パプアニューギニア:独立以来の死刑執行が近づく

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2013年6月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:パプアニューギニア
トピック:死刑廃止

「魔術行為」の女性らが惨殺され、新死刑法が成立した。(C) Vlad Sokhin
「魔術行為」の女性らが惨殺され、新死刑法が成立した。(C) Vlad Sokhin

死刑の適用をより多くの犯罪に拡大し、死刑再開を示唆するパプアニューギニアの新法は、恐るべき後退である。
 

この法は十分な議論もないまま国会で採択された模様だ。一方では同じ議会で、「魔術行為を阻止」しようとして犯す暴力犯罪を擁護する魔術法の廃止が決まった。

新法により、「魔術行為」に関連する殺人事件、強かんや強盗などさらに多くの犯罪に死刑が適用されるとみられる。条文には、致死注射、絞首刑、電気処刑、銃殺隊による射殺、「酸素遮断による医療的な死」といった新しい処刑方法も定めている。

パプアニューギニアは、魔術法の廃止によって女性の保護には一歩前進したが、死刑の執行に歩を進めたことは、大きな後退である。

長いあいだ懸案だった魔術法の廃止は、同法のもとで行われてきた女性への暴力に対する国内外からの怒りの声に応えたものである。しかし、一つの暴力の形態を終わらせ、死刑とういう国家的暴力を進めようとするのは、何ともそら恐ろしいことである。

「魔術行為」をしたとされる複数の女性が惨殺され、大きく報道された事件をうけて、政府は新しい死刑法を成立させた。

パプアニューギニアにはすでに死刑法があったが、1954年に独立国となって以来、死刑は執行されてこなかった。極刑の犯罪抑止効果に説得力のある根拠がないにもかかわらず、政府はこの5月に犯罪抑止策の一環として死刑の再開を発表した。

個人による殺人も国による処刑も、生命を奪うという行為は著しい人権侵害である。政府は、囚人を殺すという行為を再開してはならないという市民社会の声に耳を貸していない。

パプアニューギニアの多くの宗教グループや女性組織、また政界の重鎮たちも、政府の死刑再開の動きには公に反対を表明している。

女性への暴力と「魔術行為」に関わる暴力をなくし、とりわけ死刑に頼らない解決を求めて、数千人が声をあげ、嘆願書に署名し、5月14日と15日に政府関係者に届けられた。

全世界の3分の2以上の国ぐにが、法律上あるいは事実上死刑を廃止している。1982年のトンガでの執行を最後に、太平洋地域※では死刑は行われていない。ナウル、パプアニューギニアとトンガでは死刑は事実上廃止でされているが、フィジーでは軍事的な犯罪についてのみ死刑制度を保持している。他の太平洋地域の国すべては、いかなる犯罪についても死刑を適用していない。

パプアニューギニアでは、現在少なくとも10人が死刑囚監房にいる。

今日、多くの国が次々と死刑制度から遠ざかっている。一つには、死刑の犯罪抑止効果に何の確証もないという理由がある。死刑法を成立させたことによりパプアニューギニアは、歴史の敗者側に回ったことを知るだろう。

アムネスティは、死刑は人権の否定の極みととらえ、犯罪の性質、犯罪者の特徴、執行の手法にかかわらず、あらゆる死刑に反対する。

※太平洋地域:オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ領土を除く太平洋諸島の国ぐに

アムネスティ国際ニュース
2013年5月31日