フィリピン:大虐殺から1年経てもなお、正義はいまだ実現されていない

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2010年12月17日
国・地域:フィリピン
トピック:
11月22日、アムネスティ・インターナショナルはフィリピン政府に対して、マギンダナオ州でおきた虐殺事件に関する裁判の早急な進展を確約すること、および殺戮から1年経過した今も活動を続けている私兵組織を廃止することを求めた。

2009年11月23日、少なくとも57名が誘拐され、残虐な方法で殺害された。遺体はフィリピン南部のマギンダナオ州アムパトゥアン上流にある丘陵地の大きな穴に投棄されていた。犠牲者のうち32名はジャーナリストであった。

アムネスティのアジア・太平洋部長サム・ザリフィは「フィリピン政府がこの事件をどのように取り扱うかによって、アキノ大統領がどのくらい真剣に私兵組織を取り締まり人権侵害を防ごうとしているか、が明らかになるでしょう」と述べた。

「フィリピン政府はジャーナリストに対する世界で最悪の襲撃となったこの虐殺に関して、政府が公正に、かつ断固として対処する能力と意志があることを示さなければなりません。」

殺害された人びとは、地方選挙の立候補者の届出に立ち会うために選挙監視団として巡回していた際に、100名ほどの武装した男たちによって包囲された。この待ち伏せは、襲撃者たちの勢力とアムパトゥアンの有力者一族との長年にわたる政治的な反目に根ざすものであった。

地元の有力なアムパトゥアン一族の主要メンバーたちは、この殺戮に関わったとして告発された。しかし裁判には遅れが目立ち、すべての起訴手続きには至っていない。

前マギンダナオ州知事アンダル・アムパトゥアン・シニア、彼の息子のアンダル・アムパトゥアン・ジュニアとザルディ・アムパトゥアンは殺戮の容疑で裁判にかけられている。報道によると、殺戮に関わったとされる200名近くのうち、82名が拘留されているが、民兵組織、有力者一族、警察および政府軍などに所属する114名はいまだ逮捕されていない。

マギンダナオ事件の裁判では、遅延と司法的論争が目につく。今月初め、法務大臣レイラ・デ・リマは、この裁判が速やかに進行するよう努めるが、結審するまでにはさらに6年を要するだろうと述べた。

この虐殺から1年が経過した今も、前大統領グロリア・アロヨが2006年に署名して発効した大統領令546号に基づき、複数の私兵組織が依然として活動している。大統領令546号は、私兵組織と民間ボランティア組織(CVO)をフィリピン国家警察の「強化部隊」として代行利用するもので、事実上私兵を公認するものである。

アンダル・アムパトゥアン前知事の私兵の多くは、政府が設立し武器を与えたCVOに所属している。私兵として使われている武装組織を政府が公認する制度は、そのままに温存されている。

「アキノ大統領が、私兵が引き起こす暴力事件を真剣に終わらせようとするつもりならば、ただちに大統領令546号を廃止するべきです。マギンダナオの虐殺から1年経過した今も私兵が引き続き活動しているという事実は、犠牲者に対する侮辱であり、さらなる惨事を招くことになるでしょう」とサム・ザリフィは述べた。

アムネスティ発表国際ニュース
2010年11月22日

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