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死刑廃止 - 著名人メッセージ:亀井静香さん

亀井静香さん(衆議院議員、死刑廃止議員連盟会長)

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■はじめに

今回、死刑廃止議員連盟会長をお引き受けいたしました。お引き受けした以上は、死刑をわが国からなくしていくための活動、具体的成果を出していかなければならないと思っております。きょう(2001年12月4日)も、これから法務大臣のところに、われわれメンバーで行くことになっています。

残念ながら日本の場合、死刑は廃止すべきでないという世論が非常に強いのが現実です。報復感情を含めた、ある意味では素朴な感情に支配されているこの現状をどう変えていくか。そういうことをやりながら、最終的には立法措置がとれるよう、国会内で死刑廃止に賛成する議員をどんどん増やしていきたいと思います。

日ごろからのちょっとした感覚で死刑廃止には賛成できないという議員が多いのですが、真剣に考えれば、死刑はやはり廃止すべきだという考えに達するだろうと確信していますので、粘り強くやっていきたいと思っております。

■死刑に犯罪抑止力はない

私は、警察におりましたころから死刑は廃止すべきだと思っていました。政治家になってからの話ではありません。ですから、設立当初から議員連盟に入りました。

私は基本的に、人間のいのちや自然環境というものを大事にする社会でないと、それは健全な社会ではないと思うのです。国家権力が死刑囚を抵抗できない状態にして――言葉は悪いですが――絞め殺すなんてことは、あってはならないと思います。

「凶悪犯人だからしかたないじゃないか」と言う人もいます。生まれながらにして社会的に危険な人もいるかもしれませんが、それはどちらかというと病理学の世界に属するごく一部です。

本人の心得違いもありますが、ほとんどは生まれ育った環境とか、社会の状況のなかで凶悪犯罪に走っていく場合が多いのです。もし、そういう人がまったく別の環境にあったとしたら、必ずしも凶悪犯罪を起こすわけではありません。やはり、社会的要因も非常に大きいと思います。

ですから、そういう犯罪者を抹殺することによって社会が健全化し、犯罪がなくなるということにはならないのです。

死刑があるから犯罪を起こさず、死刑がなければどんどん人を殺してしまうというような、そのような理性的な判断をもとに犯罪を起こすようなことは、ほとんどないと思います。ごくわずかな例外はあるでしょうが、多くの人間にとっては、死刑制度の有無と犯罪を起こす、起こさないということには関係がないと思います。

■国家による報復から決別を

被害者の報復感情を満足させるという考えは大昔からあります。人間ですから。しかし、報復感情を個人としてもっているということと、国家としてそれを認めるということは別の問題です。私たちは、国家が否応なしに、被害者に代わって報復するということと決別すべきです。

確かに昔から日本には、「忠臣蔵」や「曾我兄弟」などを讃えるメンタリティがあります。しかし、彼らは時の国家権力を使って仇討ちをしたわけではなく、自分たちでやったのです。もちろんそれは、仇討ちがいいという意味ではありません。仇討ちと、国家権力がだれかを殺すというのはメンタルな面で別だということです。

■常にある冤罪の可能性 

それと、私自身が警察に在籍していてつくづく思ったのは、やはり今の司法制度の下では、依然として自白が「証拠の王」ということです。それは変わりません。

法曹一元というけれども、裁判官は本来、当事者主義のもと無罪推定を前提にしていかなければならないのに、ともすれば公判廷の被告人の供述より検面調書を優先します。やはり裁判官には伝統的に国家権力への信頼があって――それが悪いとは言いませんが――今の刑事訴訟の立場からいうと、当事者対等・無罪推定の原則で公判廷に立って公平に行われているかと言えば、決してそうではありません。

そうしたなかで被疑者が勾留・取り調べを受けると、異常心理に陥ることが現実に、非常に多いのです。

私が立ち会った取り調べでもありました。いわゆる拘禁性ノイローゼにかかって、取調官との関係が王様と奴隷のような心理状態になってしまうのです。絶対的権力を握られてしまい、取調官のまったくの言いなりになる被疑者がかなり多くいます。

そして、そういう警察での供述をもとに今度は検察が調書を録っていきます。公判廷で、いくら被告人が「あれはウソだった。勘違いだ。誘導されたんだ」と言ったところで、検面調書には証拠能力がありますから、それが優先されていきます。

そういう実態が今の刑事司法のなかにあり、そんななかでは冤罪の可能性があると思います。これは陪審制など、どんな制度であっても存在するものなのです。

■他者の犠牲の上に立つ幸福や安全などない

人によっては、そんなことはほんの何万分の一の確率だから、社会防衛上しかたがないなどと言いますが、無実で処刑される人にとっては、何万分の一じゃなく100パーセントの話なのです。そういうことを同じ人間がやっていいなんて、ゆるされるべきことではありません。

そんな「何万分の一だから、社会防衛のためだから、いいじゃないか」というような感覚は、今、世の中を覆っている「自分さえよければいい」ということと共通する面があると思います。自分が安全であるために一つのリスクはやむをえないというような感覚です。

昨今は「痛みを分かち合う」などと簡単に言います。自分の会社だけ生き残って同業者がつぶれれば受注数が増えるなど、それを構造改革だなどと言っていますが、そういう今の風潮と共通するところがあります。

しかし、それは違うと思います。他の犠牲で自分が幸せになるとか、安全だなどという考えが世の中を覆っていったら、この世の地獄が来ることは明らかです。

■国内外で声を広げよう

死刑廃止は、政治家だけ孤立無援で成し遂げられる問題ではありません。皆さん方の活動で国民の方々に問題意識をもっていただき、廃止すべきだという世論をどんどん盛り上げていっていただきたいのです。これは決して永田町だけで実現できることではないのです。

永田町の議員も選ばれて来ています。本来は、選ばれた人が選んでくれた人の最大公約数で動かなければならない、というわけではないのですが、やはり選んでくれた人々の意識・感覚に相当影響され、それを抜きにしてはなかなか動けません。

われわれも努力しますが、それだけではなく、皆さんにも相当努力していただきたいのです。

そして、アジアを含めて、死刑廃止の声を国際的に広げていくということです。さまざまに異なる民族や国家が一つの共通の価値観をもつことは、国と国が戦争をしない、テロ行為を起こさせないための基本的な条件です。

宗教も、歴史も、国家の発展段階も、民族も違うなかで共有できる一つの価値観、それが死刑廃止ではないかと思います。人間の尊厳についての基本的な考えの重なり合いといったものが、死刑廃止運動によって生まれてくるのではないでしょうか。

これは、ただ単に制度としての死刑を廃止するというだけにとどまらず、とても大きな、意味あることだと思います。

■議員連盟として取り組むこと

議員連盟として取り組むこととしては、やはりまず議員のなかで参加を呼びかけて賛同者の輪を広げていくことです。

多くの議員は、日ごろあまり突き詰めては考えてはいません。多くの国民の方々もそうかもしれませんが、漠然とした感情で、「悪いことをした人だったら死刑になってもしょうがない」くらいの考えではないでしょうか。他の議員と実際に話してみても感じますが、そこで違うんじゃないかと投げかけていくと、「うーん、やっぱりそうかな……」と死刑廃止の方向に気持ちが動いていくのです。だから廃止の立法に向かっていく可能性は非常に高いと思います。

議連での活動は、できるだけ早く、強力にやりたいと思っています。金田(誠一)氏や保坂(展人)氏などにも動いていただいて、院内で勉強会などをもって議員の意識をきちっとした方向にもっていっていただきたいし、私自身もそういう努力をしたいと思います。

自民党から議連に参加したのが、今6人くらいでしょうか。私は入るようにと言っていますから、まだ入るかもしれません。こういうことについては自民党も民主党も共産党も社民党も、党派は関係ないでしょう。経済政策とか安全保障政策とは別の次元のことですから、どんどん入ってくるように積極的に働きかけたいです。「洗脳」なんていうと言葉は悪いかもしれませんが、最初は無理矢理でも、入ってからいろいろ学んで問題点を真剣に考えていけばいいと思っています。

法務省は役所ですから、そういう動きに対して壁にはなりません。作った法律を執行するのが役人の仕事ですから。もちろん役人は法案を作成して、それを議員が提出することもありますが、多くの国会議員が動けば、議員が提出する法案に対して役人が抵抗するということはありません。

■廃止に向かって

日本での廃止への道のりとしては、まず、皆さんのような市民運動に関わる人たちの力によって国民意識が変化していくことがもっとも大事ではないでしょうか。その一方で、議員の意識を変えていく。

廃止した国をみても、必ずしも死刑廃止に対して圧倒的賛成ではない状況下でも実現していますから、国民の過半数の賛成がなければ絶対できないと考える必要もありません。しかし、日本は民主国家ですから、できるだけ国民の意識の流れができているほうがいいのです。

そして、当面は執行させないことも大切です。執行命令書に判を押す大臣は、現場に行って執行に立ち会うべきです。判を押しているだけでは、死刑制度の問題点は判断しにくいのではないでしょうか。

2001年12月4日インタビュー  写真提供:フォーラム90

                  

【亀井 静香(かめい・しずか)さんのプロフィール】

1936(昭和11)年生まれ。衆議院議員。 民間企業を経て1962(昭和37)年に警察庁に入庁、以後、鳥取県警本部警務部長、埼玉県警捜査二課課長、警察庁警備局調査室・課長補佐などを歴任し、1977(昭和52)年に退官。1979(昭和54)年、広島県6区から初当選以来8回の当選を果たしている。村山内閣で運輸大臣、橋本内閣で建設大臣を務める。

姜尚中さん(東京大学大学院教授)

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