イラク:性的指向を理由にした殺害に重大な懸念

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. イラク:性的指向を理由にした殺害に重大な懸念
2009年4月 9日
国・地域:イラク
トピック:性的指向と性自認
アムネスティ・インターナショナルは、イラクのヌーリ・アル・マリキ首相への書簡で、性的指向のみを理由に若い男性が相次いで殺害されたという報告に関して重大な懸念を表明し、加害責任者を裁判にかけ、イラクのゲイ・コミュニティへの効果的な保護を行うよう、イラク政府による緊急かつ協調的な行動を要請した。

バグダッドではこの数週間で、少なくとも25人の少年と男性が、ゲイであること、またはゲイであると思われることを理由に、殺害されたと報じられている。シーア派民兵だけでなく、被害者の属する部族や家族の成員によって殺害が行われたと言われる。特定の宗教指導者たち、特にサドル・シティ近郊の宗教指導者たちが、この数週間に、信奉者らに対して、イラク社会から同性愛を根絶するための行動を取るよう呼びかけたとも伝えられている。その呼びかけは明確ではなかったかも知れないが、少なくとも黙示的に実際のゲイ・コミュニティの成員への暴力を煽動しているようにみえる。2009年4月日および3日、ゲイ男性3人の遺体がサドル・シティで発見されたという報道があった。そのうち2遺体には「性的倒錯者(変態)」と書かれた紙片が貼り付けられていたと言われており、被害者が性的アイデンティティを理由に殺害されたことを示唆している。

アムネスティ・インターナショナルは、イラク首相に対する書簡の中で、イラク政府が公式にこの殺害を非難しないこと、殺害に関する迅速かつ効果的な調査実施を確約していないこと、加害者を裁判にかけていないことに対し懸念を表明した。この書簡はまた、ある警察幹部の発言に着目している。この発言は、バグダッドのゲイ・コミュニティの成員たちを標的にすることを容認またはそそのかすことさえしているようにみえ、国内法および国際人権基準に甚だしく違反している。

アムネスティ・インターナショナルはイラク政府に対して、これはイラクが批准し法的拘束力を受けている国際条約を含む、国際人権法の基本原則であると指摘した。この基本原則とは、「すべての人はその尊厳と権利において平等」であり、性的指向および性自認(ジェンダー・アイデンティティ)を含め、人種、性別、宗教、政治的またはその他の身分などによるいかなる差別も無く、世界人権宣言に規定されているすべての人権および自由を享受できるということである。

アムネスティ・インターナショナルは、マリキ首相に対して、身体的性別やジェンダー、民族その他のアイデンティティを理由とした、ゲイ・コミュニティの成員やその他の人びとへのすべての襲撃に関して、公式かつ率直に、最大限の強い表現で非難すること、また、こうした人権侵害に責任がある人びとを確実に特定し、裁きを受けさせるための取り組みを含めて、この状況に対処する迅速かつ具体的な策を講じるよう要請した。 さらに、このような攻撃をそそのかし、見逃し、あるいは黙認した警察官ならびに他の当局関係者は、説明責任を果たすために身柄を束され、訴追もしくは懲戒処分を受け、罷免されなければならない。

アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: MDE 14/010/2009
2009年4月9日
 

関連ニュースリリース