、知識や装備が不十分なまま農薬を散布することは呼吸器や神経等の深刻な障害を引き起こします。他にも、大人用に作られている農具がうまく扱えず身体を傷つけてしまうこともあります。

児童労働者は、大人に比べて心身に取り返しがつかないほどのダメージを受け、時には死に至る危険も多いのです。

コンゴ民主共和国のコバルト鉱山採掘現場での児童労働の実態

コンゴ民主共和国のコバルト鉱山採掘現場での児童労働の実態
© Amnesty International

アムネスティ・インターナショナルとAfrican Resources Watchは2016年、報告書「命を削って掘る鉱石 コンゴ民主共和国における人権侵害とコバルトの国際取引」を公開し、コンゴ民主共和国のコバルト手掘り採掘現場での人権侵害と児童労働の実態を明らかにしました。

コバルトは、携帯電話・タブレット・ノートパソコンなどの小型電子機器や電気自動車に使われているレアメタルの一種で、世界産出量の50%以上はコンゴ民主共和国で生産されています。

コバルトの粉塵は、呼吸器過敏症、喘息、息切れ、肺機能の低下の原因になり、慢性的に吸引することで、塵肺症といった深刻な肺疾患を招く可能性があります。また、コバルトが皮膚に接触し続けると、皮膚炎を発症することもあります。しかし、ここで働く採掘者の多くが、手袋・作業服・フェイスマスクなど基本的な装備を身に着けずに、日々、長時間採掘作業を行っています。

こうした状況の中、子どもたちは高温になる野外で雨の中でも働かされており、大人の採掘者と同じように、手袋やフェイスマスクをつけずに高純度のコバルトに晒され続けています。また、1日に12時間働かされることもありますが、1日の報酬はわずか1~2 米ドル程度です。

コンゴ民主共和国政府はすべての子どもに無償で初等教育を提供することを掲げています。しかし、実際には十分な予算がついておらず、教員の給与・教材・制服など学校運営に必要な費用を保護者が負担しており、支払えない場合は学校に通うことができません。子どもたちは、両親に決まった収入がなく学費が払えないため、働かざるを得ないのです。

加えて、子どもたちは、搾取の対象にもなっています。鉱石の収集、 選別、洗浄、粉砕等の作業をして、鉱石が入った袋の数に応じて取引業者から支払いを受ける際に、子どもたちは袋の重さや鉱石の等級が分からないために、取引業者に言い値で買い叩かれてしまいます。

子どもが採掘現場で働くことは、「最悪の形態の児童労働」であることは国際的に広く認識されており、コンゴ民主共和国の政府は、これを禁止し根絶する必要があります。

報告書を読む(日本語訳)

児童労働をなくすために

2016年9月の国連総会で採択されたSDGs (持続可能な開発目標・Sustainable Development Goals)では、17の目標があり、それらを達成するための具体的な169のターゲットがあります。その中の目標8のターゲット7では、2025年までに児童労働をなくすことが掲げられています。

アムネスティは、独自の調査を行い、それを報告書にまとめて世界中に配信することで、児童労働の実態を明らかにするとともに、報告書の追跡調査を行うなど、改善にむけた取り組みを行っています。

報告書「命を削って掘る鉱石」では、アップルやサムスン、デル、マイクロソフトなどの電子機器メーカー、フォルクスワーゲンといった電気自動車メーカーがその人権デューディリジェンス(企業活動が人権に及ぼす影響を回避・緩和するために取引先などを精査すること)が不十分であることが明らかになりました。

アムネスティは、これらの企業の取組状況について追跡調査をし、報告書にまとめています。しかしながら、2017年11月の時点では、ほとんどの企業で改善が見られませんでした。

報告書(日本語訳)を読む

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