ネパール:人権NGO3団体の代表が国王側に対する制裁を要求

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2006年4月25日
国・地域:ネパール
トピック:危機にある個人
(ジュネーブ)アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国際法律家委員会は、各国が、ネパールのギャネンドラ国王や政府高官、上級軍人らが自国へ入国することを拒否し、彼らが持つ海外の個人資産を凍結するよう訴えた。3団体は、ネパールの人権状況を検討するためにスイス政府が主催したジュネーブでの国際会議で、この要請を表明した。

ギャネンドラ国王は、2005年2月1日に全権を掌握した。以来、国王と政府関係者は、数千もの批判者に対する恣意的な逮捕や拘禁、被拘禁者に対する拷問や虐待、表現や集会の自由に対する厳しい規制などの深刻な人権侵害について責任がある。軍隊は、マオイストに対する戦闘下において、国際人権法および人道法を侵害し続けている。

3団体は、ギャネンドラ国王をはじめ、トゥルシー・ギリ閣僚会議副議長、カマル・タパ内務大臣、ニランジャン・タパ法務大臣、スリシュ・シャムシェル・ラナ情報大臣など、人権侵害政策の立案と執行に直接的に責任ある人びとを対象として制裁を加えるべきであると主張した。また制裁は、軍最高司令官であるピャル・ジュン・タパ将軍、シヤム・バクタ・タパ警察長官、 警察部隊のシャハビル・ タパ長官などの治安関係の責任者にも課されるべきである。

「ネパールの内戦による人的被害は、悲惨な状況である。人びとは殺害されたり「失踪」したりし、女性は強かんされ、子どもたちは兵士にするために誘拐され、また、政権を批判する者は拘禁されている」と、アムネスティ・インターナショナルのアイリーン・カーン事務総長は語った。「ギャネンドラ国王とその関係者は、人びとの苦しみに無頓着のようだ。今こそ国際社会は、ギャネンドラ国王とその関係者に直接的な影響を与えうる選択的な制裁を通じて、圧力をかけなければならない」

人権NGO3団体は、2005年のネパールに関する決議に基づいた国連人権委員会の要請をネパール政府が遵守しているという明確な証拠がある場合にのみ、制裁が解除されるべきであると主張した。

ネパールに対する最大の軍事支援国であるインドおよび米英は、すでにネパールへの軍事支援を一時的に停止している。特にこれらの国々の在外部隊は、ネパールにおける人権状況が劇的に改善されるまで、ネパール国軍と従来のような関係を持たない意思を明らかにすべきである。

このような深刻な人権侵害の責任者である国王や幹部に対する制裁は、人権侵害行為を変えるために必要である」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス事務局長は語る。「ギャネンドラ政権は、その利権が危機に瀕しない限り、国際社会からの圧力に応えようとはしない。」

ネパール政府による昨年の人権侵害は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)による努力の最中に引き起こされた。そうした人権侵害は、2005年4月20日に国連人権委員会が採択した厳しい決議を無視したものである。決議は、ネパール政府に対して、恣意的な逮捕や超法規的処刑、拷問や虐待、また治安部隊がおこなった人権侵害への免責に終止符を打つよう求めていた。

ネパール政府による人権侵害は、4月6日から9日にかけて予定された民主化要求行動の前夜に悪化した。国王の直接指揮の下、警察や軍隊は、全国規模のデモに対して過剰な暴力を用い、少なくとも6人の死者と何百人という負傷者を出した。また当局は、政府に対して抗議する何千もの人びとを拘禁している。公共治安法(PSA)の下で、800人以上が拘禁され続けており、彼らの多くが、弁護士や家族と連絡をとることができない。

「ネパールは、武力紛争と民主化闘争という二重の危機に瀕している」と、国際法律家委員会のニコラス・ホーウェン事務局長は言う。「民主主義を一掃し、政府に対する正当な抗儀や批判を抑圧することで、国王は、将来を決め、紛争を平和的に解決するために必要な民主的手段を人びとから奪っている。今こそ、国際社会が対応を強化する時である。」

最近の政治的抑圧は、すでに深刻な状況にある人権侵害にいっそう拍車をかけている。ネパールでの10年におよび内戦は、何千もの市民の命を奪い、何万もの人びとを故郷から追いやった。また人びとは十分な食糧を得ることができず、医療サービスや教育を満足に受けることもできなかった。内戦の両当事者は、国際人道法および人権法を著しく侵害してきた。3団体は、ネパール共産党(マオイスト)に、2005年に国連人権委員会で非難された行為を止めるよう、これまでの再三の要請を改めて強調した。3団体は、ネパールにおける人権および人道上の危機は、地域の安全保障にも影響あたえるだろうと警告した。

3団体は、国連安全保障理事会に、ネパールにおける人権の危機を安保理の議題とし、ネパールの政府高官にする国際的な制裁を課すよう要求した。また、インド、中国、日本、欧州連合、米国などネパールの隣国や主要なドナー国に対し、直ちに制裁を実施するため協力するよう促した。

3団体は、国際人道法および国際人権法違反に責任のある人びとは、個別に刑法上の責任を負うべきであることを改めて指摘した。

アムネスティ国際ニュース
(2006年4月18日)
AI Index: ASA 31/019/2006

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