英国:英国/ルワンダ:英国をジェノサイド被疑者の天国にするな

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2006年8月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:英国
トピック:国際人権法
アムネスティ・インターナショナルの事務総長アイリーン・カーンは、司法長官ゴールドスミス卿に宛てた書簡の中で、英国は大量虐殺(ジェノサイド)をおこなった者の天国となりかねない、と警告した。この書簡が送付されたのは、1994年のルワンダのジェノサイドに関わったという疑いのある2人の男性に対する捜査を、英国当局が行わなかったことを受けてのことである。

アイリーン・カーンはゴールドスミス卿宛の書簡の中で、英国が国際法による義務を果たさず、ジェノサイドの被疑者である英国在住のルワンダ人2人に対する訴えをこれまで取り調べていないことに重大な懸念を示している。2人とも、ルワンダ政府がジェノサイドの罪について出した国際逮捕状の対象者である。

安全保障理事会が、2008年までにすべての裁判を終えるようにと指示していることを受けて、ルワンダ国際刑事法廷(ICTR)は、ジェノサイドおよびその他の重大な国際法違反に対する逮捕・起訴状の発行を停止した。ICTRは現在個々の事件を各国の司法機関に付託しており、それぞれの国の国内に住む被疑者を訴追するよう各国政府に求めている。

アイリーン・カーンはゴールドスミス卿に対する書簡で次のように述べている。
「過去10年間に、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、スイスがルワンダでのジェノサイドの被疑者に対して司法手続きを開始した。英国当局はこれら被疑者の訴追を求めるICTRの要求に応える義務がある。」

国際法によると、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪または拷問に責任があると疑われる者が国内にいることが判明すれば、英国を含むすべての国は直ちに独立した公正な調査を徹底的に行い、その者を疑う合理的な根拠が存在するかどうかを立証しなければならない。

アイリーン・カーンはこう述べる。「被疑者が住んでいる国がその者を他国に引渡さず、しかも十分に検証可能な証拠があるならば、その被疑者を国内で訴追すべきである。英国が、英国領内に住み、人道に対する罪およびその他の国際法違反を犯したと疑われている者を裁けないか裁くつもりがないなら、それをする能力と意思のある国に引き渡すべきである。」

ルワンダ当局とICTRは、将来事件をルワンダに戻すことを協議している。そのためには死刑を科さないことと公正な裁判基準を保証することが条件となる。この協議に基づき、事件を国内に戻すべく、ルワンダ政府が新たな立法措置を講ずる可能性がある。

アムネスティは書簡の中で、ルワンダの過去の人権状況にかんがみ、ルワンダ政府の能力に重大な憂慮を表明している。すなわち、ジェノサイドの被疑者に対して国際的に認められた法や基準を満たすような公正な裁判を受ける権利を保障することができるのかということや、拘禁前、拘禁中、拘禁後の被疑者の安全の確保といった点についてのルワンダ政府の能力である。さらにルワンダの司法制度には改革が必要であり、資源の増強と法律スタッフに対する広範囲な研修が必要とされている。アムネスティはこのようなルワンダの司法機関の処理能力にも重大な懸念を表明している。そうした点を考慮しつつ、アムネスティは被疑者のルワンダ移送には反対している。

書簡の中でアイリーン・カーンはこう語っている。
「アムネスティは、英国当局に対し、これら2人の被疑者を公正な裁判を受ける権利を保障しながら英国内で訴追するか、さもなければ公正な裁判の権利を完全に保障した上で、訴追しようとしている第三国に引き渡すよう求めている。」

アムネスティ発表国際ニュース
2006年8月4日
AI Index: EUR 45/013/2006

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