イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:国連決議は、ガザ紛争犠牲者のための国際的な司法解決につながらなければならない

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2011年3月30日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
ガザとイスラエル南部での2008年から2009年にかけての紛争についての25日の国連人権理事会の決議は、いくつかの点で欠陥はあるものの、もし国連総会が断固たる行動をすれば、犠牲者のための国際的な司法解決の重要な機会を生み出すことになる。

この決議は、国連安全保障理事会に対し事態を国際刑事裁判所(ICC)検察官に付託するよう要請することで、2008年から2009年に起きたガザ紛争で起きた戦争犯罪や人道に対する罪の可能性がある行為が処罰されないままであることに対処するよう国連総会に促している。アムネスティ・インターナショナルは国連総会に対し、できるだけ速やかに国際的な司法解決に向けて前進するよう求める。

ガザとイスラエル南部での22日間の紛争のパレスチナとイスラエルの犠牲者たちは2年余りも司法解決を待ち続けており、国内の当局にそれができず、あるいはするつもりもないことが示されている。アムネスティは不正義と免責のサイクルを終わらせるための国際的な司法解決を要請しつづけている。国連総会は今、とくにICCへの付託など意義ある行動を促進するような形で、問題を安保理の議題にすることを保障しなければならない。

本日の決議はパレスチナ自治政府によって起草され、投票の結果、賛成27、反対3、棄権16で人権理事会によって採択された。2011年3月18日に人権理事会に提出されていた、紛争中の違反行為についての国内調査を監視するために設立された独立専門家委員会の第2回報告を受けて、この投票が行われた。ガザ紛争についての国連の事実調査団が両紛争当事者による国際法上の犯罪を文書化してから18カ月余りとなるが、その報告はアムネスティによる評価と一致していた。つまり、イスラエル当局と事実上の統治者であるハマスは独立性、中立性、綿密性、有効性、迅速性という必要な国際基準を満たした調査を行っていないということである。

リチャード・ゴールドストーン判事に率いられた国連事実調査団の2009年9月の報告書は、イスラエル軍とパレスチナ武装グループ共に紛争中、戦争犯罪と人道に対する罪の可能性のある行為をしたと結論している。報告書は、もし当局が6カ月以内に国際基準を満たした信頼できる独立した調査をできないならば安全保障理事会が問題をICCに付託すべきであると勧告している。人権理事会によって採択された25日の決議は、国連総会に対し2011年9月に始まる第66会期において国連事実調査団の報告書を再審議し、その報告を未だに報告書を審議していない安保理に付託するよう勧告している。

国連総会はすでに、2009年11月と2010年2月の2度の決議によって、国連事実調査団が文書化した国連人道法、国際人権法の重大な違反行為に関して、信頼できる独立した調査を行なうよう国内当局に要請してきた。これらの要請は明らかに無視されており、国連総会は遅滞なくこの問題を安保理に提出しなければならない。本日の人権理事会決議では、独立専門家委員会の2つの報告を国連総会に付託していないが、国連総会もこの2つの報告を安保理に提出し、議題となるよう保障すべきである。

一方、2009年1月にパレスチナ自治政府が出した宣言に基づいて紛争中に起きた犯罪の調査を開始するかどうか、ICC検察官は引き続き予審部判事の決定を求めなければならないと、アムネスティは明記する。パレスチナ自治政府はこの宣言で、「2002年7月1日以降にパレスチナ地域で起きた」犯罪についてICCの管轄権を受け入れている。パレスチナ自治政府がローマ規程の下でそのような宣言ができる「国家」か否かについては、法律の専門家にも議論がある。もし判事たちがこの宣言に基づいてICCは行動できると決定するならば、ICCが調査を開始するのに安保理による付託は必要となくなるだろう。アムネスティはできるだけ早くこの決定を求めるよう、ICCの検察官に促しつづけていく。

国内当局がパレスチナ人とイスラエル人犠牲者双方に対する正義を拒否していることを示す圧倒的な証拠を眼の前にして、アムネスティ・インターナショナルはすべての国家に対し、普遍的管轄権を行使することで紛争中に起きた国際法上の犯罪を捜査・訴追するよう引き続き要請する。

2010年9月の15会期において意義ある行動を取れなかった人権理事会に対し、犠牲者たちのための国際的な司法解決を支援するよう同理事会に求める署名を、2011年1月以来、アムネスティは世界中の会員・支援者から集めた。その数は、10万9000通近くになった。

背景情報

「キャスト・レッド(鋳込まれた鉛)」作戦は2009年1月18日に終結したガザ地区に対するイスラエルの22日間の軍事攻撃で、大多数は民間人である1400名のパレスチナ人が殺され、ガザ地区は広範囲に破壊された。また3名の民間人を含む13名のイスラエル人が紛争中に殺された。双方ともに国際人道法に違反したのである。イスラエル軍は精密な武器を使用して民間人を殺害し、正当な軍事目標と民間人を区別しない無差別攻撃を行い、民間人の財産とインフラ、国連施設、医療施設と職員を攻撃した。ハマスの軍事部門と他のパレスチナ武装グループは、イスラエル南部に向けてロケット弾と迫撃砲弾を無差別に発射した。

パレスチナ自治政府によって起草され提出された25日の人権理事会決議は、紛争中にパレスチナ武装グループが行った違反行為について、またはハマス当局が適切な調査をしなかったことについて直接の言及はない。また、独立専門家委員会の2つの報告を国連総会に付託することもしていない。アムネスティはこの2つの点で決議案を批判した※1。米国、英国、スロバキアは決議に反対し、EU加盟国は他の多くの国々と同様に棄権した。

※1
http://livewire.amnesty.org/2011/03/21/un-body-can-help-bring-international-justice-for-gaza-conflict-victims/#more-3189

▼2009年9月のガザ紛争についての国連事実調査団の報告書は下記から入手できる(英文)。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/specialsession/9/FactFindingMission.htm

▼イスラエルとパレスチナの調査へのアムネスティの最新評価は以下から入手できる(英文)。
http://www.amnesty.org/en/library/info/MDE15/018/2011/en

▼独立専門家委員会の報告書は以下から入手できる(英文)。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/15session/A.HRC.15.50_en.pdf
および
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/16session/A.HRC.16.24_AUV.pdf

アムネスティ発表国際ニュース
2011年3月25日