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ナイジェリア:シェル社の回答は期待はずれ

2009年7月20日
国・地域:ナイジェリア
トピック:企業の社会的責任
2009年6月30日にアムネスティ・インターナショナルが発表した報告書「ナイジャーデルタの石油、汚染と貧困」について、シェル社はメディアに対し何通もの声明文を電子メ-ルで送っている。アムネスティは、この機会に事実関係を明確にする。

シェル社は、アムネスティが「(シェルの)操業による汚染のうち、約85パーセントが攻撃と妨害工作によるものであることを忘れている」と述べた。

アムネスティはこの発言に異義を唱える。

妨害工作は、石油産業による汚染の1つの形態である原油の流出に関する問題にすぎない。アムネスティの報告書が指摘しているように、石油産業は過去半世紀にわたり、その他の多くの方法でナイジャーデルタ(ニジェールデルタ)において汚染を起こし、環境に悪影響を与えてきた。この中には、廃棄物の排出、入り江や河川の浚渫(しゅんせつ)、掘削廃棄物の投棄、地震の誘発や道路建設に伴う水系の分断も含まれる。妨害工作は、このような汚染や環境破壊の原因ではない。

腐食や設備故障と異なり、妨害工作による原油流出の割合は、ナイジャーデルタにおける原油流出の原因が、独立した評価や検証の対象になっていないために確定することができない。多くの場合シェル社は、原油流出の原因特定に非常に大きな影響力を持っている。監督官庁の人間が居合わせているときでも同じである。もし原油流出の原因が腐食もしくは設備故障にあると判明すれば、シェル社には賠償金を支払う義務がある。企業に対し流出の原因の特定に強力な権限を与えているこのやり方が、深刻で厄介な利害衝突を引き起こしているのである。アムネスティの報告書には、原油流出の原因は妨害工作にあるとシェル社が主張したものの、後にその主張が別の調査や法廷において疑問視されている事例が複数提示されている。

例をあげると、2002年のデルタ州バタンにおける大規模な原油流出の際、シェル社はデルタ州知事に対し、流出は妨害工作によるものだと手紙で伝えた。しかし、この手紙は原油流出の事故調査が行われる2日前に書かれたものだった。さらに、調査時に撮られたビデオ映像や現地のNGO(非政府組織)による追跡調査と、原因に関するシェル社の声明とは一致していない。独立した調査によると、原油流出の原因は設備故障にあることが判明している。ビデオ映像は、アムネスティのウェブサイトで視聴できる。

ナイジェリアでの裁判においても、妨害工作だとするシェルの主張に対し異議が唱えられている。例えば、1997年のシェル対イザヤ裁判において控訴院は、「妨害工作だという主張が後知恵であると確信した。弁護側の3人の証人が同意しているのは、古木が倒れてシェル社のパイプをへこませたという一点についてである。どうしてそれが、誰かがパイプを切断したという行為にすり変えられてしまったのか? そのうえ、パイプラインが金のこで切断されたことを証明する証拠など全く存在しないのである」と述べている。

1990年代半ばまでに起こった原油流出のほとんどが、インフラの問題によるものだったことは広く認められている。例えば、シェル(現地で操業している主要石油企業)による1989年から1994年までの原油流出のほとんどは、シェル自身が認めているように、腐食または操業上の問題が原因であった。流出量でいえば、妨害工作を原因としたのは、たった28パーセントであった。しかし、シェルの試算では、2007年にはそれが70パーセントまで上昇し、アムネスティの報告に対してシェルが回答した数字に至っては、(汚染の)85パーセントにまで増えている。アムネスティは、妨害工作や破壊行為が深刻な問題であると認識している。しかし、シェルはここ15年間で妨害工作を原因とする流出が3倍になったという自らの主張を裏付けるものを何ら提示していないのである。

シェル社は、アムネスティがこの複雑な状況を考慮しているとは考えていない。

アムネスティが発表した報告書では、ナイジャーデルタにおいて複雑な対立状態を生んでいる根本原因の一部に焦点が当てられている。この中には、半世紀に渡ってデルタ地域の人びとに影響を与えてきた汚染と環境破壊、その環境破壊や人権侵害に対する有効な説明責任と賠償の欠如、そして石油産業がもたらす影響に関する透明性および情報の欠如が含まれる。これらは、ナイジャーデルタにおける紛争や貧困を悪化させる重要な要素となってきた。

シェル社は、ナイジャーデルタにおける状況の複雑性について繰り返し言及しているが、これは複雑性を口実にした責任逃れにしか思えない。シェルは、原油流出をコミュニティと武装集団のせいにし、さらには流出した原油の浄化作業のために現場に近づくことができないのも彼らのせいだ、と非難している。しかし、これは全体像の一部にしかすぎない。シェル自身の欠陥のある企業活動もまた問題の根本的な原因なのである。アムネスティが大目に見ることができない行動をコミュニティが取り始めたのは、汚染の防止や浄化作業を実施しない、原油流出事故の調査に関し透明性を欠いている、賠償金を支払わないなどシェルの欠陥のある企業活動が何年にもわたって続いた後のことである。

例をあげると、2007年5月12日にオゴニランドのキラタイ地域において原油が流出した際、コミュニティはアムネスティに対し、シェルは腐食が原油流出の原因であると認めたものの適切な浄化作業や金銭賠償をしていないと述べた。アムネスティはその後、5人のシェル社代表者、監督官庁およびコミュニティの署名が入った調査報告書を入手した。これはコミュニティ側の説明を裏付けるものであったが、アムネスティの代表者がシェルにこの問題を訴えると、公式の調査報告書があるにもかかわらず、これは妨害工作が原因であるとの回答が返ってきた。その後アムネスティは、なぜシェル社が調査結果を変えたのかを裏付づける証拠を求めたが、いまだこの情報は得られていない。

アムネスティがキラタイのコミュニティを訪問した際、彼らはシェルが原油流出の原因を変えたことを全く知らず、その時点でまだ賠償を待っていた。シェルがナイジャーデルタの状況の複雑性に配慮する必要性を語るのであれば、シェルが取っているこのような行動こそが、コミュニティの不信感や怒りをつのらせ、結局は紛争に油を注いでいるのだという事実にしっかりと向き合わなければならない。

複雑性や他の関係者の行動を指摘することで、シェルは、自らの不完全な企業活動や怠慢から関心をそらそうとしているにすぎない。現実には、これがナイジャーデルタの問題を悪化させているのだ。

シェル社は、アムネスティ・インターナショナルの報告書には「新たな洞察」が含まれていないと述べている。

継続中の人権侵害には取り組まなければならない。シェルは、「新たな洞察」を求めることで、既存の証拠から注意をそらそうとしているようだ。そのような証拠には以下のようなものがある:

・シェル社は、汚染および人権侵害の予防のための適切な行動を起こさなかった。パイプラインの整備不良や廃棄物の垂れ流し等、シェル社は、長年に渡って環境や人びとに悪影響を与える企業活動をおこなってきた
・シェル社は、汚染された土地や水に対して、十分な浄化および修復作業を実施していない。
・シェル社の原油流出の共同調査に関するシステムは透明性を欠いており、被害者への賠償金が支払われていない。
・シェル社は情報を開示していない。アムネスティには一部の情報が開示されているが、ナイジャーデルタのコミュニティは、シェルが人びとの生活に与える影響に関する基本的な情報でさえも入手できないことが多い。
・シェル社は地域コミュニティとの関わりにおいてお粗末な行動を取ることで、紛争に油を注いでいる。

シェルは、これらの問題の多くを認識している。アムネスティの報告書では、ナイジェリア政府とシェルの双方に、これらの問題に対応するよういくつかの勧告を行っている。シェルは、ナイジャーデルタにおける事業をあらゆる意味で「浄化する」必要がある。

アムネスティは、ナイジャーデルタの環境汚染やその被害、および住民への影響に対する責任がシェルだけにあるとは考えていない。何十年にもわたる政府の重大な失策があったことも明らかである。さらに、上記およびアムネスティの最近の報告書にもある通り、今や、地域コミュニティや武装集団の行動も汚染問題に大きく関与している。

シェル社は将来に目を向けたいと述べている。

前進への道には、説明責任を果たすことや過去を償うことが伴う。過去の悪弊に対する説明責任の欠如は、事実上、免責されている。石油関連の汚染や環境破壊に対処しない限り、また、これらが対処されるまでは、ナイジャーデルタの人びとは将来に目を向けることができない。彼らは、シェルがこれまで行ってきた環境破壊と人権侵害の遺産ととともに生きていかなければならないのである。

シェル社は、アムネスティがナイジャーデルタの石油産業が直面している安全上の脅威を十分考慮に入れていないと考えている。

ナイジャーデルタの石油産業は、事実、重大な安全上の脅威に直面している。アムネスティの報告書では、ナイジャーデルタは世界でもっとも危険な原油生産地の一つである、と述べている。ここでは、武装集団やギャングによる、石油企業の従業員や子どもを含む彼らの親族の誘拐および石油関連施設に対する攻撃が増えている。これは、迅速かつ適切な対応が求められる深刻な問題なのである。

しかしながら、この複雑な環境下で不安定な治安に対応するためには、表面化した事象だけでなく、その問題の根本原因にも対処する多角的な取り組みが必要とされる。ナイジャーデルタの石油産業が直面する脅威に対応するため、ナイジェリア政府は武力を行使している。しかし、このことが結局ナイジェリアの治安部隊とナイジャーデルタで活動する武装集団双方による深刻な人権侵害を頻繁に引き起こす要因となっている。武力行使は、問題への対処とならずに、むしろ問題を悪化させているのだ。

ナイジャーデルタにおける治安の不安定さは、武器による暴力の問題というだけでなく、人権侵害、説明責任の欠如、透明性の欠如、汚職、そして政府の深刻な怠慢の問題でもある。ある意味、紛争や武器による暴力は、ナイジャーデルタにおける人権の悲劇の原因であり症状でもあるのである。

シェル社は、アムネスティが報告書の作成段階で同社と開かれた対話を行わなかったと述べている。

アムネスティは、シェル社と2回面会し、調査結果を提示するとともに同社に対するインタビューを行った。

・最初の面会は、2008年4月1日にナイジャーデルタのポートハーコートにおいて実施され、アムネスティの調査団は調査結果をシェル社に提示し質問をした。

・2回目の面会は、2008年9月15日にオランダのハーグにあるシェル社の本社にて行われた。アムネスティは、会議に先立って書面にて質問をシェル社に送付したが、同社はほとんどの質問に回答することを拒否した。

またアムネスティは、シェル社に対して意見を求めている全事例を含む報告書の該当項目の第一稿を同社に送付した。アムネスティは回答を受け取ったが、その回答は報告書にある本質的な問題には触れていなかった。アムネスティは、シェル社に再び回答を求めて報告書の第二稿を送った。しかし、報告書で取り上げた問題について何ら実質的な回答はなかった。アムネスティが受け取った関連性を持つ数少ない意見は、報告書に記載されている。

アムネスティは開かれた対話を行わなかっただけでなく、ポートハーコートに質問状を持って(シェルと)対決しに来た、というシェル社の発言は、不正確であるのみならず、アムネスティの役割についての根本的な誤解を表すものである。この報告書についてシェル社と交わした個別のやりとりでは、アムネスティがナイジャーデルタにおけるシェルの操業に関する具体的な質問に焦点を絞らない限り、同社は、こういった問題に関する一般的な会話ですませようとしているように見られた。アムネスティはここ何年もの間、ナイジャーデルタについて、また人権問題について、シェル社と多くの議論を重ねてきた。私たちの経験では、そのような議論は、ほとんどが企業が「関係」を維持するための方法であり、その一方で、企業は、自身の失策や欠陥のある企業活動を改めるための意義ある行動を取ることを回避しているのである。

シェル社は、アムネスティが、ナイジェリア経済、そしてナイジャーデルタの地域コミュニティの発展に対する自社の貢献を十分に認めていないと考えている。

アムネスティの報告書は、シェルが、ナイジェリアにおいて雇用の提供を含む、いくらかの積極的な貢献を行ったと認めている。しかしながら、人権においては、ある分野で前向きな行動を取ったことで、他の分野で犯した人権侵害の責任を免除することにはならない、ということをアムネスティはシェルに対して指摘してきた。人権侵害の「埋め合わせ」はできないのである。

一言で言えば、アムネスティ・インターナショナルが最近発表した報告書、「ナイジャーデルタの石油、汚染と貧困」に対するシェル社の回答は、期待はずれであった。同社は、ナイジャーデルタにおける複雑な問題をまるで自分たちが傍観者であるかのように話したがっているようであり、シェル社の操業そのものがこの複雑な問題の一要因であることを認めていないのである。

アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: AFR 44/025/2009
2009年7月20日

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