チュニジア:死刑判決維持で、不正義は正されず

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2008年2月21日
国・地域:チュニジア
トピック:死刑廃止
「テロ」行為で有罪となった30人のうちの1人に言い渡された死刑判決が、チュニス控訴院で維持されたこと、また、被告人全員を再審にかけるよう命令が出されることもなく、公正な裁判を受ける権利の深刻な侵害についてなんらの対処もされなかったことにつき、アムネスティ・インターナショナルは遺憾の意を表明する。ただし一方で、1人については死刑判決が取り消され、終身刑とされた。

アムネスティを代表して裁判を傍聴した著名なフランスの弁護士ドゥニ・ロビラールは、「控訴審は最初から欠陥だらけだった。この事件の裁判を是正する機会があったのにそれをしなかった。被告人たちは非常に重大な罪で起訴されたにもかかわらず、原審も、今回の控訴審も、国際法の要求する基本的な保障に違反している」と述べた。

2月19日の朝に始まり真夜中も含め丸2日間にわたった長時間の審理を終え、本日朝、控訴院はイメド・ベン・アモルの死刑判決を取り消し、終身刑としたが、サベル・ラグビの死刑判決は維持した。2人は2007年12月、他の28人とともに、殺人、「テロ」組織所属その他の犯罪により有罪判決を受け、ともにチュニス第一審裁判所で死刑判決を言い渡された。他の28人は3年から終身刑までの拘禁刑を言い渡された。

ソリマン事件として知られるこの裁判は、2006年12月と2007年1月にソリマンの近くで勃発したチュニジアの治安部隊と武装集団「アサド・イブン・アルフラートの戦士たち」の武力衝突に関するものである。この衝突では治安部隊隊員2人を含む14人が死亡したが、武装集団の幹部もすべて死亡したと伝えられた。「アサド・イブン・アルフラートの戦士たち」は、アルジェリアでの「テロ」攻撃を行なったとされる武装集団であるイスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織に関連があるといわれている。

30人の被告人は2006年12月と2007年1月に逮捕され、2007年11月に初めてチュニス第一審裁判所に出廷した。裁判は、公正な裁判を受ける権利を深刻に侵害するものだった。とくに、被告人側の弁護人には裁判書類を吟味し弁護の準備をするための十分な時間が与えられず、裁判前拘禁中に拷問を受けて「自白」させられたという被告人らの申立てを裁判所は十分に調査しなかった。弁護人らは、拷問されたことを示す証拠があるかどうか医学的検査をしてほしいと何度も要請したが、裁判所は拒否した。ある時、弁護人らが抗議のために法廷を出た際には、全員が起訴事実を否認している被告人たちは、法廷内で治安職員に暴行を受けた。国際法では、拷問で得られた情報は裁判手続上認められないとされている。

アムネスティの中東・北アフリカ部長マルコム・スマート部長は述べた。「これは裁判とは呼べず、その事実認定も量刑判断も容認することはできない。チュニジア当局はこのような司法の誤りを今こそ是正し、本当の正義がなされるために、今回の事件を再審にかけるよう命令を出すべきである。」

「今回の死刑判決は、もしこれが執行されたなら、サベル・ラグビの生きる権利の侵害となる」。

アムネスティ発表国際ニュース
2008年2月21日
 

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