難民の人権の危機~収容と国外退去~

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2005年6月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民
2005年の世界難民の日、アムネスティ・インターナショナルは難民と庇護希望者に対する恣意的拘禁と不正な国外退去の実施に関心を寄せる。

6月20日は世界難民の日である。世界が難民の苦しい状況に関心を寄せるべき日である。この記念すべき日にアムネスティは恣意的拘禁と国外退去の実施に関する報告書3本を発表した。これらの報告書は、英国、イタリア、スペインの状況に焦点を当てているが、恣意的拘禁と国外退去の実施はこれらの国だけに限らない。

これらの報告書は、世界各地での悲しい現実の一端を示している。公式の統計がないため、どの程度の規模の問題なのかは不明だが、庇護を求める過程で多くの人が収容されていることは明らかである。適切な入国書類や入国許可がない場合、庇護を求めた国へ到着すると同時に自動的に収容される人もいる。難民申請の審査結果を収容施設で待つ人もいる。多くの場合、公平性の基準が十分ではない難民認定手続きを経て難民申請が却下された後に一度は収容される。場合によっては、難民申請や不服申立てが適切に検討される機会を得る前に送還するための短期収容のこともある。

収容処遇は基本的人権の基準を満たしていない。収容者は、たいてい不衛生な過密状態で長期間拘禁され、収容の必要性や虐待の合法性を問うことも効果的にできない。例えば、アムネスティのイタリアに関する報告書では、一時収容センターの収容者が法執行官や監督職員による身体的暴行や鎮静剤と精神安定剤を過剰に乱用されるとの申立てが報告されている。多くの場合、法的助言へのアクセスが制限または全くない状態にある。フェンスの向こうに閉じ込められ、現在も不確実で将来への希望もないため、一部の被収容者は身体的・精神的な問題を抱え、苦しんでいる。これは、残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いに相当するとみなされる場合もある。子どもや拷問被害者らは特に弱い立場にある。収容処遇をチェックする独立した査察機能がないため、収容の処遇や当局の対応がチェックされず免責の風潮が広がっている。庇護希望者と不法移住者らが安全保障上の脅威になるという理由で政府は収容を正当化している。しかし、テロリストとはほど遠く、収容者の多くは人権侵害の犠牲者なのである。

国外退去の実施もまた、人道的扱いと公正な手続きに関する基本的基準を満たしていない。英国での収容処遇に関する調査において、強制送還の際に当局が過剰な暴力を使用を試みたという多くの訴えをアムネスティは受け取った。スペインに関する報告書では、セウタ、カナリア諸島またはアンダルシア海岸に命がけで入国した人びとが、難民申請や退去命令の決定を再検討する機会が十分に与えられることもなくモロッコに追い返されたという報告があった。この中には、子どもや妊婦もいた。恣意的拘禁や不正な国外退去の実施は、基本的人権の侵害である。自由の権利と恣意的拘禁からの解放は、国際人権法に明確にうたわれている。不正な送還からの保護は、人権侵害を受ける危険性がある場所への送還を禁じるノン・ルフールマン原則の保証に必須の前提条件である。

世界難民の日、国際人権法上の義務に従い、庇護希望者や難民らを収容しないようアムネスティは各国政府に求める。また、ノン・ルフールマン原則を十分に尊重すること、そして人権侵害の危険性のある国に何びとも送還されないよう保証する政府の義務も指摘する。これらの責務を果たすため、収容に関するあらゆる決定を自動的かつ定期的に見直す機会を与える手段を講じるべきである。また、強制送還の対象者に対し、手続き上の基本的救済手段へアクセスできることを保証すべきである。これは、法的支援へのアクセス、退去命令に対して異議申立てする機会を含む。

難民や移動を余儀なくされている人びとに関するアムネスティの活動の詳しい情報は、以下のウェブサイトをご覧下さい。(英語)
http://web.amnesty.org/pages/369-200605-feature-eng

アムネスティ発表国際ニュース
(2005年6月16日)
AI Index: POL 30/017/2005