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G20サミットに向けた「ビジネスと人権」に関する要請書

2016年8月30日
[公開書簡]
国・地域:
トピック:企業の社会的責任

2016年8月29日

内閣総理大臣 安倍晋三 様

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 若林 秀樹

世界中の人びとが人権を享受できる世界を目指し700万人以上が参加する国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルを代表して、この書簡をお送りしています。9月に中国・杭州で開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、「革新的で活力があり、包括的な世界経済の構築」に向けた取り組みをテーマに議論がされます。アムネスティは、同首脳会議に出席される日本政府に対して、その政策の中心に人権を据えた取り組みを期待しています。

会議を構成する主要先進国と新興国20カ国は、世界の人口の3分の2近くを抱え、世界の国内総生産(GDP)の85%、貿易額の80%を生み出しています。この20カ国が取る施策は、世界に重大な影響を与え、その協調的取り組みは、世界の他の国・地域の模範となります。

主催国中国は、世界経済の成長を追求する一環として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を完全実施する計画を明確にしてきました。アムネスティは、経済と社会の持続的発展には、人権の観点が不可欠であり、両者は手を携えて歩まなければならないと考えます。国の社会経済力の向上に、人権が大きく貢献しうることを示す事例も増えています。

アムネスティは、企業活動が経済発展に果たす役割を認識しています。一方で、多国籍企業の活動が野放しにされると、社会から取り残され、極貧に喘ぐ人びとに悲惨な結果をもたらしていることも、独自の調査でわかっています。それは、ナイジャーデルタの石油汚染問題であったり、コンゴ民主共和国のコバルト鉱山での児童労働であったり、ビルマの銅山の強制立ち退きであったり、さまざまです。企業が、脆弱で十分機能していないその国の法律を巧みに利用して法的責任を逃れたり、司法機関に責任を問われない場合、弱者が犠牲になる可能性は、極めて高くなります。これらの事実により、国が人権の保護を怠り、企業が人権を尊重しなければ、また、人権侵害の被害者が有効な補償を受けることができなければ、いずれの開発計画も真の意味で持続的とは言いがたいことは明白です。

アムネスティは、20カ国首脳会議に対し、特に自国外での企業活動や開発における人権侵害のリスクに、各国が協力して立ち向かう機会となることを願っています。国家は、その人権侵害を排除するために、企業に強い姿勢で望まなければなりません。また、発生した人権侵害には必ず対処し、被害者への救済策を取る必要があります。

従ってアムネスティは、同会議の貿易・投資・開発に関する成果が、国際人権法・人権基準に沿って経済開発を進める必要性をはっきり認識したものとなるよう、各国に強く求めます。この法・基準には、最低限守るべき基準を定めた国連ビジネスと人権に関する指導原則などがあります。

そして、日本政府に対し、グローバルな事業活動において企業が人権を尊重するよう求める国内法規の整備に、より積極的に取り組むことを要請します。こうした法規があれば、企業による人権侵害の被害者は、実効性ある救済策を受けられるようになります。

中国主導のもと、G20首脳会議は発展途上国の貧困撲滅および持続的開発の推進に向け、国際貿易と投資を特に重視しています。インフラ整備計画への投資は、成長を促進する重要な仕組みの一つであること、また、インフラ投資銀行、欧州投資銀行、アジアインフラ投資銀行などの国際金融機関が、これらの計画の金融と経営に大きな役割を期待されていることを、アムネスティは理解しています。

世界の主要経済圏を構成するG20は、これらの国際金融機関の主要メンバーでもあります。アムネスティは、日本政府をはじめG20に対し、各国際金融機関が、それぞれの保護政策・手続きにおける国際的人権基準の視点を強化するとともに、融資先に対して、十分なデューデリジェンスと、支援事業やプロジェクトで発生した人権侵害への責任を果たすことを義務付けていくよう、強く求めます。

G20は、インフラ整備計画に透明性、参画、説明責任が優先的に盛り込まれ、開発で最も影響を受ける人びとが、計画の目的、内容、実施に関わる議論に積極的に参加できるものとなるよう、全力を挙げて取り組むことが重要です。この実現のためには、被害を受けた個人が必要な情報を必要な時に入手でき、また、市民団体や人権団体がその個人を支援できるようにする必要があります。世界経済の活性化が急務であることが、周縁化された被害者の声を排除したり、人権の尊厳を蔑ろにする言い訳にはなりません。

最後に、アムネスティは日本政府に対し、今回の会議に出席されるにあたり、企業活動のあらゆる面で人権を中心に据えた、公正で持続的な経済成長を推進するための基盤整備に参画するという意識を持って参加されることを期待するものです。具体的には、以下を要請します。

  • G20は、世界経済の成長と持続的発展を実現していくにあたり、その中に人権が組み込まれ支持されなければならないことを合意すべきである。
     
  • 貿易・投資・開発に関するG20首脳会議の成果は、国連ビジネスと人権に関する指導原則を最低限のものとして、国際人権法・人権基準に沿ったものでなければならない。また、人権に関する各国・企業の個別の義務・責任を強化するものでなければならない。
     
  • G20は、国外での企業の事業活動における人権侵害の防止・調査・処罰・是正を実現する実効的な政策・法律・規制・裁定を整備し、人権を保護する義務を果たさなければならない。
     
  • 国としての責務を果たすことに加え、国際金融機関の政策やプロジェクト管理を通じ、国際的な人権保護措置の強化に、各国と協調して建設的に取り組まなければならない。
     
  • すべての関係国・団体は、開発計画において、社会的弱者を含む全利害関係者がプロジェクトの計画・実施・査察に関する協議や決定に参加できるものとなるよう、全力を尽くすべきである。

以上

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