朝鮮民主主義人民共和国:衛星画像が示す収容所と居住地とのあいまいな境界

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2013年3月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:朝鮮民主主義人民共和国
トピック:

~国連は人権侵害の調査委員会を設置すべきである~

最近の衛星画像で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府は、政治囚収容所とその周囲の居住地との境界をあいまいにしていることがわかった。アムネスティ・インターナショナルは、人道に対する罪など同国での重大で組織的な人権侵害を独自に調査する委員会の設置を国連加盟国に繰り返し要求してきた。

アムネスティ米国支部は、平安南道のケチョンにある第14収容所の隣接地に、新たに政治囚収容所、いわゆる管理所を建設している可能性があるという情報を入手した。そこで、その地域の衛星画像の分析を画像分析会社デジタルグローブに依頼した。

分析の結果、2006年から2013年2月の間、同国は平壌から北北東70㎞にあるチョマボン渓谷周辺20㎞の地帯に、住民、検問所、多数の監視塔らしき建物の存在が明らかになった。また、拡大する採掘事業に対応するためらしい労働者用住居のような建物が建設中であることもわかった。

この動きは、第14収容所に隣接した地域住民の移動の管理を強化していることを示す。このようにして、地域住民と政治囚収容所の人びととの区別をあいまいにしているのである。周辺の住民には、現在の状況および峡谷と住民に対する国の今後の施策に対して不安が持ち上がっている。

アムネスティは、収容所の新設や拡張は予測していた。今回分かったことは、ある意味でもっと気がかりである。第14収容所の本来の境界らしき線の外側に、検問所と監視塔を設けることは、政治囚収容所の人びとと近隣の一般市民とを混在させてしまう。
政治囚収容所には、子どもを含め何十万の人びとが拘束されている。そこで彼らは、労働を強要され、懲罰として食料を奪われ、拷問など残酷で非人間的な扱いを受けるなどの人権侵害を受けている。多くの被収容者は、何ら罪を犯しておらず、政権に対してよく思っていない人びとと関わっただけである。

第14収容所周辺の警備と管理の強化は、移動の自由を日常的に抑圧・制限している同国では、不思議なことではない。最新の画像は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の下で続く重大で組織的な人権侵害を調査するために、しっかりした独自の調査委員会の設置が、いかに必要かということを示している。

アムネスティは、同国に対して、人権監視員が第14収容所とチョマボン渓谷に自由に立ち入りができるようにすること、またヨドク第15収容所やケチョン第14収容所の存在を公式に認めるよう要求している。

2011年、アムネスティは、5万人の男女や子どもたちが収容されているという悪評高いヨドク政治囚収容所がさらに拡張されていることを示す衛星画像の分析を発表した。ヨドクの元被収容者によると、囚人たちは奴隷のような状況で労働を強いられ、しばしば拷問や虐待を受けている。この動かしがたい証言にもかかわらず、政府は収容所の存在を否定し続けている。

アムネスティは、国連人権理事会の第22会期の参加国に対して、国連が「特異な国」とする同国における劣悪な環境と人権状況全般を、政治囚収容所だけでなくそれ以外の面でも、独自に調査する委員会の設置決議を採択するよう再度要請する。

アムネスティ国際ニュース
2013年3月7日