EU:リビアでの難民・移民の人権侵害を助長しかねないEUの政策

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2016年6月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:EU
トピック:難民と移民

EUが移民でリビアと協力することにより、リビアで収容されている数千人の難民と移民への凄まじい虐待が助長され、状況がさらに悪化する恐れがある。

先月EUは、地中海で密出入国を取り締まる海軍部隊の任務を1年延長すると発表した。この延長は、リビア政府の要請を受け、同国の沿岸警備隊を訓練し、情報を共有するためだった。しかしながら、アムネスティ・インターナショナルが5月にシチリアとプーリアで実施した聞き取りでは、沿岸警備隊や入国者収容施設の関係者による凄まじい人権侵害が明らかになった。

アムネスティは、リビアからイタリアに船で渡った難民・移民90人に話を聞いた。その中で少なくとも20人は、リビアで沿岸警備隊に引き上げられるとき、暴力を振るわれたり銃撃を受けたりしたという。あるいは、収容施設で激しい虐待を受けたそうである。時には沿岸警備隊が、沈没する船を救助せず、120人ほどを見捨てたこともあった。

EUの支援が、これらの人権侵害を助長したり、事態を長期化させるようなことがあってはならない。

6月7日、欧州委員会は、移民管理の一環として、地域の主要な第三国との協力・協調関係を強化する追加策を発表した。その一国がリビアだった。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年前半の5カ月間に船でイタリアを目指した難民のうち、欧州諸国の海軍、NGO、商船などに救助されてイタリアにたどり着いた難民が49,000人以上いたが、2,100人以上は命を落とした。

リビア沿岸警備隊の人権侵害

2016年5月22から28日の間に、少なくとも3,500人が、リビア沿岸警備隊により拘束され、収容施設に送られた。

収容施設は、不法移民対処局(DCIM)が管理している。この局は本来、内務省の所轄だが、実態は収容施設の多くを武装グループが運営している。

国内法では、不正な入国や滞在は違法であり、違反者には、送還を目的として無期限拘禁が認められている。いったん拘禁されると、何カ月も家族、弁護士、裁判官に連絡をとることがほぼできず、拘禁への異議申し立てや保護を求めることができない。送還は、何の保護措置や異議申し立ての機会もないまま行われる。

同国は外国籍の人びとの違法な送還と拷問などの虐待を即刻やめ、必要な国際的な保護が必要な者にはその保護を保障する難民庇護の法規を採択すべきだ。

かつて拘禁されたことがある人たちは、次のように語っている。「毎日、看守に、こん棒、ホース、電線、ライフル銃などで殴られた。電気ショックもあった」

「収容所で難民や移民が、係員に射殺されたり殴り殺されたりするのを見た」

「食料、飲み水が乏しく、医療も不十分で惨めな状況だった」

EUは、このような難民や移民に対する衝撃的な人権侵害を看過することはできない。移民政策や計画を策定する前に、リビアで難民と移民の権利が確実に保障されていなければならない。もっとも、近い将来の実現は期待できそうもないが。

アムネスティ国際ニュース
2016年6月14日

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