イラン:驚くべき大量処刑

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2007年9月 5日
国・地域:イラン
トピック:死刑廃止
イランで9月5日の朝、21人の死刑が執行されたという知らせに、アムネスティ・インターナショナルは愕然としている。アムネスティの記録では、2007年に入ってからの同国での執行数は今回の執行で210人となった。

この数は、2006年の177人を上回るものであるが、両年ともに実際の数はもっと多いと考えられる。2007年に入ってから、少なくとも2人の未成年時犯罪者が処刑された。

アムネスティは、イランにおいて近年、数多くの不公正な裁判があったことを記録しており、9月5日に処刑された人びとの多くもまた、不公正な裁判を受けたのではないかと憂慮している。また、すべての死刑事件において例外も差別もなしに公正な裁判を受けることが保障されていないことを懸念している。

イランの法律では、正式に起訴される前の被告人には弁護士をつける権利がない。超法規的、即決あるいは恣意的処刑に関する国連特別報告者は、死刑が言い渡されるような事件の被告人はすべて、手続きのすべての段階で適切な弁護人に支援を受けなければならないと述べた。

イランにおいては、死刑相当犯罪は大変多く、その中には、「神に敵対する行為」「地上での堕落」などあいまいな文言のものがある。これらの罪はとりわけ、国家に対して武器を使用した人びと、強盗、政府にスパイ行為をはたらいたとされる人びとに適用される。こうした犯罪は神にそむくものと考えられるため、恩赦の対象とならない。この中には、既婚者による姦通、同性間の性行為も含まれている。一方、国家の安全保障をおびやかす犯罪などに関する法律では、裁判官が裁量によって死刑判決を言い渡す権限を持っている。

イランは、市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の締約国であるが、同規約第6条2項には、「死刑を廃止していない国においては、死刑は、最も重大な犯罪についてのみ科すことができる」とある。また、同規約の実施状況を審査する独立機関である国連自由権規約委員会は、「『最も重大な犯罪』という表現は、死刑は極めて例外的な手段であるという意味で厳密に解釈されねばならない」という意見を出している。さらに、死刑に直面する者の権利保護の確保のための保障規定(1984年、国連経済社会理事会で採択)の保障規定1では、「死刑を廃止していない国においては、死刑は最も重大な犯罪に対してのみ適用され、致死的な、あるいはその他の極めて重大な結果を伴う故意の犯罪の範囲を超えてはならない」と定められている。

シラーズで9月5日に行なわれた死刑のうち、少なくとも4人は公開処刑だった。国連自由権規約委員会は、「公開処刑は、人間の尊厳を損なう」と述べている。シラーズで処刑された人びとのうち少なくとも2人はイランの少数民族バルーチ族の人びとだった。イランで処刑される人びとに占めるバルーチ族の割合がかなり高いことをアムネスティは懸念している。

アムネスティは、イラン当局に対し、死刑の全面廃止への第一歩として、未成年時犯罪者の処刑を停止すること、死刑事件に関して必要なすべての保障規定を満たすこと、死刑の適用範囲を制限することを引き続き要請する。また、アムネスティはただちに死刑執行停止の措置をとるよう求めている。2007年10月に開かれる第62回国連総会では、世界規模での死刑の執行停止を求める決議に関する投票が行なわれる予定である。この決議は、死刑の廃止へのステップとして提出される。この決議に反し、深刻な人権侵害となるような死刑を用い続けることをやめるよう、アムネスティはイランに求める。

アムネスティはまたイランの人びとに対し、オンライン署名に参加して「死刑をやめる:世界の選択」と題するキャンペーンを支持するよう求める。このキャンペーンは世界死刑廃止連盟(WCADP)およびその他の非政府機関が主催している。

オンライン署名には以下から参加できます(英語)。
http://www.worldcoalition.org/modules/news/article.php?storyid=10&sel_lang=english 

AI Index: MDE 13/110/2007
2007年9月5日

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