武器貿易条約の影響力 メキシコ会議で決定

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2015年8月25日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

武器貿易条約(ATT)は、戦争犯罪と重大な人権侵害を助長してきた国際的な武器の移転を規制するために2013年に採択された。今週メキシコで開催される第1回締約国会議で、最初の試練を迎える。

8月24日から27日まで開かれる会議には、締約国だけでなく、条約に署名も批准もしていない数カ国も参加する。ATTの実現に向けて、他のNGOとともに20年以上にわたり活動してきたアムネスティも出席する。

アムネスティは、話し合いが官僚主導で行き詰ってしまわないように、また、通常兵器の無責任な移転による人的被害に終止符を打てる、実効性と透明性を伴った規則を制定するというATTの大原則が見失われないように、見届けるつもりである。

アムネスティは特に以下の3つの点を重視している。

  • ATTのあらゆる面での透明性。その中には武器の輸出入の規模と範囲に関する各国の包括的な報告も含まれる。
  • NGOが、条約に関するすべての会議と作業に実質的な参加を認められること。
  • 国際法違反の戦争犯罪などの重大な人権侵害に使用される恐れがある場合、武器の移転をしないという条約義務を各国が確実に果たす仕組みを整備すること。

各国の武器取引は、今に至るまで秘密裏に行われており、透明性の確保はATTの大きな目的である。透明性は、締約国の条約履行状況を知る上でも非常に重要であり、条約がどう実際に運用されているかを見極める助けとなる。

メキシコ会議直前の準備会合では、今後の市民グループの関与のあり方、および各国の武器輸出入情報の報告・開示のレベルについて議論が集中した。

数カ国は、市民グループの役割を制限しようとしたり、今後のATT会議への参加を大幅に制限したり、重要な決定を非公開会議で行う場合を増やそうと画策している。

報告義務を最小限にしようとしている国々もある。そうなると、移転武器の年間総額を報告するという義務だけで、積荷の規模、品目数、小型武器や軽兵器ほか種別の数字など、重要な情報の報告義務がなくなる。

武器の最終目的地や使用目的などの詳細も開示されない。これらの情報が開示されることは、武器が違法な市場に流れ、末端の不正な使用者に渡ることを阻止するために、重要な意味を持つ。

これまで、市民グループは締約国と協調した働きかけで、世界の武器移転に法的拘束力のある規則を制定するという大きな成果を達成した。私たちは条約の実施に移行する段階でも、引き続き建設的な役割を果たしていくことを望んでいる。各国は、世界中の武器取引の実態を把握できる、包括的で透明性のある報告義務を採択しなければならない。

背景状況

武器輸出上位10位内にあるフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の5カ国ほか、世界72カ国がすでに武器貿易条約を批准している。これまでに条約に署名はしたが批准はしていない国が58カ国ある。最大の武器生産国であり輸出国の米国も、そのひとつだ。他の主要武器生産国の中国、カナダ、ロシアなどは、条約に署名あるいは批准を拒否している。

条約には、大量虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪に武器が使用されることがわかっている国への武器輸出を禁じる数多くの厳格な規則が盛り込まれている。

イラクとシリアでは、武器が移転で大量に拡散し、自称「イスラム国」などの武装グループの手にわたっている。これらの武器は、即決処刑、強制失踪、強かん、拷問をはじめとする深刻な人権侵害を助長している。1970年から80年代につくられた、ワルシャワ条約機構時代(ソ連中心の集団防衛機構)の小型武器、軽兵器、装甲車両、大砲などの武器や弾薬が世界中に拡散し、一般市民に計り知れない被害をもたらしてきた。また、大量の国内避難民や難民を生み、人道支援を妨害し、ジェンダーに基づく暴力を激化させてきた。

アムネスティ国際ニュース
2015年8月24日