イラン:石打ち処刑に反対

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2007年6月20日
国・地域:イラン
トピック:死刑廃止
明日、2007年6月21日に予定されている、2人に対する石打ち公開処刑をやめるよう、アムネスティ・インターナショナルはアヤトラ・シャハルディ司法長官に緊急要請する。処刑はカズビン州のタケスタンという町の墓地で予定されている。執行される2人は、モカラメ・エブラヒミ(女性)と、男性である。男性の名前はわかっていない。

イランでの「石打ち処刑永久廃止」運動(ペルシャ語のサイトは http://www.meydaan.com/news.aspx?nid=391 )に参加している活動家によれば、モカラメ・エブラヒミと姓名不詳の男性は、婚姻外性交渉(不貞行為)で有罪となり死刑判決を言い渡された。イランの刑法第83条に基づき、既婚の男女の婚姻外性交渉(不貞行為)には石打ち処刑が適用される。イランの法律では、婚姻外性交渉(不貞行為)を証明できるのは、目撃証人(証人の数は婚姻外性交渉(不貞行為)の形態によって違う)か、本人の自白(4回行なう)か、婚姻外性交渉(不貞行為)が行なわれたことについての裁判官による「認知」のいずれかだけである。このケースの場合、有罪の根拠は、裁判官の「認知」で、2人の間に子どもが1人いることがその根拠であると思われる。

モカラメ・エブラヒミと男性はこれまで11年間、カズビン州のチョウビン刑務所に投獄されていた。最近になって、2人は石打ち処刑の判決を破棄するよう恩赦と減刑を司法委員会に申し立てたようだが、これは却下され、執行は6月17日に決まった。しかし、執行は6月22日となり、公開処刑となった。処刑には、タケスタンの刑事法廷第1支部の裁判官も立ち会うと伝えられている。この裁判官が最初の石を投げ、集まっている人びとが、2人の死亡が宣言されるまで石を投げ続ける。モカラメ・エブラヒミと男性が入れられる穴は、すでにベヘシュト・ザフラ墓地に掘られているという。

アムネスティは、イラン当局に対し、この石打ち処刑をやめさせ、2人の死刑を減刑させるために今すぐ介入するよう求める。死刑は、残虐、非人道的あるいは品位を傷つける究極の刑罰であることから、アムネスティはあらゆる死刑に反対している。石打ち処刑は死刑の残忍さを助長するものである。なぜなら、処刑に使用される石は、死刑囚が痛みを感じるほど大きく、なおかつ即死しない程度に小さいものが故意に選ばれ、死刑囚の苦痛を大きくするように考えられているからである。

またアムネスティは、イラン政府に対し、石打ち処刑を全面的に廃止し、刑法第83条を削除あるいは修正するまでは執行を停止するよう求める。現在言い渡されている石打ち処刑の判決は減刑すべきである。

さらにアムネスティは、私的に行なわれた合意による成人の性的関係を犯罪とすることに反対している。したがってイラン当局に対し、こうした行為を合法化するために、関連する法律を見直すよう求める。

背景情報
イランの法律では、既婚の男性あるいは女性による婚姻外性交渉(不貞行為)には石打ち処刑が定められている。イランの刑法には、処刑方法と使用する石について、大変具体的に規定されている。第102条によれば、石打ち処刑の際には、男性は腰まで、女性は胸まで埋められることになっている。また、婚姻外性交渉(不貞行為)に対する刑罰を定めた第104条には、使われる石は、「1つか2つで死んでしまうような大きさであってはならず、また、石とは言えないほど小さなものであってもならない」と定められている。

2002年12月、司法府代表のアヤトッラー・シャハルディは裁判官に対し、イラン最高指導者ハメネイ師による法改正の決定が出るまで、石打ち処刑を停止するよう命じる決定を繰り返し出してきた。しかし、2003年9月、石打ち処刑を含めた特定の刑罰の適用に関する法律が成立し、執行停止は無効となった。また、執行停止中にもかかわらず、アムネスティは石打ち処刑の判決の報告を受け取り続けた。処刑はしばらくなかったが、2006年5月に男性1人と女性1人が執行されたと伝えられた。この2人は、アッバス(男性)とマハブベ(女性)で、マハブベの夫を殺害したことと、婚姻外性交渉(不貞行為)の罪で有罪となり、マシュハドの墓地で石打ち処刑になった。墓地の一部が一般人立ち入り禁止となり、革命防衛隊とバシージ隊のメンバー100人以上が立ち会い、石を投げて2人を処刑した。

2006年11月21日、故ジャマルカリミラド法務大臣が、イランで石打ち処刑が行なわれていることを否定した。続いて12月8日にも、テヘランの刑務所機関の長官が同様の発言をした。石打ち処刑廃止運動家はこうした発言に対し、マシュハドでの石打ち処刑は実際に起こったことだという動かぬ証拠があると述べた。

2006年半ば、ジャーナリストや弁護士を含むイランの人権擁護活動家のグループ(大半が女性)が、石打ち処刑廃止運動を開始し、石打ち処刑の判決を受けた人は女性が9人、男性が2人だと発表した。11人の名前は、ハジエ・エスマイルバンド、アシュラフ・カルホリ、パリサ、イラン、ハブリエ、シャマメ・ゴルバニ(マレク)、コブラ・ナジャル、ソーラ・モライ、ファテメ、アブドラ・F、ナジャフである。「石打ち処刑永久廃止」運動の目的は、この11人の生命を救い、石打ち処刑を法律上も事実上も廃止することである。この運動に参加している弁護士たちは、11人を弁護している。この運動が始まってから、3人が処刑を免れ、残りの人びとは執行停止となった。再審となったケースもある。ハジエ・エスマイルバンドは2006年12月9日、石打ち処刑が適用される婚姻外性交渉(不貞行為)について無罪となり、現在は釈放されている。パリサの石打ち処刑は、最高裁の裁定によって鞭うち刑となり、99回の鞭うちを受けた後、2006年12月5日に釈放された。パリサの夫であるナジャフも、最高裁で鞭打ち刑となった。

AI Index: MDE 13/075/2007
2007年6月20日

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