日本:袴田事件―早期の「再審の実現」を要請

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2012年4月16日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
本日、袴田事件の第二次再審請求の審理におけるDNA鑑定の結果から、袴田巖氏のDNAと、犯行時に着ていたとされる衣服の血痕のDNAとが一致しないことが明らかになった。アムネスティ・インターナショナル日本は、静岡地方検察庁に対し、新たな証拠にもとづく再審開始の手続きを、即時抗告などによって妨げないよう強く求める。

今回、DNA鑑定の結果が出された衣服は、1968年に袴田氏に対する死刑判決の有罪認定を基礎づけた証拠である。そして、鑑定結果は、この証拠に証拠能力及び証明力がないことを明らかにするものである。そうすると、この鑑定結果は、袴田氏の無罪を基礎づける新規の証拠であるといえ、再審請求の理由が認められる。よって、司法は、刑事訴訟法435条及び448条にもとづき、直ちに再審開始を決定すべきである。

また、「再審開始の決定」がなされた場合、静岡地方検察庁は、即時抗告などで再審開始手続きを妨げてはならない。日本では、死刑確定事件で再審が開始され無罪が言い渡されたのは、1980年代の4つの事件に留まり、それ以降は現在に至るまで、1件もなされていない。この背景には、検察が原判決の有罪判断の維持に固執することによって、再審の実現を難しくしている事情がある。しかしながら、当初から袴田事件は、その取調べ過程における不公正な手続きが問題となってきた。検察庁は、袴田事件における究極的な不正義に真摯に向き合い、今こそ司法の正義を実現すべきである。

袴田巖氏は、逮捕時から数えて実に45年以上も拘禁され、現在76歳の高齢である。また、袴田氏の精神の健康状態が懸念されていることは、日弁連による2011年1月27日付「東京拘置所死刑確定者心神喪失に関する人権救済申立事件(勧告)」にも明らかである。袴田氏の年齢、健康状態を勘案すれば、審理を長期化させる猶予は残されていないのである。検察庁には、DNA鑑定の明白性と、袴田氏の置かれた客観的な状況に鑑みて、自由権規約14条3項(c)、憲法37条1項及び刑事訴訟法1条の「迅速な裁判」の要請にもとづき、再審の早期実現に協力すべき法的、道義的責任があることは明らかである。アムネスティは、再審開始の手続きを即時抗告などによって妨げないよう、検察庁に改めて強く求めるものである。

アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は生きる権利の侵害であり、究極的に残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として、袴田巖氏を含めた全ての死刑囚について、公式に死刑の執行停止措置を導入するよう要請する。アムネスティは、袴田氏の事件について、世界的な規模で支援の取り組みを続けている。

2012年4月16日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本