5人が語る、社会への願いとメッセージ

「バレンタインデー」、「ホワイトデー」というと、日本では男女間の恋愛に関わるイベントと考える人が多いかもしれません。
LGBTの人たちの中には、その裏でいろいろな思いを巡らせている人もいます。そんな思いや社会へのメッセージを紹介します。

オープンリーゲイの学生:松岡 宗嗣さん(日本)

オープンリーゲイの学生:松岡 宗嗣さん(日本)

<はじめて自分がゲイだと気付いたとき>

セクシュアリティを認識したのは、小学校5~6年生のとき。自然と同性の友達に惹かれていました。はじめは本当に男性が好きなのか、単なる憧れなのか、よく分かりませんでした。でも「それはないなー」と思っていました。

自分がゲイであることに気づいたのは、中学校の時でした。男性は女性を好きになるという社会通念があったので、漠然とした不安がありました。それは、将来どうしようとか、結婚はできるのだろうかとか、お母さんに何て言おうとか。

高校では、「ゲイ・キャラ」で笑いを取っていましたが、「実際どうなの?」と聞かれると答えられずにいました。高校まで名古屋で、大学から東京に行くことになっていたので、友人には最後の春休みにカミングアウトしました。反応は良かったです。友達には、「ゲイであるということは宗嗣を構成する要素の一つなだけで、宗嗣は宗嗣だから」と言ってくれました。

周りには恵まれていたと思います。これまでセクシュアリティは自分の中の大きな部分を占めていると思っていたものの、意外とそうでもないということに気づきました。

<家族の反応>

大学2年生のゴールデンウィークに東京に遊びに来た母が、「彼女はできた?」と聞いてきたので「またか」と思いましたが、その後に「彼氏はできた?」と聞かれました。自分では家族にはセクシュアリティを知られていないと思っていたのに、なんとなく勘付いたんだと思います。それで鎌をかけてきたんでしょうね。

母は、「宗嗣が病気になったときに、誰か隣にいてくれるということが大事で、そこが一番心配。貧弱なんだから。それが男でも女でもいいよ」と言ってくれました。ファンキーな母なんですよ。

実家の名古屋にパートナーを一度連れて行ったことがあります。家族は、セクシャリティのことを問わず、すんなり「自分の大切にしている人」として接してくれました。 セクシュアリティのこととか、気になることもあっただろうに、そこを深堀することはしませんでした。本当に自然に受け入れてくれました。

<公の場で好意を示すこと>

公の場で手をつないだり、好意を示すことはないです。周りからどう見られるかかなり気になるタイプなので、そういったことはしないです。パートナーとは2年5~6カ月交際していますが、ずっと同じテンションですね。おじいちゃん同士みたいな感じです。喧嘩することもほとんどなく、穏やかな感じです。

<バレンタインについて>

学生時代、バレンタインは女子が意中の男子にチョコをあげるというようなイベントだったので、もうほとんど自分には関係ないなという感じでした。チョコは好きなので、もらうと嬉しいですが。 ゲイのカップルで考えると、女性役、またはより女性っぽい方が相手にあげる、それも何か違うし。だから、しなくていいかなと思っていました。

バレンタインデーの思い出って、本当にないということが、特徴かもしれません。異性愛を前提としたイベントだから、自分は外れていると感じたし。自分があげたい人はいるけれど、チョコを買うのは女性だから、男性である自分が買うことすらはばかられたし、なかなかあげるところまでいかなったです。

<今年のバレンタインの予定は?>

この取材を受けるまで、あまり考えていなかったですね。でも、あげてもいいかな。今は友達や同僚同士で交換することもあるし、もしバレンタインが続くのであれば、女性から男性にチョコをあげるという形ではなく、家族や友人、自分が大切にしている人に感謝を伝えるイベントになればいいと思います。

<社会へのメッセージ>

当事者の可視化が必要だと思います。もっと当事者が身近な存在となり、当事者と仲良くなる機会が増えればいいと思います。メディアの影響で、LGBTというと「おねえ」のような単一のイメージがあります。だから普通の大学生に見える自分が、ゲイだと言うと、周りに驚かれることがあって。LGBTが身近な存在であるということを体感してもらえるといいと思います。

いろんな社会的な困難がある中で、セーフティー・ネットがあったら安心です。また、就職時などさまざまな場面で差別にあう人たちがいるので、基本的な差別を禁じる法律が必要だと感じています。結婚という制度に関しても、いろんな考えを持つ人たちがいますが、異性同士はできるに、同性同士はできないのは、平等ではありません。将来、日本でも同性結婚が認められたら、うれしいです。

レズビアンの活動家:Jさん(韓国)

レズビアンの活動家:Jさん(韓国)

学校や家庭で多様性について学べる機会をつくり、差別をなくし、結婚を含め平等な権利を保障するために、国は率先して法律づくりに取り組むべき

物心ついた頃から自身の性的指向について気づいてはいたものの、20歳になるまで誰にも相談できず、とても悩んだ時期もありました。27歳になった今、ようやく親しい友人には打ち明けることができました。

恋愛は異性とするものといった価値観が多数派を占める韓国では、私たちは存在しないものとされています。長年、一緒に暮らし連れ添った仲でも、異性同士なら当然受けられる社会保障を、同性カップルでは受けることができません。

昨年2月14日、今のパートナーとはじめてのバレンタインデーを一緒に過ごし、お互いにチョコレートを交換し合いました。多様性が尊重された社会を願わずにはいられません。

FtXのミュージシャン:ヴィンシーさん(香港)

FtXのミュージシャン:ヴィンシーさん(香港)

トランスジェンダーに関わる人権問題について、教育と意識啓発が必要。トランスジェンダーの人びとをもっと前向きにとらえられる映画やドラマ、テレビ番組が増えてほしい。ネタでスカートを履いた男性を笑いものにする人もいますが、まったくおもしろくない。一人ひとりのちょっとした意識の変化が必要。

トランスジェンダーのことを知ってもらおうと、音楽を通して活動しています。4年前の夏に、自身の性自認について自覚しました。香港には慣習がないので、バレンタインでパートナーと特別に何かをするといったことはありません。

香港でも、出生時に割り当てられた性別と自認する性別が一致しているシスジェンダーや異性愛が多数を占めます。また、LGBTコミュニティの中でも、シスジェンダーのゲイやレズビアンの人の方が可視化されています。周囲の人の中には、トランスジェンダーの私とどのように接したらいいのか分からず、時折、困惑した顔になる人もいます。

ジェンダー平等や女性の人権についてさえ語ることが難しい香港では夢物語かもしれませんが、トランスジェンダーについて、メディアにもっと前向きなイメージを発信してほしいと思っています。私も音楽を通して、女性、トランスジェンダー、一人ひとりの多様な生き方が尊重される社会づくりに貢献したいです。」

インターセックス チウさん(台湾)

インターセックス チウさん(台湾)

親への支援は必要不可欠です。両親は、私がインターセックス※であることを自分たちのせいだと思っています。インターセックスは病気ではないし、不必要な手術をすることもありません。ましてや両親が責任を感じることでもないのです。

チウさんは男女両方の生殖器をもって生まれ、42歳のときにはじめて自身がインターセックスであることを知りました。インターセックスのことを知らなかった頃は、自分が化け物ではないかと思うほどに悩んだそうです。特に成長期は、身体の変化が他の女の子と違うことに戸惑ったといいます。

わずか6歳のときに女性器の手術を受けたチウさんは、「手術に関する本人の同意や身体への決定権を尊重し、インターセックスを『病気』であるかのような扱いをやめてほしい」と医療に携わる人たちへの教育を訴えます。

「社会一般が求める恋愛や結婚、出産、性的関係への期待に応えることができないために、インターセックスやその家族の多くが社会の偏見にさらされています」と問題を指摘、多様な性、多様な関係、多様な生き方が認知されるよう、政府が積極的に取り組むよう求めています。

※インターセックスとは、性染色体や生殖器の形態などが典型的な性別と断定しにくい人。性分化疾患ともいう。

クィアの活動家クリスさん(フィジー)

クィアの活動家クリスさん(フィジー)

一つの問題をめぐる政治、議論ではなく、あらゆる抑圧や差別、支配のない、すべての人の人権が守られた社会のために、何ができるかをみんなで話し合い、行動しなければなりません。

フィジーは憲法で、性的指向、性自認、性表現を理由とした差別を禁止している世界でも数少ない国の一つです。しかし、実際には異性のカップルに保障されている権利が同性のカップルには認められておらず、また、LGBTIの人たちが暴力を振るわれるなど、差別を受けています。

2年前、フィジーの首相は、同性間の婚姻など「馬鹿げている」と言い放ち、「結婚したいのならアイスランドへ移住しろ」とまで言いました。社会の中で理解が広まっている一方、公人らがLGBTIへの嫌悪を増幅させるような発言を繰り返しています。

こうした中、活動家のクリスさんは、「真の意味において平等と差別のない社会についてみんなで考え、政府にはその実現に向けて、率先して動いてほしい」と訴え、活動を続けています。

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