モロッコ/西サハラ:移民・庇護希望者の権利の危機-セウタ、メリリャから1年

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2006年11月11日
国・地域:モロッコ/西サハラ
トピック:難民と移民
スペイン領セウタとメリリャへ入ろうとする13人の移民が殺害され、数百人が負傷してから1年が経過したが、この件に関係したスペインおよびモロッコの治安部隊の行動に関する調査の結論は出ておらず、予防策もとられていない。被害者の証言と、アムネスティ・インターナショナルが過去2年間にわたりスペイン、モロッコの当局と直接接触して得た情報に基づく新しい報告書においてアムネスティは、今後の調査が徹底的かつ公平、効果的に行われる保証はなく、これまで移民の死亡や彼らへの虐待について規律ある行動がとられていないことに懸念を示している。これは、これまでの免責を意味している。

アムネスティのヨーロッパ・中央アジアプログラム部長のニコラ・ダックワースは次のように話している。「スペインとモロッコの当局は、移民や庇護希望者の強制退去にあたり、過度の武力を行使しているだけでなく、多くの場合、帰国すれば拷問やその他の虐待のおそれのある国へ、彼らをひとまとめにして即座に強制退去させている。

「多くは、戦争により疲弊し、極度の貧困や病気がはびこる国を離れてきており、中には庇護を求める権利を行使している者がいる。両国は彼らを強制退去させることにより、移民および庇護希望者に関する国内的ならびに国際的義務を侵すことになる。」

2006年7月にも、新たに3人がモロッコからスペインへ入国を試みる際に殺害された。翌日、スペインの内務大臣がアムネスティに対し、今回と過去の事件に関する調査について最新の調査情報を提供することに合意したが、現在までアムネスティは情報の提供を受けていない。

二コラ・ダックワースは、「スペインの内務大臣は、その発言に基づいて行動し、アムネスティに調査結果を報告するとともに、国際法や国際基準に準ずる武力行使の基準を保証すべきである」と述べた。

「警察官による深刻な人権侵害に関するすべての申し立てを調査するため、充分な資金を備えた独立の機関を設立すべきである。」

セウタやメリリャへのフェンスを登ろうとする移民や庇護希望者に対する、スペインの民間警備員による虐待や近距離での銃器、重ゴム弾の使用といった過度な武力行使に関する申し立てについて、アムネスティはこれまでに繰り返し懸念を表明している。

さらに、国境のフェンスの間でスペインの民間警備員に捕らえられた人の多くは、最も近いフェンスのゲートからモロッコ領へ非合法的に強制退去させられている。この間、法的な助言を得る機会やスペインの国内法で定められている、通訳へのアクセスも与えられない。2国間の国境においてはスペインの外国人法が「完全に」適用されるものではないというスペイン当局による主張について、アムネスティはこれを容認することはできないと考える。

ニコラ・ダックワースは、「人々は法的に曖昧な状態でいることはできない。彼らの法的な身分が決定されなければならない。」と述べている。

スペイン国境の反対側では、今年と過去数年間で数千人が非正規移民の容疑でモロッコ当局に逮捕され、オウジャという都市に近いアルジェリアとの国境地域へ強制退去させられている。モロッコの法律によって保障されている退去命令に対する上訴や決定の根拠の見直しの機会を与えられることなく、逮捕者の即座の強制退去が継続的に行われている。かつてアルジェリアでも、アルジェリア当局によりモロッコやその他の近隣国の国境へ略式で強制退去させられ、同様の扱いを受けていた。

ニコラ・ダックワースは、「即座で集団的な追放は止めるべきである。個別のケースの検討や庇護希望者の特定を行っておらず、これらの行為は違法である。さらに、退去を実行する手段が彼らを身体的危険にさらしている。」と述べた。

前回より件数は減ってきているものの、逮捕、追放された中に庇護希望者が含まれていたという報告をアムネスティは継続して受けている。とりわけ、モロッコ当局が、庇護希望者であると認めるUNHCRの書類を没収し、彼らの目の前で破り捨てたという報告については特別な懸念を表明する。

アムネスティはEUに対し、その加盟国であるスペインが、法執行機関の当局者による過度の武力行使や銃器の使用について、迅速で徹底的かつ独立、公平な調査を必ず行うよう確約するとともに、EU・モロッコ間の帰還に関する協定において、適切な人権条項が盛り込まれることを保証するよう要求する。

背景スペインとモロッコの当局による、移民と庇護希望者に対する虐待に関する申し立てを調査するために、アムネスティの派遣団が2005年10月にスペインのセウタとメリリャ、モロッコのナドール、オウジャ、ラバ、タンジエールなどの都市を訪問した。この調査の間、アムネスティは国境を越えようとする人々に対する人権侵害に関し、気がかりな報告を受けた。

アムネスティ発表国際ニュース
2006年10月26日
AI Index: EUR 41/011/2006 (Public)

 

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