EUとトルコ首脳 庇護希望者に冷酷な仕打ち

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2016年3月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:難民と移民

欧州連合(EU)は難民問題を巡りトルコと協議し、同国経由の難民に対して、再定住や入国手段の拡大ではなく、トルコへ送り返すという提案をした。このEUの対応は、あまりに短絡的で非人道的である。

トルコのアフメト・ダウトオール首相、欧州理事会のドチシェク・トゥスク議長、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は、3月17日、18日に開かれる欧州委員会を前に、EUとトルコ間の最終合意に向けた計画の概要に同意した。

提案では、ギリシャからトルコへ送り返すシリア難民1人に対して、別のシリア難民1人のEUへの定住を認めるというが、これは道義的にも法的にも問題がある。EU内でシリア人に提供される再定住が、ギリシャへ必死の思いで海を渡ってきた別のシリア人と引き換えに行われるのだ。

難民の権利と尊厳を踏みにじるような取り引きである。これでは、難民問題の長期的で持続可能な解決にはならない。

この提案の国際法上の合法性を問われたとき、トルコが「安全な国」と指定されれば、問題ないと答えた。

アムネスティは、「安全な第三国」という考え方に強く反対する。公正で十分な庇護手続きを受ける権利を損なうものだからだ。また、ノン・ルフールマンの原則に違反して、出身国に送還される事態を招きかねない。特に、トルコでの移民や難民の現状と処遇を考えると、非常に大きく懸念される。

トルコ政府は難民をシリアに強制送還しているし、国内の難民の多くは、まともに住むところがなく悲惨な状況に置かれている。子ども数万人が、正規の教育を受けることができない。どう考えても、EUがその義務を委託できるほど、トルコが「安全な第三国」とは思えない。

シリア人以外の保護を必要とする難民はトルコに送り返されないというが、大量に送還する中で、そうした人たちの権利をどう保障するのか、明らかにしていない。庇護希望者全員がシリア人ではないし、トルコが十分機能している難民制度を持っているわけでもない。

この提案は、EUが国境に避難する場所を提供する義務を形骸化している。公正でしっかりした難民審査を受けられるという人権原則をよりどころとしていない送還制度は、非常に問題だ。

ギリシャに到着する難民全体におけるイラク人、アフガニスタン人、シリア人の合計が占める割合は、およそ90パーセントだ。国際社会の保護を強く求めている彼らの声を知りながら、トルコに送り返すのは、「難民の人権を尊重する」というEUの言葉が、むなしく聞こえる。

アムネスティ国際ニュース
2016年3月8日