イラン:アムネスティ、未成年時犯罪者に対する死刑をやめるよう要請

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2006年1月20日
国・地域:イラン
トピック:死刑廃止
アムネスティはイラン当局に対し、未成年時犯罪者に対する死刑の適用を今すぐにやめるよう求める。

犯行時に18歳未満だった人が死刑判決を受けたケースがイランであらたに2件報告された。これは国際人権法上の義務違反である。

1月3日、刑事法廷において、18歳のナザニンさんが殺人罪で死刑判決を受けた。ナザニンさんは、2005年3月、カラジにある公園で、彼女と16歳の姪をレイプしようとした3人の男性のうちの一人を刺し殺したことを認めたという。当時彼女は17歳だった。判決は控訴裁判所で再審理され、支持されれば最高裁判所で承認される。

イランの新聞エテマード紙の報道によれば、3人の男がナザニンさんと姪に近づいてきて、地面に押し倒しレイプしようとしたと彼女は裁判で証言したという。姪と自分自身を守ろうとして、ナザニンさんは所持していたナイフで一人の男性を刺したが、犯行が止まらなかったため別の男性の胸を刺した。彼女は法廷で、「私は姪と自分を守りたかったのです。殺したかったのではありません。誰も助けに来てくれないあの状況で、どうしていいかわからなかったのです。」と述べたというが、それでも死刑判決が言い渡された。

もう一人の未成年犯罪者は19歳のデララ・ダラビさんで、17歳の時の殺人で、ラシトの裁判所で死刑判決を受けた。彼女は犯行を否認しており、弁護士が控訴中にもかかわらず、1月初めに最高裁が死刑判決を支持した。

ペルシャ語のニュース「アフタブ」によれば、デララ・ダラビさんと19歳の男性アミル・ホセインさんは、強盗目的で侵入した家で、住人の女性を殺害したという。デララ・ダラビさんは当初犯行を自白したが、後に自白をひるがえし、アミル・ホセインさんに頼まれて、彼が処刑されないように罪をかぶったと述べた。ホセインさんは、犯行時18歳未満のデララさんは死刑判決を受けないだろうと考えたのである。デララ・ダラビさんは犯行時鎮静剤を服用していたと述べている。

イランは自由権規約および子どもの権利条約の締約国であり、18歳未満の時の犯罪に対して死刑を適用しない義務がある。それにもかかわらず、1990年以降イランで18人の未成年犯罪者の処刑がアムネスティに報告されている。2005年だけでも少なくとも8人の処刑が報告された。

イランでは約4年間、18歳未満の時の犯罪に対する死刑の適用を禁止する法案が審議されていると伝えられている。しかし過去2年以上にわたり、未成年犯罪者の死刑執行数は増加してきた。司法報道官の最近のコメントによれば、いずれにせよ新法では子どもの犯罪のうちの一部について死刑を禁止するにすぎないという。「キサース刑(同害報復刑、被告人が殺人で有罪の場合に言い渡される)」は私的な問題で、国家が扱うものではないというのである。イランでは、未成年時犯罪者の死刑の多くは、殺人で有罪となった「キサース刑」のケースである。

子どもの権利条約の履行状況を監視する国連子どもの権利委員会は2005年1月、イランに対し、18歳未満の時の犯行で有罪とされた人に対するすべての死刑執行を即時停止し、未成年時犯罪者への死刑適用を廃止するよう要請した。

12月9日、超法規的、即決または恣意的処刑に関する国連人権委員会特別報告者フィリップ・アルストン氏は、「実質的には世界中の他のすべての国が、子どもの犯罪に対して死刑を適用しないときっぱりと決めている中で、イランのしようとしていることは容認しがたい。犯行時に未成年だった者を死刑にしない義務があることは明白かつ疑いようもないものであるだけでなく、イラン政府自身が子どもの死刑をやめる予定であると宣言しているにもかかわらず、このような処刑が行なわれようとしていることに驚きを覚える。」

アムネスティはイラン当局に対し、デララ・ダラビさんとナザニンさんを始めとする未成年時犯罪者に対する死刑の執行を中止し、自由権規約および子どもの権利j条約の締約国としての義務に従って、すべての未成年時犯罪者に対する死刑を廃止する緊急の措置をとるよう要請する。

アムネスティ発表国際ニュース
(2006年1月16日)
AI Index: MDE 13/005/2006

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