オバマ・カストロ会談 握手よりも人権問題の解決を

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2016年3月25日
[国際事務局発表ニュース]
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両国の冷戦は、これで終結したのかもしれない。しかし、キューバと米国の多くの人たちにとっては、数十年前から時間は止まったままである。

米国では、旧態依然の経済制裁の解除に取り組んできたが、その成果はほとんどなかった。キューバでは、反体制派の人権擁護活動家、例えば、ラリッツァ・ディヴァソン・カンバラさんの名前をネットで検索するだけで、冷戦時代の検閲とプロパガンダが今も続いていることがわかる。

過去50年間に反体制派の数千人がたどったように、彼女も繰り返し犯罪者あるいは、反キューバの傭兵、反革命リーダーなどと吹聴されてきた。ラリッツァさんは、すべての市民に独自の法的支援や人権擁護支援を提供するグループの代表をしている。

他の多くの人たちは、さらに辛酸を舐めた。同国の人権状況を語ったために投獄された人も多かった。キューバ人権・国家融和委員会によると、デモや活動で恣意的に拘禁されている人は、今年1月現在で1,400人以上だという。

一方、ラウル・カストロ国家評議会議長と会談するバラク・オバマ大統領も、白日に晒すべき人権侵害を秘密裏に行ってきた。

キューバとの性急な関係改善を考えるとき、米国は、人権の擁護および遵守の面で未解決の問題を数多く抱えている。

米国が、敵と味方という冷戦構造の引き伸ばしでしかない経済制裁を継続することにより、キューバ市民は、健康と教育という最も基本的な人権を享受することが妨げられてきた。薬などの生活必需品が輸出制限されてきたために、市民は数十年間も過酷な生活を強いられた。

相手に痛撃をという戦争の論理は、多大な損失をもたらしてきたが、敗者は常に一般市民だ。歴史的という両首脳の握手が、政治的宣伝である以上の、長く語り継がれるような真に意義あるニュースとして世界のメディアの一面を飾るためには、両国はこれまでの方針を何としても捨て去る必要がある。

また、両首脳は、それぞれが抱える人権問題について対話し、問題解決への道を探ることも、きわめて重要である。両国の人権問題は、驚くほどに共通しているはずである。

秘密のベールに覆われる刑務所

刑務所を例に挙げる。

キューバの南東部の都市グアンタナモには、米海軍基地の拘禁施設がある。キューバには、活動家や反体制派を投獄する刑務所がある。この両施設には、外からではわからない類似点がある。

両施設とも秘密のベールに覆われている。キューバの刑務所と同様、グアンタナモでも、被拘禁者がなぜ拘禁されているのか、家族が明確な説明を受けることはほとんどない。グアンタナモで拘禁されている人たちは、起訴されているわけではない。一方、キューバでは、政治的発言はしばしば告発され、「条件付き拘禁」として長期間拘禁される。国際団体など第三者による施設の査察は認められない。アムネスティはグアンタナモの一部の施設にのみ立ち入ることができたが、キューバの刑務所内の調査活動は認められなかった。

いずれの施設の被拘禁者も、公正な裁判はまず期待できない。欠陥だらけの軍事委員会制度は、あまりに不公正で、正義の司法にほど遠い。キューバの司法手続きでは、被拘禁者の弁護士は、国に選ばれる。

両政府は、法の運用には問題はないと主張する。オバマ大統領は、グアンタナモを閉鎖し、被拘禁者を米国内に移送すると約束している。カストロ議長は、刑務所に収監している者は全員、犯罪者だと頑なに言い放つ。被拘禁者には、非暴力で政権に反対の声を上げた人たちが、数多くいるのだが。

オバマ大統領のキューバ訪問が歴史的であることに疑問の余地はない。

冷戦時代から続く人権無視の状況の改善には、メディア向け握手以上の時間と取り組みが必要である。もし、両首脳がそれぞれの人権問題の解決に向けた、具体的な取り組みを約束しなければ、両国は、真の変革の機会を失うことになる。

いずれの指導者もその事態を避けられるはずである。

アムネスティ国際ニュース
2016年3月21日