日本:死刑執行抗議声明

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2008年9月11日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
死刑執行に抗議します。

本日、3人の死刑確定者に対して死刑が執行された。執行されたのは、大阪拘置所の萬谷義幸さん、山本峰照さん、東京拘置所の平野勇さんである。

従来と同様に今回の執行についても、本人や家族を含め誰にも事前の予告はなく、突然の執行となった。今回の執行でも、執行後に昨年12月の執行以来5回目となる死刑囚の氏名及び罪状の公開が行われた。しかしそれ以外の情報は一切公開されていない。死刑確定のプロセスや、確定後の再審請求、恩赦請求の棄却時期などの死刑囚の基本的人権の尊重において極めて重要な情報が開示されていない。

今回の執行は前回の執行から3カ月弱で行われたものであり、法務大臣が交代しても日本は年間4~6回の執行を維持する姿勢を鮮明にした。また今回の執行は市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の日本国政府審査を翌月に控えているにも関わらず行われたものであり、国際社会の死刑廃止の潮流に対し敵対するものである。死刑廃止をはじめとする人権の尊重は、すでにほとんどの国が認める公益である。東アジアを見ても、韓国では10年間、台湾では2年半の間死刑執行は行われておらず、中国でも近年執行数は激減している。さらに米国でも死刑執行は抑制傾向にある。日本が死刑執行を促進していることは、国際社会には異様な状態にあると映っている。アムネスティ・インターナショナルは極めて深い失望と重大な懸念を表明する。

今回執行された平野勇さんは2006年9月1日に死刑判決が確定し、2年あまりで執行された。山本峰照さんは2006年4月4日に死刑判決が確定し、2年半弱で執行された。また、山本さんは一審判決の後に自身で控訴を取り下げ、確定した。山本さんの一審では「期日間整理手続き」が適用されたが、裁判員制度導入を見据えて始められた同手続き適用後、初めての死刑判決である。初公判からわずか2カ月、4回目の公判で判決が言い渡された。

アムネスティは犯罪を処罰してはならないと主張するものではない。犯罪に相応の刑を科すことは必要である。しかしその方法が生きる権利を否定するものであっては、基本的人権の尊重を旨とする法秩序とは相容れない。現代の社会は、そうした法秩序の理解の下に存在しているのである。死刑という刑罰は、現代社会にとって、到底受け入れがたい。

いかなる人も政府も人を殺す権利はない。これまで死刑が他の刑罰に較べ特別に犯罪抑止効果を持っていることは証明されていない。米国のニュージャージー州においても昨年12月に犯罪抑止効果が特別に存在しないことを根拠の1つに挙げ、死刑を法律上廃止したという例もある。日本政府には、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務があることを再度認識することを求める。

国際社会ではすでに国連加盟国の70%以上にあたる137カ国が法律上又は事実上、死刑廃止を達成している。昨年12月には全国連加盟国の死刑廃止を念頭に置いた死刑執行停止を求める決議が採択された。本年10月には、自由権規約に関する第5回政府報告書が自由権規約委員会によって審査される。死刑をめぐる日本政府のこうした態度は、極めて厳しい追及を受けることになるであろう。

日本政府が、一刻も早く人権の原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、近い将来に全面的に廃止することを、アムネスティは強く期待するものである。

2008年9月11日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

* 2008年9月11日発表時点で、山本峰照さんの死刑判決確定日に以下のような誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

誤:2006年3月20日に死刑判決が確定
正:2006年4月4日に死刑判決が確定