米国:連邦裁判所判事、グアンタナモのウイグル人被拘禁者釈放を命令、 しかし政府が控訴

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2008年10月 8日
国・地域:米国
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
2008年10月7日、連邦裁判所判事は画期的な判決を下し、キューバのグアンタナモ湾にある米海軍基地にいまだに拘禁されているウイグル人被拘禁者17人を米国内で釈放するよう命じた。

ウイグル人社会はイスラム教徒が多数を占め、中国北西部、新疆ウイグル自治区における多数民族である。事例として、アムネスティの緊急行動「米国:グアンタナモに拘禁されたウイグル人たち/強制送還・拷問・処刑の恐れ/2003年12月4日 (http://www.amnesty.org/en/library/info/AMR51/147/2003/en )を参照されたい。米政府は、17人が「敵性戦闘員」ではないと認めたものの、起訴も裁判もないまま無期限に収容することを正当化するため、このレッテルをほぼ7年に渡って主張し続けていた。

ワシントンD.C.コロンビア特別地区連邦地方裁判所のリカルド・ウルビナ判事は、被拘禁者17人を10月10日午前10時に法廷に連行するよう命じた。そこで彼らはグアンタナモ外での生活に慣れるための支援を申し出た地元のウイグル人コミュニティ、宗教団体、難民定住支援団体などの協力を得て、釈放されることになるだろう。ウルビナ判事はまた、彼らの釈放条件を決定する審問を10月16日に設定し、審問に出席するよう国土安全保障省関係者に命じた。

2002年1月に拘禁プログラムが始まって以来、500人以上の被拘禁者がグアンタナモから釈放されたが、このうち裁判所命令によって釈放された例はなく、すべて行政による決定だった。米国市民権を持っていることが判明し、2002年4月にグアンタナモからサウスカロライナの軍用拘禁施設に移送されたヤセル・ハムディを除けば、グアンタナモの被拘禁者で米国本土内に移送された者はいない。

審問後、米司法省は、ワシントンD.C.特別区上訴裁判所の結果が出るまで、ウルビナ判事の命令を執行停止にするよう求める緊急申立を行ったと発表した。本件はさらに米連邦最高裁判所に持ち込まれる可能性がある。

政府はウルビナ判事に対して、どのくらい時間がかかろうとも、受入れ国を見つけるまで17人をグアンタナモに留め置くことを認めるよう主張していた。中国で拷問や処刑を受けることが予測されるため、彼らを送還することはできない。米政府は「大変な外交努力」にもかかわらず17人を受け入れる国は見つかっていないと語った。米国はウイグル人被拘禁者を中国に送還せず、「すべての候補となる国ぐに」で「定住地を探す努力をしている」とコリン・パウエル前国務長官が発言してから、今や4年以上経つ。

判決後に出された司法省の声明のなかで、同省は、「米国は、もはや彼らウイグル人被拘禁者を米国の『敵性戦闘員』として扱わずにグアンタナモから釈放し、彼らを受け入れる適切な第三国へ移送する道を模索している。しかし政府は、これら外国籍者を当局の拘禁施設から米国本土内へ釈放することが適当だとは考えていない」と述べた。

米政府は、「外国人の入国承認手続きは政府の政治部門が排他的に保有する、本質的に独立した機能である」ことを理由に、米国内での釈放を命じた判決に異議を唱えた。政府は、行政府による「秩序ある方法で、戦時中の拘禁を終わらせるための必要な権限」によって、もはや「敵性戦闘員」とみなされない者を拘禁し続ける正当性を主張した。ウルビナ判事はこの主張を棄却し、政府が彼らを拘禁する権限が何であれ、「停止している」と述べた。

政府による控訴は、いかなる制限をも受けない行政権を追求していることを端的に示す最新の事例である。こうした行政権は「テロとの戦い」に基づく行為であることを特徴とし、恣意的拘禁や拷問といった組織的人権侵害を招く。

政府はウルビナ判事の命令に従い、控訴を取り下げ、ウイグル人被拘禁者を米国本土内に移送し、合法的で公正、安全かつ長期的な解決をめざして取り組むべきである。

17人のほとんどは、中国から避難した先のウイグル人キャンプが米軍により爆撃されたため、アフガニスタンからパキスタンに逃れ、そこで2001年後半に拘束された。彼らは多額の報奨金目当てのパキスタン軍によって米軍に売られたと言われている。グアンタナモに移送されたのは2002年だ。

アムネスティ発表国際ニュース
(2008年10月8日)
 

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