シリア:人道に対する罪が明らかに

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. シリア:人道に対する罪が明らかに
2011年7月13日
国・地域:シリア
トピック:変革を求める中東・北アフリカ
シリアの治安部隊が、西部の町タッル・カラフにおける破壊作戦で用いている残虐なやり方は、人道に対する罪に値する可能性がある。アムネスティ・インターナショナルは7月6日、新たに発表した報告書の中でこのように述べた。

最新の報告書「シリアにおける弾圧:タッル・カラフの恐怖(Crackdown in Syria:Terror in Tell Kalakh)」は、シリア軍および治安部隊が大がかりな治安掃討作戦を開始した5月に行われた拘禁、拷問、恣意的な拘束の最中に、複数の死者が出たことを記録するものである。この掃討作戦は、レバノンの国境近くの町の住民に対して、1週間足らずの間続けられた。

「私たちが聞いたタッル・カラフでの目撃証言は、反体制派を弾圧するために標的を絞った虐待が組織的に行なわれている、という深く憂慮すべき実態を裏付けています」とアムネスティの中東・北アフリカプログラム副部長フィリップ・ルーサーは語った。.

「報告に記述されているほとんどの犯罪は、国際刑事裁判所(ICC)の管轄権内となるでしょう。しかしまず、国連安全保障理事会がシリアの事態をICCの検察官に付託しなければなりません」

この報告書は、5〜6月にレバノン国内および電話で、50人以上に対して行われたインタビューに基づいた調査結果である。アムネスティはシリアへの入国を許可されていない。

■治安部隊による掃討作戦の概要

この作戦は、政権の失脚を求めるデモを受け、軍と治安部隊がタッル・カラフに進入した5月14日に開始された。

少なくとも作戦初日に、24歳のアリ・アルバーシャが狙撃され、死亡したとみられている。彼の遺体を運んでいた救急車も砲火を浴びた。多くの人が逃げようとする中、シリア軍は逃げまとう家族に対して発砲した。

その後の数日間で、60歳以上の男性や18歳以下の少年などを含む、数十人の男性の住民が取り押さえられ、拘禁された。アムネスティがレバノンで面会したタッル・カラフ出身の家族は、それぞれ親族が国軍に拘禁されていると語った。

拘禁された人びとのほとんどは拷問を受けている。目撃者によれば、逮捕時に拷問を受けた者もいた。あるときには、拘禁者を移送しようとした兵士が拘禁者の首の後ろに火のついた煙草を押し当て、逮捕者の人数を数えていたという。

人びとを拘禁する治安部隊の一部は、「幽霊」と名づけられた拷問をしている、と拘禁者はアムネスティに述べた。これは、拘禁者に長時間無理な姿勢を取らせ、虐待を行なうものである。この場合、拘禁者は爪先立ちをせざるを得ない地面からの高さにある棒に手首を縛られる。

20歳のマフムードは、5月16日に逮捕され、約1ヵ月間の拘禁の後に釈放された。ホムスの治安部隊の拘禁施設に約5日間拘禁されたマフムードは、次のように述べた。「毎日同じことの繰り返しでした。彼らは私を縛って幽霊の姿勢にし、私の体と睾丸に電気を流したのです。私は絶叫し、尋問者に止めてくれと懇願しました。しかし彼は気にも留めませんでした」

目撃者によると、少なくとも9人がタッル・カラフにおける治安掃討作戦の際に逮捕され、その後の拘禁中に死亡した。彼らのうち8人は、彼らは家から出るよう命令された際に銃撃され、負傷し、その後兵士に連れ去られた。
この中にはデモに参加していた者も含まれていた。

それから約2週間後、この8人の親族は、8人の遺体の身元確認のために軍の病院に行くように言われた。目撃者によると、遺体には胸の傷や太ももについた縦方向の長い傷など、拷問を示す跡があった。脚の裏側には銃で撃たれたと思われる傷もあった。

法医学者は、犠牲者の一人であるAbd al-Rahman Abu Libdehの写真をアムネスティのために分析した結果、まだ生きている間に顔、肩そして首にひどい傷を受けたようだと結論付けた。

息子たちの遺体を確認した家族の中には、「息子たちは武装勢力に殺害された」と書かれた文書に、強制的に署名させられた者もいた。

アムネスティは、タッル・カラフにおける治安掃討作戦の際に逮捕された17歳の少年を含む多くの人びとが、いまだ拘禁されているという事実を把握している。

アムネスティはシリア当局に対して、子どもを含む恣意的に拘束された人びとおよび、平和的なデモに参加した、あるいは反政府的な考えを表明しために拘禁された人びと全員を釈放するよう要求した。

タッル・カラフでの犯罪が、市民に対する大規模かつ組織的な攻撃の一部であるとみられることから、これらは人道に対する罪に値するとアムネスティは考えている。

アムネスティは国連安全保障理事会に対し、シリアの事態をICCの検察官に付託するよう繰り返し要求した。またシリア当局に対しては、現在シリアの人道状況を調査している国連査察官のスムーズな立ち入りを許可するよう求めた。

「人道の名の下に、国際社会がリビアに対して積極的に行動を起こしたことは、国際社会のシリアに対するダブルスタンダードを浮き彫りにしています」とフィリップ・ルーサーは述べた。

「バッシャール・アサド大統領は改革を口にしているにもかかわらず、これまでのところシリア当局は、国際基準に即した措置にすら応じる形跡がほとんどありません」

アムネスティ発表国際ニュース
2011年7月6日

関連ニュースリリース