『アムネスティ・レポート2011』発表

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2011年5月13日
[国際事務局発表ニュース]
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中東および北アフリカ全土で拡大している自由と正義を求める声やソーシャルメディアの台頭は、人権の変革に向けた前例のない機会をもたらしている。しかし、この変革は極めて不安定な状態にある。創立50周年を前に、世界的な人権報告書を発表したアムネスティ・インターナショナルは、このように述べた。

「アムネスティが抑圧された人びとをロウソクの灯りで照らし始めてから50年が経ちますが、人権の変革は現在、歴史的な変化を迎えようとしています」とアムネスティのサリル・シェティ事務総長は述べた。

「人びとは恐れていません。若い世代に率いられた勇気ある人びとは立ち上がり、銃弾、殴打、催涙ガス、戦車を目の前にしながら声を上げています。言論の自由と平和的な抗議デモに対する政府の弾圧を出し抜き暴露することを可能にした新しい技術とあいまって、この勇気は、抑圧の時代が終わる日は近いというシグナルを政府に送っています」

「しかし、抑圧的な政府も激しい反撃を繰りかえしています。国際社会はこの変革の機会をとらえ、2011年を真の人権の夜明けにしなくてはなりません」

ソーシャルメディア・ネットワークが新しい行動に息を吹きこみ、政府が情報の統制に苦戦するなか、情報へのアクセス、通信手段、ネットワーク技術をめぐる重大な戦いが始まっている。

チュニジアやエジプトで見られたように、インターネットへのアクセスを遮断したり、携帯電話のネットワークを切断する政府の試みは、裏目に出ることがある。しかし政府は、主導権を取り戻すため、または活動家に対抗してこれらの技術を駆使するため、奔走している。

人びとが抑圧と腐敗した政治の終焉を要求するなか、中東および北アフリカ全土に拡大している反政府抗議デモは、恐怖からの解放を求める強い願いに光をあて、声なき人びとに声を与えたのである。

チュニジアおよびエジプトでは、独裁者を退陣させることに成功し、世界の視線を釘づけにした。現在、アゼルバイジャンからジンバブエにいたる各地で、政府に対する不満の声が聞こえてくる。

圧制に立ち向かう新たな決意があり、人権を求める闘いが新たなデジタルの領域にまで広がったにもかかわらず、他の権利を求めるためにも不可欠な表現の自由の権利は、世界中で危機にさらされている。

リビア、シリア、バーレーン、イエメンの政府は権力に固執し、平和的な抗議デモ参加者を殴り、重傷を負わせ、または殺害することをいとわない意志を見せている。独裁者が失脚した国でさえ、独裁を支えてきた政府機関を解体する必要があり、活動家の仕事は終わりには程遠い。アゼルバイジャン、中国、およびイランのような抑圧的な政府は、自国で同じような革命が起こることを事前に防ごうとしている。

『アムネスティ・レポート 2011』は、少なくとも89カ国で表現の自由が制限されていることを報告している。また、少なくとも48カ国における良心の囚人の事例と、少なくとも98カ国の拷問や虐待の事実、そして少なくとも54カ国で不公正な裁判があったことを報告している。

2010年の象徴的な出来事としては、ビルマ(ミャンマー)でアウンサンスーチーが解放されたことや、中国政府の妨害があったにもかかわらず中国人の体制批判者である劉暁波にノーベル平和賞が授与されたことなどが挙げられる。

国際的に注目された出来事から目を離すと、アフガニスタン、アンゴラ、ブラジル、中国、メキシコ、ロシア、タイ、トルコ、ウズベキスタン、ベトナム、ジンバブエなどの国々で、数千人の人権活動家らが脅迫され、刑務所に送られ、拷問を受け、そして殺害された。

このような活動家は、貧困、コミュニティ全体の周縁化、女性の権利、汚職、残虐行為と弾圧を含めた人権問題に声を上げていた。すべての地域における出来事は、人権活動家の重要な役割と、彼らと世界の連帯の必要性を浮き彫りにした。

アムネスティの年次報告書は、以下の点にも焦点あてている。

・悪化する国の状況:ウクライナ、ベラルーシ、キルギスなどは、活動家たちにとって暗い見通しを示している。ナイジェリアでは暴力が激化しており、中央および北東インドでは毛沢東主義者の武装反乱による危機が悪化している

・地域的な傾向:南北アメリカ地域では先住民族に対する脅迫が増えている。ヨーロッパでは、ベールで顔全体を覆うことを選んだ女性の法的状況が悪化している。またヨーロッパ諸国では、迫害の危険がある国に人びとを送還する傾向が高まっている

・中央アフリカ共和国、チャド、コロンビア、コンゴ民主共和国、イラク、イスラエル及び被占領パレスチナ地域、ロシアの北コーカサス、スリランカ、スーダン、ソマリアでは、紛争が混乱をもたらし、市民が武装集団と政府軍の標的となっている

・進展の兆し:死刑の廃止が着実に進んだ。インドネシアおよびシエラレオネでは妊産婦の保健医療が改善され、中南米では、過去の軍事政権下で起きた犯罪の責任を問われた者が裁かれた

自由と正義を求める人びとの燃えるような願いを過小評価してきた大国の政府は、抑圧する側を支持するのではなく、いまこそ改革派を支援すべきであると、サリル・シェティ事務総長は述べた。これら大国の政府が真価を問われるのは、人権を促進する国家への再建を支援するかどうかであり、リビアの場合も同じだが、他の司法機関で解決できない場合には,最悪の人権侵害の加害者を国際刑事裁判所に付託するという決意を見せるかどうかである。

国連安全保障理事会による、人道に対する罪には一切妥協しないという一貫した政策の必要性は、3月以降数百人の死者を出しているシリア政府の残虐な弾圧、およびイエメンやバーレーンにおける平和的な抗議デモの弾圧に対して結束した行動がなされなかったことから明白である。

中東や北アフリカの政府は、急速に変化している人権環境の中で改革を進める勇気を持つべきである。政府は、平和的な表現や結社の権利を遵守すべきであり、とくに、女性の完全な社会参加への障害を取り除くことで、すべての人びとの平等を保証すべきである。秘密警察や治安部隊は制限されるべきである。残虐行為と殺害をやめ、人権侵害の責任を完全に明確にすれば、長い間曖昧にされてきた正義と賠償を、犠牲者は得ることができる。

インターネットのアクセスや携帯電話の通信、ソーシャルネットワークサイト、またデジタル・メディアと通信技術を提供する企業は、人権を尊重する必要がある。企業は、表現の自由を抑制し、人びとを密かに監視することを望んでいる抑圧的な政府の手先や共犯者になるべきではない。

「冷戦が終わって以来、これほど多くの抑圧的な政府が、権威を阻もうとする挑戦に直面したことはありません。中東および北アフリカ全土に拡大している政治的・経済的権利の要求は、すべての権利が同等に重要であり、国境を越えた普遍的な要求であることを劇的に証明しているのです」とサリル・シェティは述べた。

「平和的な意見を主張したために拘束された人たちの権利を守るためにアムネスティが誕生してから50年が経ちます。その間に人権の革命がありました。正義、自由、尊厳を求める声は、世界的規模となり、日増しに強力になっています。変革はすでに始まっており、抑圧的な勢力はそれを元に戻すことはできないのです」


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アムネスティ発表国際ニュース
2011年5月13日