東南アジア海上でいまだに数千人が危機にさらされている

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2015年5月23日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民

インドネシア、マレーシア、タイが難民や移民が乗った船を追い返すという方針を転換したことは、一つの前進ではある。しかし今もなお危険にさらされている数千人の命を救い、問題の本質に対処する方策としてはまったく不十分である。

今回の方針は、海岸にたどり着いた船に乗っている人びとには朗報である。しかし今もなお海上で漂流し、食料も飲み水も底を尽きかけている数千人や、引き続きやってくる人たちには何の役にもたたない。インドネシア、タイ、マレーシアは、人命救助のため海洋捜索と救助作業を行う国連海洋法条約の締結国としての義務を果さなければならない。

インドネシアとマレーシアは共同声明で、今もなお海上にいる人に対し7,000人までは、一時的な避難場所を提供すると発表した。船上のほとんどがビルマ(ミャンマー)から迫害を逃れてきたロヒンギャの人たちと思われ、バングラデシュ人もいる。避難所は1年間に限り提供され、国際社会が本国送還や第三国での再定住を支援するという条件つきである。

一時的な避難所は、保護がまったくないよりはましである。とはいえ、避難所だけでは、まったく不十分であり、国際的な保護体制を弱体化させる恐れがある。庇護を求める人たちが、安全に尊厳を持って難民としての地位決定手続きを受けられるようすべきだ。庇護や移住を希望する者を、不正入国者だとして犯罪者扱いし、その生命や人権が危険にさらされる国へ送還してはならない。

5月20日、インドネシア、マレーシア、タイ3国の外務大臣がこの問題について緊急会合を開いた。声明はそれを受けて出されたものだ。海岸へ向かっている船を、乗っている人びとが死亡する危険があるにもかかわらず、海へ押し戻しているという報告があり、激しい国際的批判を浴びていた。

タイは、国内法の制約があることを理由に、避難所を提供する協定書に署名しなかった。しかし、自国の海域で立ち往生している船を押し返すことはせず、船上の人たちに人道的な支援を供給すると誓約した。

船上の難民らは人道危機の真っ只中に置かれている。彼らを追い払うことは、人間の良識からほど遠いばかりか、生命や自由が脅かされる恐れのある国へ強制的に追放・送還してはならないとするノン・ルフルーマンの原則に反する。これは慣習国際法上の原則である。

タイは5月29日にインドネシア、マレーシア、ビルマ、国連機関など主要な利害関係者を集め、地域の危機について議論する地域首脳会議の議長を務める。

会議は、今回の危機の根本原因に対処する重要な機会となる。ビルマにおけるロヒンギャなどの少数民族に対する法律上、政策上、および慣行上の組織的な差別もとりあげられる。

背景情報

5月半ば、ビルマとバングラデシュから、マレーシアやインドネシアに船で到着する難民の数が増加した。タイでは人身売買や密入国の取り締まりに力を入れており、仲介業者は別ルートを探す必要に迫られているようだ。国際移住機関は、タイ沿岸にはまだ6,000人が船に残されていると考えている。

バングラデシュとビルマから逃れてきた数千人の中には、貧困にあえぐ移住希望者、ビルマの差別と暴力から逃れてきたイスラム教徒のロヒンギャなどの難民、人身売買の被害者がいる。

多くは、自国の状況に耐えかねて避難先を求め、海上の危険を覚悟で自国を後にしていた。

アムネスティ国際ニュース
2015年5月20日