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日本:ヘイトスピーチ解消法にとどまらず、包括的な人種差別撤廃への取り組みを

2016年5月27日
[日本支部声明]
国・地域:日本
トピック:

5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」が参議院本会議で可決され、成立した。

ここ数年、在日コリアンをはじめ特定のマイノリティ集団に対し、人種主義に基づく差別や暴力を煽るヘイトスピーチが、急速に悪化し全国で拡大していた。人種差別の存在そのものに向き合わず、何ら政策を講じてこなかった日本政府の姿勢が、このような状況を許したと言っても過言ではない。

同法はヘイトスピーチに対応することを目的としており、政府が人種主義に基づく差別言動があり、不当であると法律上認識したという点では意義がある。一方で同法は、前文で不当な差別的言動は許されないと宣言するにとどまり、具体的な禁止のための措置を講じていない。包括的な差別禁止法ではないために差別の定義もなく、ヘイトスピーチの定義は国際人権基準からは程遠い極めて限定的なものとなっている。

同法は、とりわけいくつかの重大な欠陥を残したままである。すなわち、「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫」に対する差別的言動と限定しており、アイヌや沖縄、被差別部落出身者など、国内に居住するその他のさまざまなマイノリティを法の保護から除外した。これまでのヘイトスピーチが、そうしたさまざまなマイノリティをも標的としていることは明らかである。

さらに同法は、「適法に居住する者」と限定し、何らかの理由で適法に居住することができない人びとを保護の対象から除外した。そのため、例えば難民に対する差別なども、難民としての滞在資格の有無により、差別言動の合法性・違法性が異なってくる。滞在資格の有無は行政の広範な裁量に一任されているため、行政府の判断次第で一部の者への差別が助長される恐れがある。

日本は人種差別撤廃条約および自由権規約の締約国として、人種差別の撤廃および禁止の義務を負っている(注1)。これらの国際人権諸条約では、すべての人が平等に基本的権利を享受するという考えは、最も基本的な原則の一つである。とりわけ人種差別においては、国連人種差別撤廃委員会が、その国の出入国管理法上の地位にかかわりなく人種差別に対する国内法による保護を確保するよう要請している(人種差別撤廃委員会一般的意見30パラグラフ7、注2参照)。これは、「移住者、難民および庇護申請者に対する排斥が現代の人種主義の主要な源泉のひとつである(同前文)という認識に基づいている。国際人権基準は、当該国の領域に住む難民をはじめすべての非正規の外国籍者も平等に保護の対象とすることが国家の義務であることを明確にしているのである。したがってアムネスティ日本は、差別的言動からの保護対象を限定している条文をすみやかに改正し、その国籍や法的地位にかかわらず保護することを保障するよう、政府に求める。人びとを差別から守るべき法律が差別を助長することがあってはならない。

5月26日、参議院法務委員会は「ヘイトスピーチの解消に関する決議」を全会一致で採択した。決議は、「全国で今も続くヘイトスピーチは、いわゆる在日コリアンだけでなく、難民申請者、オーバーステイ、アイヌ民族に対するものなど多岐にわたっている。私たちは、あらゆる人間の尊厳が踏みにじられることを決して許すことはできない」と強くうたっている。

アムネスティ日本は、国会議員が党派を超えてこの決議を実現するために、包括的な人種差別禁止法の成立に向けて速やかに取り組むよう要請する。

注1.人種差別撤廃と禁止の締約国の義務について

■人種差別撤廃条約
第2条:「1 締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。」「1(d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。

自由権規約
第20条2項:「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。

注2.人種差別撤廃委員会一般的意見30「市民でない者に対する差別

■パラグラフ7
「人種差別に対する立法上の保障が、出入国管理法令上の地位にかかわりなく市民でない者に適用されることを確保すること、および立法の実施が市民でない者に差別的な効果をもつことがないよう確保すること。

以上

2016年5月27日
アムネスティ・インターナショナル日本

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