キンバリー・プロセス:キンバリープロセス認証制度を効果的に強化するための参加国への勧告

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2006年6月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:企業の社会的責任
背景情報
2000年12月1日、国連総会は紛争を煽るダイヤモンド取引の役割についての決議を全会一致で採択した。この決議は、アンゴラ、コンゴ民主共和国、シエラレオネといった国ぐにで見られたダイヤモンド原石の違法取引と武力紛争による大規模人権侵害の関係を断ち切るため、国際的な認証制度の設置を支持するものであった。市民団体によるキャンペーンが紛争ダイヤモンド問題に対する国際的関心を呼び起こし、国際社会に行動をとるよう圧力をかけた。いくつかのアフリカ諸国で起こっている武力紛争に関連して国連決議が採択され、制裁措置がとられたことで、国際社会やダイヤモンド産業は、認証制度を設置し、紛争ダイヤモンドが適正な取引に流入するのを防ぐことになった。これが「キンバリー・プロセス」であり、ダイヤモンド産出国が紛争ダイヤモンドの問題を話し合うために、南アフリカのキンバリーで初めて開催された会合にちなんで名づけられた。

キンバリー・プロセスは、各国政府、ダイヤモンド産業そして市民団体の代表者の協力を受けている。2000年5月からアムネスティは、グローバル・ウィットネスなど他のNGOとともにキンバリー・プロセスに参加している。数年間に渡る長い交渉の末、キンバリー・プロセス認証制度(KPCS)が、2002年11月にスイスのインターラーケンで開催された閣僚会議で採択され、2003年1月から開始された。

KPCSは70ヵ国近くの政府(主要なダイヤモンド取引国と産出国を含む)が参加し、またすべての参加国は紛争ダイヤモンドの取引を禁止する法律を採択し施行している。これらの進展があったにもかかわらず、その設立から3年経っても、KPCSは未だ十分に紛争ダイヤモンドの国際的取引への取り組み、監視、そして取引の廃止が実現していない。

KPCSは、この三年間の公式評価手続を2006年におこなう。キンバリー・プロセスがどれだけ有効に機能しているのかを評価し、この制度をより強化する方法を確認するためである。アムネスティはKPCS参加国政府に対し、このキンバリー・プロセスの評価手続きの機会を使って、その有効性強化のための管理、施行、透明性といった問題に取り組むよう呼びかける。この評価手続きを断固としておこなうことは、KPCSが紛争を煽るダイヤモンドを確実に廃止させる有効な認証制度へと発展するための重要な一歩である。

キンバリー・プロセス参加国政府に対する以下の勧告は、監視、施行、参加基準、透明性といった規定に関係する。アムネスティは、その中でも特に、KPCSおよび企業自身が紛争ダイヤモンドとの闘いに向けて実施することを誓約した自主規制について、企業の遵守状況を政府が監視、評価することの必要性を強調する。評価手続はまた、ダイヤモンド取引の実施や遵守と産出に関する統計上の差という問題にどのように取組むかを確認するべきである。統計は、紛争ダイヤモンド取引に取り組むための重大な手段である。また、KPCSへの参加や処分についての明確な基準を設けるべきである。さらに、アムネスティは、参加国政府に対して、KPCSの有効な監視と運営を保証するために、またKPCSの実施について各国の能力を高めるために、KPCSへの十分な資金を調達し、専門的支援を提供するように要請する。

アムネスティは、以下の勧告がキンバリー・プロセス参加国にとっての優先事項であると考える。しかしながら、アムネスティは、KPCSが紛争ダイヤモンドの問題を超え、認証制度の中にダイヤモンド取引の紛争ダイヤモンド以外の人権の諸要素をも含めることを考えはじめるよう促すものである。

さらに、ダイヤモンド産業は、紛争ダイヤモンドの取引に関わり続けるような取引要素を厳重に取り締まるために、法執行機関と協力し、第三者による監査措置を講じることによって、KPの活動に本気で関わっているということを行動で示さなければならない。

勧告

1) 参加国政府は、国が採択を求められる最小限の規制施策を設けるべきである。また、これらの要求を満たす能力を強化するために努力目標を作るべきである。

各KP参加国政府の裁量に委ねられた国内での内部規制は、ダイヤモンドの産出地を追跡し紛争ダイヤモンドが適正な取引に入ってこないよう保証するはずのものだった。その結果、3年後、不完全でむらがあるものとなってしまい、国ごとに有効性が異なっている。有効な内部統制メカニズムを確保するため、参加国政府は企業の遵守確認措置を含む最低限規制施策を設け、各参加国がそのような施策を実施し強化するための必要な力を発展させることを確保するべきである。

2) 参加国政府は、遵守の問題に対処するための施策を改善し、KPCSに参加を許可するときにはその国に厳しい基準を適用するべきである。

KPCSは政府間の自発的な協力に基づいているが、認証制度が有効で信頼性を持つためには、違反に取り組むメカニズムをもっと設け、必要な場合には違反国を参加一時停止にすることが重要である。違反に取り組むための明確な方針や手続きと、違反国の一時参加停止は、厳しく作り上げられ、適用されなければならない。新しいKP参加国を承認するために、より一貫した徹底的な取り組みを行なう必要がある。

3) 参加国政府は、企業のKPCSと自主規制の遵守の監視を強化するべきである。

アムネスティや他のNGOがKPCSについて行なった主な批判のうちの1つは、ダイヤモンド企業の産出から流通過程のKPCS遵守を確認する際のチェックが不適切であることである。これにより、違法ダイヤモンドが取引に混入させてしまう抜け穴が出来上がっている。

アムネスティとグローバル・ウィットネスが共同で発表したダイヤモンド企業に関する共同報告書および調査は、ダイヤモンド企業が、自ら約束したはずの自主規制の基本的措置を実施し切れていないということを示した。 

企業による自主規制が企業自身の自発性に依存する限り、それを実施するのは善意の企業だけである。有効性を持つためには、企業の自主規制制度は自発性を超えなければならない。それゆえに参加国政府は、厳しい監査の実行と企業実績の検査により自主規制の企業による遵守を監視するべきである。ダイヤモンド企業を監視する政府の責任は、KPCSに統合され、すべての参加国政府のために明示的な義務となるべきである。

4. 参加国政府は、統計評価と他のKP文書の透明性を増加させるべきである。

透明性のある統計データの評価は、効果的に違法取引を見抜き、参加国がKPCSを守っているかどうかを確認するために重要である。輸出/輸入量と生産量の分析と比較は、不合理を明らかにし、違法取引を暴くことができる。このデータの重要性にもかかわらず、現在KPCSはこの資料を公開していない。データを透明性のあるものにすることは、KPCSの説明責任と統合性を保証するとともに、データを紛争ダイヤモンド取引と闘う国際的努力の一環として使用できるようにするという点で重要である。透明性のある統計データを収集することはさらに重要で、統計データの質を高めるとともに、政府が継続的にかつ適時データを提供することを確保する。KPCSはまた、各国のダイヤモンド規制制度を検討するために訪問した際の報告書のような他の適切な文書も公開するべきである。

5. 参加国政府はダイヤモンドが非関税地域を通過する場合、特別の警戒をするべきである。

ダイヤモンドが非関税地域を通過する国の政府は、ダイヤモンド取引のチェックや監視に特に慎重にならなければいけない。ダイヤモンドの輸入、保存、輸出の明確な統計上の規制を受けるべきである。税関職員に、チェックの実施方法についての明確な手引きを提供し、それが常に行われ、有効であり、その記録も残っていることを確認するべきである。

6. 参加国政府は、ダイヤモンドの切削および研磨施設の内部規制を改善するべきである。

NGOによって数年にわたって集められた信頼できる情報(グローバル・ウィットネス「有効活用:なぜキンバリー・プロセスは紛争ダイヤモンドをなくすためにもっと強力でなければならないのか」を参照。http://www.globalwitness.org/reports/show.php/en.00082.html)は、切削や研磨施設に規則や監視がないために、紛争ダイヤモンドが適法な取引の枠組みに入ってくる危険があることを示している。

もし研磨施設が適切な管理体制を持っていなければ、紛争ダイヤモンドが密輸され、工場を通じて洗浄されてしまう危険がある。一旦研磨されてしまうと、これらのダイヤモンドはキンバリー・プロセスの規制から外れてしまう。

アムネスティは切削および研磨産業のある国の政府に下記を要請する。

・政府当局がダイヤモンド原石の研磨工場への輸入や加工ダイヤモンド輸出の規制と、帳簿上の記録と在庫を比較するための研磨工場の監査を可能にすること。

・ダイヤモンド取引企業や研磨企業に対し、ダイヤモンド原石の輸入や、削られ研磨された輸出用原石の加工の詳細、残った輸出用ダイヤモンド原石を記録するように求めること。これらの数字は毎月政府に提出されるべきである。

7. 参加国政府はKPCSの調整や実施のためにKPCSに十分な資金を調達し、専門的支援を提供するべきである。

今日まで、KPCSは、ボランティアレベルでの作業に基づいており、常設の事務局その他の専門的支援を受けていない。しかしながら、KPCSが重要な実施段階に移行する上では、有効な調整を保証し、KPCSを実施する各国レベルの能力強化のために、より多くの資源を確保する必要性がある。参加国政府は事務局を設置するか、制度の有効性を増強するための必要な資源の追加提供を考慮するべきである。

AI Index: POL 30/024/2006 21 June 2006
2006年6月21日