イエメン:和平交渉では絶望的状況に陥っている民間人の支援を優先せよ

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2016年8月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イエメン
トピック:地域紛争

イエメンでは、民間人に人道支援の輸送制限が国内の人道危機をさらに悪化させ、人命を危険にさらしている。アムネスティは、あらゆる紛争当事者に必要不可欠な物資を提供する団体を自由に利用できるよう、要求する。

今年5月、アムネスティ・インターナショナルの調査団は、フーシ派の支配地区を訪れ、国内外11の人道支援団体に聞き取りをした。彼らの説明では、フ-シ派勢力とサウジアラビア主導連合軍の双方が、支援に対し違法な制限を課しているという。アムネスティは、現在クウェートで7月末まで行われる和平交渉において、支援物資輸送の妨害阻止を最優先課題にするよう求めている。

交渉では、支援要員と物資が攻撃や妨害を受けず、援助物資を必要とする人たちに無制限で届くようにすることが、最大の課題である。

武装紛争のすべての当事者は、困窮する民間人への必要不可欠な人道支援の移動を許可し、後押しする義務を負う。支援の妨害は、国際人道法違反である。食料と水が絶対的に不足し、最悪の衛生状態にある中で、人道支援にいっさいの制限を掛けてはならない。全当事者が、介入や妨害をすることなく、支援担当者にその職務を遂行させる必要がある。

しかし、今月初めのラマダン明けの祭と7月15日の和平交渉再開に至る期間、いたるところで空爆と地上戦が再び激化し、市民が自宅を追われ、子どもの慢性的栄養不足が、さらに悪化した。

アムネスティが接触した支援団体は、いたるところで不当な妨害が横行し、人道支援を妨げられていると語った。サウジアラビアが主導する連合軍が、その攻撃対象にならないようにするために、支援団体に対しその行動や支援内容を細かく指示するなどしていることが、団体に過度の負担を強いている。

地図、人員、車両などに関し、あまりに詳細な情報を求められるため、 その結果、情報を提出できないか、提出をあきらめ、団体のスタッフや支援物資を動かせないという深刻な事態に陥るNGOもあった。

フーシ派による人道支援要員への嫌がらせ

また、事実上、政権を掌握したフーシ派の委員会や関係組織から暴言を吐かれたり、暴行、拘禁、尋問を受けているという報告もあった。支援物資の受け取り側の氏名を出せという要求に従わなければ、活動停止を強いられることもあった。

官僚主義的な規制

フーシ派が実権を握る省庁では、緩慢なお役所仕事による、支援物資の配送の遅延も発生している。一例をあげると、人道団体は計画省から3カ月の移動計画書の提出を求められてきた。しかし、この提出は、突発的な武力衝突が発生する状況下では、直前の変更を余儀なくさせられるため、きわめて困難だった。

フーシ派政権当局は、人道組織のアクセスにも多くの制限を課してきた。例えば、現地住民との接触の不認可、ビザ発行の遅滞、移動に関する詳細な指示などを国内外の団体職員に課してきた。

支援業務の妨害

フーシ派政権の地方当局では、業務が停滞したり、支援のニーズの掌握や支援状況の把握が止まっている場合もあった。また、人道組織が誰を雇うとか、どこに支援物資を配布するとかに口出しすることもあった。

今年のイエメン人道支援プログラムで、国連は各国に18億米ドルの支援を求めているが、6月末現在、拠出実績は25%にすぎなかった。

アムネスティ国際ニュース
2016年7月26日

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