日本:死刑の執行に抗議する

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2009年1月29日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
死刑執行抗議声明

アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、東京拘置所の西本正二郎さん、名古屋拘置所の川村幸也さん、佐藤哲也さん、福岡拘置所の牧野正さんの4人の死刑確定者に対して死刑が執行されたことに強い憤りを覚える。

法律上、事実上の廃止を合わせると世界の70%以上の国が死刑を廃止している。2007年に死刑執行を行った国は24カ国である。東アジアを見ると、韓国では10年間、台湾では約3年間死刑執行は行われていない。そして、中国でも近年執行数が激減している。G8諸国で日本のほかに唯一死刑を執行している米国でも死刑執行は抑制傾向にある。さらに死刑の適用に積極的であるとされるイスラム諸国も近年、死刑の適用について慎重になりつつある。死刑の適用を増やしているのは日本のみである。

国際的な死刑廃止の流れを受け、12月18日には国連総会において2年連続となる死刑執行の一時停止を求める決議が採択された。国連総会で世界死刑執行停止決議が採択される前、2008年10月21日に米国ニューヨークで、アムネスティが開催したシンポジウムでは日本から熊本典道元裁判官がパネリストとして参加し、発言した。熊本さんは無実の死刑囚といわれる袴田巌さんの第一審を担当した裁判官の一人であったが、裁判所の自白偏重の姿勢や、警察による無理な捜査による自白の強要など、日本の刑事司法の持つ問題点について発言した。

また、10月30日に国連自由権規約委員会が第五回日本政府報告書審査に対して出した最終見解でも、先進国とされる日本が未だに代用監獄制度や、捜査段階の自白強要に頼る態度に対しては、「より近代的、科学的証拠によるべきである」と勧告されている。勧告はまた、「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実に死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしない日本の態度を非難している。

本日執行されたうち、牧野正さんは2008年6月より執行の対象となることが危惧されていたため、アムネスティは緊急行動(UA)の対象としていた。当局に対しても世界中から執行停止などを求める要望が寄せられていた。さらに牧野さんには精神障害が認められており、それが刑事訴訟法で執行停止義務が規定されている心神喪失にあたらないという証明が一切なされないまま執行が強行された。牧野さんは一審判決後に控訴を取り下げたため、再審査を経ないまま死刑が確定した。

西本正二郎さんは死刑判決確定から2年あまりでの執行だった。西本さんは控訴審の途中で自ら控訴を取り下げており、再審査を受けないまま死刑判決が確定した。自由権規約委員会は、死刑判決の義務的な再審査の導入を求めている。

日本政府は、人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務を負っていることを再確認するべきである。日本政府が、一刻も早く人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、近い将来に全面的に廃止することを、アムネスティは心から期待する。

2009年1月29日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

*1:シンポジウムの記録「死刑に関する判事と検事の証言」は下記から閲覧可能
https://www.amnesty.or.jp/uploads/mydownloads/ny_testimonies_dp_kari.pdf