インド:ボパールにおける1984年のユニオン・カーバイド社が引き起こした災害に対して初めて下された有罪判決はあまりにも軽すぎるものであり、また遅きに失したものである

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2010年7月 1日
国・地域:インド
トピック:
1984年のユニオン・カーバイド社のガス漏出事故に関して7名のインド人に対する有罪判決が下されたことを踏まえ、アムネスティ・インターナショナルは、インドおよび米国政府に対し、次の段階として米国に本拠を置くユニオン・カーバイド社(UCC)に裁判を受けさせるよう要請する。

かつて、インド法人であるユニオン・カーバイド・インディア社(UCIL)に勤務していた7名のインド人に対し、ボパール裁判所は最高刑でも懲役2年の業務上過失致死の有罪判決を下した。

「これは歴史的な判決ではあるが、あまりにも軽微で、遅きに失した刑罰である。刑事裁判の判決に至るまでの25年は、災害の生存者や遺族にとっては受け入れがたい長さの期間であった」とアムネスティのグローバル・イシュー担当ディレクター、オードリー・ゴーグランは述べた。

災害から25年以上経った今でも、事故現場の汚染除去は行われておらず、漏出およびその影響についても適切な調査がなされていない。必要な医療処置も受けられず、10万人以上の人びとが健康障害に苦しみ続けている。生存者は、自分たちが受けた被害に対する公正な補償および十分な救済措置が与えられるのをいまだに待ちつづけている。

米国に本拠を置くUCCおよびUCILの社元会長であるウォーレン・アンダーソンは1987年に訴追された。しかし、UCCおよびアンダーソン氏は裁判に出廷するのを拒否した。

「インド人の従業員は訴追され、有罪判決を受けた。しかしその一方で、外国の被告人は海外に留まるだけで司法から逃れることができる。このようなことは絶対に受け入れられない」とオードリー・ゴーグランは述べた。

米国に本拠を置くUCCは、2001年以降ダウ・ケミカル社(ダウ)の完全子会社となった。生存者や人権団体はダウに対し、有害化学廃棄物による水の汚染を含む、いまだに続いている災害の影響に対処するよう求める運動を展開している。しかしダウ社は一貫してこれらの要求を無視しており、ボパールにおけるUCCの法的責任に対して、一切の責任をも認めていない。

「大抵の場合、企業の複雑な組織構造や、複数の裁判管轄にまたがり企業活動が行われているという事実が、企業の責任を追及する上で大きな障害となっている。本件においては、インド人の被告に対する有罪判決のみでは不十分であることは明らかだ。インドおよび米国の両政府は、UCCを含む外国の被告も同様に裁判を受けさせるようにしなければならない」オードリー・ゴーグランはそう語った。

事故発生当時、大規模なガスの漏出で7000人から10000人が直接の事故で死亡し、またその後20年間でさらに15000人の命が失われた。事故の影響で、10万人以上の人がいまだに深刻な健康障害に苦しんでいる。

ボパールにおける訴追は、時宜を得たものでも効果的なものでもない。逮捕から訴追までの数十年の間に、ガスに起因する病気で数千人が亡くなった。

インド政府は、刑事訴追を数年にわたり引き延ばすことを許し、被害者および被告人双方の刑事責任を迅速かつ不当に遅らせないよう決定する権利を否定することにより、国際的な義務を果たしてこなかった。

これまで、ウォーレン・アンダーソンの身柄引き渡しに関するすべての努力は失敗に終わってきた。UCCはインドの裁判管轄権を認めておらず、ボパール刑事裁判所への度重なる出廷要請にも従っていない。結果として、アンダーソンおよびUCCに対する刑事訴追が不可能になってきた。

背景
1984年12月2日、インド中央部のボパールにあるUCCの殺虫剤工場から数千ポンドの猛毒化学物質が漏出し、約50万人の人がガスにさらされた。7000人から10000人が事故発生直後に亡くなり、その後20年にわたり更に1万5千人もの命が失われた。

悲劇のわずか数時間後には、9名の個人と3社の法人が訴追された。これには、8名のUCILもしくはボパール工場で働いていたインド人および米国人で当時のUCC会長であったウォーレン・アンダーソンも含まれる。訴追を受けた法人は、インドに本拠を置くUCIL、その親会社で米国に本拠を置くUCC及び米国籍でありながら香港に本拠を置くUCCの完全子会社であるUCEであった。逮捕は速やかに行われたものの、罪状が明らかにされたのは1987年であった。

2005年には、ボパール裁判所はダウ社に対して訴訟に参加するように召喚状を出し、100%子会社で出廷を忌避しているUCCを裁判所に出廷させない理由を説明するように求めた。ダウのインド子会社であるダウ・ケミカル・インディア社は召喚状の延期を求めることに成功した。

アムネスティのボパール災害に関する活動は、貧困に追いやり、貧困を悪化させるような人権侵害の終結を求めるアムネスティの国際キャンペーン「人間らしく生きたい」(Demand Dignity campaign:尊厳を求めて)の一環です。このキャンペーンは、世界中の人びとを動員して、政府、企業、その他の権力に対して、貧困下で生きる人びとの声に耳を傾け、そのような人びとの権利を認め、保護するように求めるものです。詳しくは、「人間らしく生きたい」ウェブサイトをご覧ください。

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