モロッコ/西サハラ:不当な刑法で身の危険にさらされる女性たち

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2013年3月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:モロッコ/西サハラ
トピック:女性の権利

2008年国際女性デーでデモをする活動家たち © www.resistingwomen.net/Ali Fkir
2008年国際女性デーでデモをする活動家たち © www.resistingwomen.net/Ali Fkir

2012年3月、モロッコ人少女アミーナ・フィラリさん(16歳)は、自分を強かんした相手との結婚を強要されたため、殺鼠剤を飲み自殺した。

フィラリさんのような悲劇は、モロッコでは珍しいケースではない。刑法第475条によれば「強かん犯罪者は被害者と結婚するとその罪を免れる」と されているからだ。しかし、今回の悲劇的な死はモロッコ社会に大きな衝撃を与え、今年1月にはこの常軌を逸した条項の改正を強く訴える動きが起 こった。

アムネスティなどの人権団体はこれに賛同する一方、女性や少女たちを暴力や差別から守るには、第475条以外のいくつかの条項も改定する必要があると訴えた。

「体面」を汚す犯罪

人権団体が異議を申し立てている条項の一つに、第486条がある。
「体面」を汚す犯罪の項にある第486条は、強かんを「女性の合意がない性的関係」と定義しており、禁錮5年から10年に処すとしている。

強かんの被害女性が障がいをもっている場合や、18歳未満もしくは妊婦であった場合、禁錮10年から20年が科される。

被害を受けた女性が既婚者か否か、また、処女であるかどうかによっても刑罰の重さが変わる。第488条は、処女喪失につながる強かんと強制わいせ つ罪には、さらに厳しい刑罰を科すとしている。

強かんの場合、禁錮10年から20年が言い渡されるが、被害者が処女ではない場合、刑期は5年から10年となる。

人権活動家は、性別や犯行時の状況、身体的暴力の有無を考慮すべきではないとし、強かんの定義を変えるべきだと訴えている。

夫婦間の強かんも、特定の犯罪として捉えるべきである。

強かんが「体面」を汚す犯罪として扱われていることは、被害者の心と身体に対する暴力というよりも、モラルや婚姻関係に重きを置いていることを意味する。

第475条の改正案は、処女かそうではないかの区別を残している。これは、被害女性に対する差別であり、その品位をおとしめるものと、アムネスティは懸念している。

女性の自立の視点がない

その他の条項も、虐待の被害を受けた女性の保護に向けた改正が必要である。

例えば第496項は、服従すべき相手の命令から逃れようとする既婚女性をかくまった場合、禁錮1年から5年と罰金が科される。

このような条項があるため、家庭内暴力から逃れた女性を保護すると、その行為が刑罰の対象となる。潜在的なケースまでも重視されている。

第490項では、婚姻関係にない者同士が同意の上で性的関係を持った場合、禁錮1カ月から1年に処される。

婚姻関係に関係なく、同意の上での成人の性関係を犯罪とみなすことは、プライバシーを守る権利と表現の自由を侵す。さらにこの条項は、強かん被害者が告訴する上での障害となる。婚外の性的関係によって罰せられる可能性があるからだ。

■女性を守るには不十分な新憲法

モロッコは2011年7月、男女平等を保障する新憲法を採択した。しかしアムネスティは、女性や少女らを暴力や差別から守る上で、その条項は十分ではないと考えている。

女性の権利を保護する上で重要なのは、モロッコの法律が国際人権基準に合致しているかどうかである。単なる法律の改正だけでは不十分だ。女性が男 性と同等の権利を得ることができない社会では、法律だけでなく、社会に根差した考え方が女性差別に結びついている。

警察や司法当局は、女性や少女らが受けた暴力の申し立てに対してどのような点に配慮して対応すべきか、また、被害者のいわゆる名誉やモラルではなく、彼女たちの身をどう守るべきか。警察や司法当局の教育を抜本的な施策に入れるべきである。

アムネスティ国際ニュース
2013年3月1日

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