日本:ILO、日本軍性奴隷制のサバイバーのための正義の実現を追求せず

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2010年6月22日
国・地域:日本
トピック:国際人権法
国際労働機関(ILO)の今年度の国際労働総会は、ILO条約29号(強制労働条約)に違反した1932年~1945年にかけての日本軍性奴隷制度に対して、日本の責任を追及しないまま閉会した。

アムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し、明確に「慰安婦」に対する責任を認め、正義を実現するよう求めているサバイバーたちの声に、世界中の使用者および労働組合が加わるよう要請する。「慰安婦」制度のサバイバーは高齢となり、多くが亡くなっている。もはや時間的余裕はない。

およそ20万人の女性たちが 1932年から第二次世界大戦末までに旧日本軍によって性的な奴隷とされた。これらの女性たちの多くはいまや80代から90代である。彼女たちは、正義を要求すると共に、彼女たちを強制労働させ、身体的かつ性的な虐待を行った責任を認めるよう日本に求めている。

この重要な問題を国際労働会議で取り上げるように、労働組合側はこれまで繰り返しアピールしてきているが、日本の強制労働条約違反がこれまで議題になることはなかった。悲しいことに、今年も例外ではなかった。

今会議の中で、国際労働組合総連合および労働者の代表は日本政府の代表団と会い、「慰安婦」問題を解決するように求めた。労働者側のスポークスパーソンはまた、この問題を来年の本会議の議題にいれるように求めた。

日本は1932年に強制労働条約を批准しており、1932年から1945年にかけて犯した軍性奴隷制について全面的に責任がある。しかしながら、日本政府はこの違法行為について繰り返し否定している。この日本側の否定に対して、ILOの条約勧告適用専門家委員会(CEACR)は1996年に次のように結論づけている。「申し立てはいわゆる軍の『慰安所』に閉じこめられた女性たちへの重大な人権侵害と性的暴行にあたる。これは条約の定めた禁止事項に入る」。この見解は専門家委員会のその後の報告書においても繰り返し述べられている。

サバイバーたちは、婉曲的に「慰安婦」として知られているが、奴隷化の結果として身体的にも精神的に健康を損ない、孤立や恥の意識、そして多くの場合、極度の貧困に苦しんでいる。女性たちは奴隷にされ、何カ月あるいは数年にもわたって繰り返し強かんや拷問、虐待を受けてきたことが、証言やその他の証拠からも明らかになっている。彼女たちは自分の意思で辞めることも、奉仕内容や期間を選ぶこともできなかった。

日本軍は、年齢、貧困、階級、家族の社会的地位、教育、国籍、人種などの理由から、より騙しやすく、性奴隷制の罠に陥りやすい女性や少女たちを餌食にした。一カ所に閉じこめられた女性もいれば、戦場の最前線やその近くに連れていかれ、繰り返し強かんされただけではなく、戦場の危険にさらされた女性たちもいる。

アムネスティは、日本政府が正義を否定し、その実現を妨げる行為を行うことは、これらの女性たちに対して犯した人権侵害をさらに悪化させるだけであると考える。

背景

今年の国際労働総会は6月2日から18日にかけてジュネーブで開催された。会議の参加者は、ILO加盟国の政府、使用者、労働者のそれぞれの代表団で構成される。総会期間中、個々の国の特定のケースが選ばれ、検討を行う基準適用総会委員会(CAS)の審査のためのアジェンダに再検討を加え、議題として追加するよう決められる。

2007年以来、米国、カナダ、オランダ、韓国、台湾、そして欧州連合27カ国を代表する欧州議会はすべて、日本政府に対して、これらの女性たちに犯した罪の責任を認め、謝罪をするように求める決議を採択している。2010年3月現在、日本の21の市議会が中央政府に対して「慰安婦」問題の解決を求める意見書を可決している。

国連の拷問禁止委員会、自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会などの国際的な人権条約機関による一貫した断固たる結論と勧告にもかかわらず、また、2010年5月に来日し、鳩山前首相と面談した国連人権高等弁務官による勧告にもかかわらず、日本政府は「慰安婦」制度に対する責任を否定するという立場を変えることを拒んでいる。

アムネスティは、苦しみの中にあるサバイバーたちに日本政府が直ちに償いを行うよう要請する。特に以下のことを行うよう要求する。

・苦しんでいるサバイバーたちの被害を公に認め、彼女たちの尊厳を回復できる方法で、「慰安婦」制度に対する責任を完全に受け入れること
・女性たちに犯した罪に対して、明確にかつ全面的に謝罪すること
・サバイバーと彼女たちの近親者に対して、政府から直接、十分かつ有効な賠償を行うこと
・日本の教科書の第二次大戦に関する部分に性奴隷制についての正確な記述を盛り込むこと

アムネスティ発表国際ニュース
2010年6月18日