ハイチ:震災からすでに3年。住宅事情は壊滅的

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2013年1月18日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ハイチ
トピック:

震災によって退去を余儀なくされた人びとの状況は、以前惨憺たるものだ。(c)AI
震災によって退去を余儀なくされた人びとの状況は、以前惨憺たるものだ。(c)AI

震災から3年も経過したが、ハイチの住宅状況は極めて悲惨である。いまだに数十万人の人びとが、劣悪な避難所で生活している。アムネスティは、政府当局と国際社会に、住宅の復興を最優先とするよう要請した。

2010年1月12日の地震により、20万人以上が死亡し、約230万が住居を失った。

現在、推定35万人以上が、全国の496ヵ所のキャンプで生活している。

アムネスティ・ハイチ支部が得た証言によると、仮設キャンプの生活状況は悪化している。給水、衛生設備、廃棄物処理が甚だしく不足しており、その結果、コレラなどの感染症が蔓延している。女性や少女は、性的暴力や強かんの危険にさらされている。

また、不安定な治安、病気やハリケーンだけでは不十分であるかのように、仮設キャンプにいる多くの人びとは、いつ強制退去させられるかわからないという恐怖の中で生活している。

地震以来、数万人がキャンプから追い出された。国際移住機関の報告によれば、さらに約8万人が主に私有地にあるキャンプで生活しており、いつ退去させられるのかという不安を抱いている。これは全キャンプに住む人びとの21パーセントに相当する。

強制的に退去させられた人びと

2011年12月21日、マリー(仮名)と子どもは、数十の家族とともに、ジェレミー広場から暴力的かつ強制的に退去させられた。

「キャンプ委員会は、われわれにキャンプを去るよう圧力をかけてきました。『フットボール大会のために場所が必要だ』と。しかし、私たちは行くところがなく、ここに留まりました。委員会は折にふれてチラシを撒いて脅しをかけたり、夜にはテントに石やビンを投げたりしてきました」

「ある日の朝3時ごろ、連中がやってきて、剃刀やナイフで避難所を破壊し始めました。私は追い出され、住居は引き倒されました。私は何も持ち出せず、着のみ着のままでその場を離れました」

潰えつつある復興への希望

地震の以前から住宅は大変不足していた。しかし、数十万人の人びとにとって現在の状況は、悲惨なものだ。

2012年4月、ハイチ当局は住居に関する国家計画案を公表した。その計画は住宅建設を優先すると述べているが、貧困の中に暮らしている人びとに対する、適切で取得可能な住居の提供条件を示していない。また、強制退去の防止についても触れていない。

国際的な支援のもとに、2011年8月に当局は50の避難民キャンプの人びとを、16の地域へ移送する計画を発表した(名称:プロジェクト16/6)。この計画により家族は、12カ月当たり500USドルの家賃補助を受け、キャンプを出て、よりよい住居への移動を求められる。移動の費用として25ドルが支払われる。家族は自分で住居を見つけ家主と契約を結ばなければならない。

この計画により助かる家族があるかもしれない。しかしながら、補助金は小額で、住居探しの支援はなく、長期にわたる支援ではない。

多くの人びとが、「補助金が終わった後は家賃を支払うことができないのでどこに住めばいいのかわからない」との懸念を抱いている。現在は、必要不可欠な衣服や医療、教育などへの出費はいうまでもなく、家族を食べさせていくことに必死だ。

政府および国際社会は、迅速な行動を

政府の住宅に関する現行の方針は、人びとに安全な住居を提供することではなく、公共地に人びとを住まわせないことに重点を置いているようだ。アムネスティが望むのは、適切な住居を得る権利を現実のものとする政策の実施だ。

2011年始めに人道的支援が減少し財源が不足したために、仮設キャンプの生活状況が悪化した。一部の支援者による限られた資金が、住宅計画に充てられているにすぎない。

2010年の地震発生の際、世界はハイチを助けるために迅速に行動しなかった。3年後の今、復興への希望は実現していない。というのも、ハイチの人びとの権利が優先的に考えられていないようだからだ。政府当局の行動および、国際社会の真の支援が必要なのだ。

参考:ハイチ地震の統計資料

・地震の災害
死者 20万人
住居損失 230万人
家屋全壊 10万5000、甚大な家屋損壊 208,164

・国内避難民
357,785人(90,415世帯)が496のキャンプで居住、52%は女性(2012年10月現在)。

・強制退去
60,978人が地震後152のキャンプから退去させられ、78,175人が退去を迫られている。国内避難民の21%がキャンプで居住。

・地震以前の状態
都市人口の67%がスラム地区に居住していたが、彼らが地震によって最も損害を受けた

・南北アメリカ大陸で最も不平等な国家
総世帯の56%が1日1ドル以下で生活しており、77%が2ドル以下。10%の富裕な世帯がハイチ全収入の68%を占めている。

出典:国際移住機関、人道支援調整事務所、国連開発計画およびハイチ災害実体評価

アムネスティ国際ニュース
2013年1月11日