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「イスラム国」の残虐行為を支える武器取引

2015年12月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

規制がほとんどなかったために何十年にもわたって武器がイラクに流入し、イラク国内での管理も緩かったことが、「イスラム国」を自称する武装グループが大量の武器を備蓄する結果を招いた。こうした武器を使って、戦争犯罪、人道に対する罪が、イラクやシリアで大々的に繰り広げられている。

アムネスティは何千という映像や画像を専門家の手で分析し、「イスラム国」の戦闘員が使う武器に関する報告書を発表した。武器の大半はイラク軍から略奪したもので、その生産・設計は、ロシアや中国、米国、EU加盟国など、多くの国で行われた。

自称「イスラム国」が多種多様な武器を使用しているのを見れば、野放しの武器取引が大規模な残虐行為を加速させるということが、よくわかる。

以下は、アムネスティの調査で判明した「イスラム国」に流れた武器にまつわる事実である。

  • 少なくとも25の国々で生産された100種類以上の武器弾薬が、「イスラム国」によってイラクとシリアで使用されている。
  • 「イスラム国」はその軍事物資を使い、おぞましいほど多数の人権侵害や国際人道法違反を犯している。「イスラム国」戦闘員は、平和的な活動家やジャーナリストをはじめとした市民を、誘拐・拷問・強かんなどの性暴力・その他虐待の対象としてきたし、また、捕虜にした政府軍兵士や武装グループの戦闘員を即決処刑してきた。少年兵の徴用も行っている。
  • 「イスラム国」は、武器のほとんどをイラク軍の武器庫から収奪している。そのほか、戦場での略取、不法取引、イラク、シリアからの脱走兵からの横流しなどで武器を調達している。
  • 2014年6月に、イラク第2の都市であるモスルを支配下に置いたことで、各国が製造した武器を棚ぼた式に手にした。ソーシャルメディアでは、米国製の軍用車両を誇示していた。
  • 「イスラム国」の武器の大部分は、もともとは70年代から90年代にかけて、米国、ロシア、旧ソ連諸国がイラク軍に供給したものだ。シリアの武器のほとんどは、ロシア、旧ソ連諸国あるいはイランから流れた。
  • イラン・イラク戦争(1980~1988)を契機に、現代のグローバルな武器市場が発達した。当時、少なくとも34カ国がイラクに武器を供給し、そのうち28カ国は同時にイランにも武器を提供していた。
  • 1990年の国連の武器禁輸措置により、イラクへの武器供給は一時減少したが、2003年の米国主導の軍事介入を機にイラクの武器輸入量は一気に増大した。
  • 国連安保理のすべての常任理事国をはじめ30カ国以上が、過去10年間にイラク軍に軍事物資を供給してきたが、その間、そのうちのかなりの部分 が、「イスラム国」やその前身となったグループなどの反政府グループの手に渡った。
  • 2011年から2013年の間に、米国はイラク政府と数十億ドルにも上る武器取引契約を交わした。さらに、2014年までに米国は、5億ドル相当以上の小型兵器と弾薬を供給した。この供給は、米国国防省のイラク軍訓練装備基金(6億ドル)執行の一環で、その中にはM4ライフル銃43,200丁もある。
  • 2014年8月15日、「イスラム国」と武装グループのアル・ヌスラ戦線およびアル・カイダ系列グループへの武器取引禁止を再確認する国連安保理決議2170が採択された。

各国は過去の失敗から学び、イラクやシリアをはじめ情勢不安な国々での武器のまん延に、早急に歯止めをかけることができるはずである。

アムネスティはすべての国に対し、戦争犯罪、人道に対する罪、その他の人権侵害に関与している反政府グループ、シリア政府軍への武器の全面的禁輸を求めている。イラクへの武器輸出に関しても、厳格なリスク査定なしには行うべきではない。

また、イラクで展開する部隊に武器供給を検討している国々は、その前後での管理と監視を徹底しなければならない。そして武器貿易条約に加わっていない国は、直ちに批准、加盟すべきだ。条約の目的の一つは、通常兵器の不正取引防止・根絶であり、分散の防止である。そして、深刻な国際人権法・人道法違反の恐れがあるときには、何をおいても取引を禁じる条項もある。

武器取引が野放しであったために、イラクとその周辺国で何百万という命が奪われ、暮らしが破壊されてきた。今もその状態が続いている。「イスラム国」の脅威は武器輸出に関わる者たちへの警鐘である。

アムネスティ国際ニュース
2015年12月8日

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