イラク:フセインらに対する死刑判決に遺憾

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2006年11月 7日
国・地域:イラク
トピック:死刑廃止
イラク高等法廷(SICT)において共同被告人として裁判にかけられた8人のうち、サダム・フセイン他2人に対し死刑判決が言い渡されたことに、アムネスティ・インターナショナルは深い遺憾の意を表明する。この裁判には大きな欠陥があり、不公正であった。イラクの元独裁者であるフセインは、1982年の暗殺未遂事件後にドジャイル村で起きた148人殺害事件に関与したとして本日死刑判決を受けた。裁判は、米軍がフセインを拘束してからほぼ2年後の2005年10月に始まり、今年7月に終了した。当初、評決は10月16日とされていたが、法廷が、証言を再検討するためにさらに時間が必要だとしたために延期された。

裁判はこの後、SICTの破棄院による控訴審に持ち込まれ、原判決が支持されれば30日以内に死刑が執行される。

アムネスティの中東・北アフリカ部のマルコム・スマート部長は次のように述べた。「サダム・フセイン支配下で行なわれた大規模な人権侵害について真実を解明し説明責任を明確にするという点で、この裁判は、イラクにおける正義と法の支配の確立に大きく寄与すべきものだった。しかし実際には、裁判は実に杜撰で、国際基準に合致するような公正な裁判を行なう能力があるかどうかについて、疑問が生じるような重大な欠陥が、現行の法廷にはあった」。

とくに、政治が介入したために法廷の独立性と公平性が損なわれ、最初の裁判長が辞任し、新たな裁判長の任命が妨害された。法廷は証人および被告側弁護人を適切に保護する措置をとらなかったため、このうち3人が裁判中に暗殺された。サダム・フセインも逮捕されてから1年間は弁護人との接見を拒否された。弁護人らは、裁判手続に関して、公判期間中を通じて異議を申し立てたが、法廷がこれに対し適切に応じたようには見えない。

「どのように重大な犯罪で起訴されようと、すべての被告人には公正な裁判を受ける権利がある。この明白な事実は、数十年にわたるサダム・フセイン専制時代には常に無視されていた。フセイン政権の転覆によって、この基本的権利が復活するチャンスが生まれた。また同時に、過去の犯罪に対する説明責任を公正な形で明確にする機会が生まれた。しかしその機会は失われ、死刑の導入によって状況はますます悪化した」。スマート部長はそのように述べた。

アムネスティは控訴審を注意深く見守っていく。控訴審では法律の適用についての審査だけでなく証拠の見直しも行なわれるため、これまでの手続上の欠陥を是正する機会となる。しかし、これらの欠陥の重大性、またこれらの欠陥が現在進行中のSICTでの裁判でも引き続き悪影響を及ぼし続けていることを考え、アムネスティはイラク政府に対し、別の選択肢を真剣に考慮するよう求める。別の選択肢とは、国外の裁判官を加えることや、9月に恣意的拘禁に関する国連作業部会が示したように、国際法廷に裁判を委託することである。

サダム・フセインは現在、別の事件についてSICTで裁判を受けている。これは、1988年にイラクのクルド少数民族数千人が殺害されたり拷問その他の重大な人権侵害を受けた、いわゆるアンファル作戦に関する裁判で、6人の共同被告人と共に起訴されている。

AI Index: MDE 14/037/2006
2006年11月5日

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