米国:「実験」も失敗し、ゆるやかに終焉に向かう死刑

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2012年5月17日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:米国
トピック:死刑廃止

今週、コネティカット州が死刑制度を廃止した17番目の州となったことで、1976年に米国最高裁判所が、改正された死刑法のもとでの死刑執行再開を許可したことから始まった米国の死刑に関する「実験」は、その終焉に向けて更なる一歩を進めた。

州知事は4月25日、死刑廃止法案に署名し、これを法制化した。

コネティカット州は、この5年間で4番目に死刑廃止を法制化した州である。さらに昨年11月には、オレゴン州知事が死刑執行を一時的に停止し、議会に死刑を再検討するよう求めている。またカリフォルニア州務長官は4月下旬、2012年11月の選挙でカリフォルニア州の死刑廃止の賛否を住民投票で問う予定であると発表した。カリフォルニア州の死刑囚は米国全体の5分の1を占めることから、もし廃止が承認された場合、過去40年間で米国の死刑体制における最大の減少になるだろう。

1997年より10年間にわたり米国の死刑執行数の5%を占めていたノースカロライナ州では、2006年から死刑が執行されていない。この司法命令による死刑の停止は、致死薬注射にかかわる訴訟との絡みで生じたものだった一方、2012年4月20日には州判事がノースカロライナ人種平等法に基づき、「死刑を争う裁判での陪審員選出に組織的な人種差別があった」という理由から、死刑判決をくつがえす画期的な判決を下したが、同州の死刑廃止論に大きな影響は及ぼさなかった。この法律に基づいて中断されている裁判は、150件を超える。

だが、その裏で、米国での死刑執行は速度を落とさずに進められており、この残酷な刑罰を廃止した世界の主流派に米国が加わる以前に、すべきことが山積みだということを思い知らされる。今年に入ってすでに17人に死刑が執行され、1976年からの死刑執行数の合計は、年内にはテキサス州、オクラホマ州およびバージニア州の3州だけでも700人にのぼる可能性がある。さらに国家レベルでは、10年近く連邦政府による死刑は行われていないものの、米国政権は連邦裁判所における通常の国内事案の死刑判決に加え、グアンタナモ湾(キューバ)の米海軍基地の軍法委員会における初の死刑裁判を進めようとしている。

軍法委員会は公平性の国際基準を満たさないため、このような裁判で死刑を課するのは、国際法違反となるであろう。

コネティカット州は、連邦政府に加え、1976年に死刑という司法の殺人を再開した15の州の一つであった。上訴を放棄した「志願者」と呼ばれる囚人の死刑執行も含まれる。この「志願者」現象は1976年以降の死刑執行の10%以上を占め、2012年4月20日に再びデラウェア州で「志願者」への致死薬注射による処刑が行われた。

アムネスティ・インターナショナルは、新たな報告書を発表し、その中で以下の点を取り上げている。

・コネティカット州の死刑廃止を歓迎する。(一方、この廃止は過去の事件に遡って適用されず、死刑囚11人はそのままであることに注意をうながす)

・5カ月前にオレゴン州知事が、上訴放棄した囚人の死刑執行をやめさせ、同州での死刑執行を一時停止させた。これらの決定と比べながら、デラウェア州の死刑執行を振り返る

・オハイオ州の致死薬注射手続き訴訟に関わっていた連邦判事が、過去に実施した同州の死刑に対する判事自身の明らかな懸念に反して死刑中止を拒否した後、半年ぶりのオハイオ州での死刑執行を振り返る

・ノースカロライナ人種平等法に基づく州裁判所の裁決を検証する

・死刑廃止の取り組みに関する米国政府当局の怠慢に注意を喚起する
 
※詳細は2012年4月27日付ショートレポート「USA: Another brick from the wall」 を参照。

アムネスティ・インターナショナル声明
2012年4月27日

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