チャド:前大統領に終身刑 歴史的な判決

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2016年6月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:チャド
トピック:国際人権法

アフリカ特別法廷は5月30日、チャドのイッセン・ハブレ前大統領に有罪判決を下した。国際司法における特筆すべきこの有罪判決は、25年以上もこの日を待ちわびていた数万人の犠牲者にとって、この上ない安堵である。

セネガル・ダカールに設置されたアフリカ特別法廷(EAC)はハブレ前大統領に対し、1982年から1990年の間に犯した人道に対する罪、戦争犯罪、拷問の罪で終身刑を言い渡した。自ら複数の強かんに関わっていたこともわかった。

この有罪判決は、ハブレ前大統領の国際法上の罪が確実に問われるよう、辛抱強く闘ってきた犠牲者たちにとっての勝利だ。強い意志があれば、不処罰がはびこっている状況においてさえ、各国がうまく連携すれば犯罪を裁くことができるということを示すものである。

前大統領に対する裁判は、昨年7月20に始まり、犠牲者69人、証人23人、鑑定人10人が、公判で証言した。検察局が採用した証拠の中には、1980年代からアムネスティが数回にわたり公表していた調査報告書もあった。また、アムネスティの元職員が、裁判中に鑑定人として証言した。

裁判は、アフリカにおける不処罰に終止符を打つ取り組みの新たな基準となる。またアフリカ大陸で初の普遍的管轄権を行使する裁判であり、一国の前指導者が、他国の裁判所で、国際法上の犯罪で起訴された最初のケースでもある。

犠牲者信託基金

イッセン・ハブレ前大統領は、有罪判決に対し控訴することができる。アフリカ特別法廷は、十分な人と資金のもと、裁判を首尾よく完全に決着しなければならない。特別法廷はまた、賠償の公聴会を実施する予定であり、裁判に関わったかどうかを問わず、犠牲者全員を対象とする信託基金を設置する責務がある。

1982年から1990年の間に、重大な人権侵害で告発されている他の関係者を捜査・起訴するために、チャドおよび関係したと思われる他の国々に、引き続き圧力がかけられるべきだ。とりわけチャドは、1984年9月、同国南部であった大量殺人の捜査をしなければならない。

背景情報

アムネスティは1970年代以降、チャドにおける人権侵害の犠牲者を支援する活動をしてきた。政治の厚い障壁にもかかわらず、犠牲者たちは、市民団体とともに、地域・全土・国際の各レベルでの運動の先頭に立った。その不屈の取り組みが、2012年8月のアフリカ特別法廷の設置につながった。

チャド国家調査委員会の推定では、1982年から1990年の間に治安部隊に殺害された犠牲者数は、4万人にのぼる。隊員らによる拷問、恣意的逮捕、超法規的処刑、強制失踪もあった。チャドの文書・保安局には、アムネスティ会員らが送った5万通以上の手紙やカードが、保管されている。

アムネスティ国際ニュース
2016年5月30日

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