東ティモール:独立決めた住民投票から10年、正義なし

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2009年10月 8日
国・地域:東ティモール
トピック:国際人権法
国連安全保障理事会は、1999年に東ティモールで行われた独立の是非を問う住民投票の際、またこれに先立つ24年間に渡るインドネシアによる占領下で犯されたすべての深刻な人権侵害に対する裁判権を持つ国際刑事法廷を設置するべきである。アムネスティ・インターナショナルは、独立の是非を問う投票の10周年に合わせ8月26日に発表した報告書において、そのように述べた。

東ティモールが投票により独立を選択してから10年あまり経ったが、国民は免責が許される風潮に苦しめられ続けている。

6月に東ティモールで行なわれた調査を元に作成したアムネスティの報告書「正義への叫び:10年続く東ティモールの免責」では、インドネシアにおいても東ティモールにおいても、1975年から1999年に人権侵害を犯した当時の軍指揮官を含む加害者のほとんどが、いまだ信頼性があり独立かつ中立的な法廷によって裁かれていない状況が概説されている。

「国家や国際社会による正義のための取り組みにもかかわらず、東ティモールの人びとは、今も正義と賠償を否定され続けている。「1999年、インドネシア軍と反独立派武装民兵組織は、1000人以上のティモールの人びとを世界の目の前で殺害した。このような残虐行為に対しての十分な説明責任はいまだ果たされていない」と、アムネスティのアジア太平洋部副部長ドンナ・ゲストは述べた。

「東ティモールの被害者は、様々な場で幾度も証言を提供してきたが、期待を裏切られている。彼らは説明責任が果たされる決定的な兆候をいまだ見ていない」と、ドンナ・ゲストは述べた。

さほど重要ではない多くの加害者が有罪判決を受ける一方で、人道に対する罪の容疑者のほとんどは、まだインドネシアで逮捕されないままである。

東ティモールとインドネシアの両政府は、2005年に設立されたインドネシアと東ティモール合同の真実友好委員会など、加害者の起訴につながらない取り組みを主導することで、東ティモールにおける深刻な人権侵害の被害者に対する正義を回避しようとしてきた。

「両政府が辿った道は、両国における法の支配を弱体化させた」と、ドンナ・ゲストは述べた。「被害者が必要としているのは、すべての申し立てを調査し、1975年から1999年の間に深刻な人権侵害を犯した加害者に対し法の裁きを下す、というインドネシア、東ティモール両政府および国連からの明確な約束である」

かつて安保理は、1999年に起きた暴力行為の被害者に対する正義を積極的に支持してきたが、近年はティモールの人びとへの約束を実行に移すことができていない。アムネスティ・インターナショナルは安保理に対し、このような犯罪に対する免責を終らせるために、1975年から1999年の間にインドネシア占領下の東ティモールで犯された全犯罪について裁判権を持つ国際刑事法廷の設置を含む、長期的で包括的な計画を導入するよう求めている。

背景情報:
ティモールの人びとは、1999年8月30日の住民投票で圧倒的に独立を支持した。しかし、インドネシア軍の支援を受けた親インドネシア武装民兵組織の手による深刻な人道に対する罪やその他の人権侵害により台無しにされ、投票の準備期間中およびその直後に少なくとも1200人が死亡した。これらの犯罪には、ティモールの人びとに対する国際法違反の殺害、強制失踪、性的暴力、恣意的逮捕、威嚇や脅迫が含まれている。こうした人権侵害は、人権団体や専門機関によって詳細に記録されている。具体的には、2800ページに渡る受容真実和解委員会(CAVR)による報告書『Chega!』がある。

1999年以降に実施された正義のための取り組みの中には、インドネシア政府、および東ティモールの国連特別委員会によって設置された特別人権法廷がある。当初18人の被告が1999年に東ティモールで犯した罪により特別人権法廷において裁判にかけられたが、根本的な欠陥があると批判されている訴訟手続きによって、全員が無罪判決を受けた。東ティモールにおいて国連の特別委員会によって有罪判決を受けたのは、現在服役中の1人のみである。

* 報告書 「正義への叫び:10年続く東ティモールの免責(We Cry for Justice, Impunity persists 10 yearson in Timor--Leste)」は以下をご覧ください。http://www.amnesty.org/en/library/info/ASA57/001/2009/en (英文のみ)

アムネスティ発表国際ニュース
2009年8月26日

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