アフガニスタン:アフガニスタン帰還民・国内避難民への支援についての要請書

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2016年6月10日
[公開書簡]
国・地域:アフガニスタン
トピック:

2016年6月9日

外務大臣 岸田文雄 殿

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 若林 秀樹

アムネスティ・インターナショナル日本は、アフガニスタンにおける帰還民および国内避難民が直面している人道危機について懸念し、2016年10月4日および5日にブリュッセルで行われるアフガニスタン支援国会議において、日本政府が国内避難民の問題を取り上げるよう要請いたします。

アムネスティは先ごろ、『My children will die this winter - Afghanistan's broken promise to the displaced』を発表しました。これはアフガニスタンにおける国内避難民に対する2014年国家政策(以下IDP政策)を評価したものです。

同報告書は、数十万人の国内避難民が直面する苦難を詳細に報告した『Fleeing War, Finding Misery』(2012年)に続くものです。アムネスティは、2012年にインタビュー調査した地域を再度訪問し、IDP政策実施以降の影響を調査しました。インタビューの対象は、さまざまな性別、年齢、民族、地域の人びとですが、大多数はこの4年の間、状況の改善はまったく見られないと語りました。多くの人びとは、アフガニスタン経済の悪化や紛争の激化により、状況がより悪くなっていると述べています。そして、新たな避難民の発生が、乏しい資源や物資をめぐる争いを引き起こしています。

アフガニスタンの国内避難民の数は、この3年間で2倍以上に増加しました。2012年末には約50万人であったのに対し、2016年4月時点では約120万人に達しています。自宅を強制的に追われた大多数の人びとは、劣悪な環境の中、寒い冬や暑い夏をしのげない、間に合わせの住居に住まわされています。さらに、日々の食糧や飲料水を十分に得ることができず、受けられる援助も最小限に限られています。アフガニスタンにいる国内避難民は、保健や教育などの基本的サービスを恒常的には受けられていません。避難民の新しい生活環境は不安定です。安全が保障されず強制的な移転に対する法的な保護が不十分なため、多くが頻繁に転居を強いられています。

IDP政策の失敗は、専門家や資源の不足、長期にわたる汚職、担当省である難民・帰還省の職員の能力不足などさまざま要因が挙げられます。複数のアフガニスタン政府の職員は、同政策の実施にさらなる国際支援の必要性を挙げています。国際社会には、人道支援と、年々著しく減少している人道目的の経済支援を増加させることが求められています。 2011年の国際的な人道支援額は、8億9500万米ドルでしたが、2015年には半分以下の4億3200万米ドルにまで減少しました。これは2001年以来、最低の額です。

アフガニスタン政府は現在、治安の悪化と経済の低迷という大きな問題に直面しています。しかし、国内避難民が爆発的に増えている一方でIDP政策が遅々として進んでいないことは、非常に懸念すべきことです。アフガニスタン政府は、支援国と協調して、国内避難民の激増に即座に対処し、IDP政策を実行しなければなりません。10月にブリュッセルで行われる支援国会議は、この問題を提起する重要な機会となります。

それゆえ、アムネスティ日本は、国内避難民に対する人道支援が支援国会合の議題となり、同問題への戦略的対応が打ち出されるよう、支援国である日本政府がイニシアチブをとるよう要請します。また、あわせて以下を要請いたします。

  • アフガニスタンに対する人道支援において、帰還民および国内避難民に対する取り組みを重視してください。また避難民の優先ニーズに対応する取り組みを支援してください。
  • 国内避難民への援助やIDP政策実施に必要な能力、技術、専門知識向上のために、関連行政機関への専門家派遣および研修を、より積極的に行ってください。
  • アフガニスタン支援に関するあらゆる会合において、国内避難民の窮状を強調してください。

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